2008年2月24日日曜日

第五段 画戟雕戈、白日寒し・・・

トルコ軍イラク北部侵攻について、各国の利害得失を徒然なるままに想像していきたいと思います。

1.トルコ
  ・イスラム主義を掲げ、世俗派の牙城である軍部とは折り合いの悪い現政権にとって、
   今回の一件は、一時的にせよ、軍部の矛先を自分たち以外に向けさせられる点、
   クルド人問題で比較的強硬な軍部に対して一定の配慮を見せたことにできる点で、
   悪い話ではありません。
   ただし、作戦が泥沼化したり、トルコ領内におけるテロ活動が活発した場合、現政権にとっての命
   取りになりかねない危険性はあります。
2.米国
  ・ただでさえ、イラク国内の治安安定化に手間取っている米国にとって、更に状況を複雑化させか
   ねないトルコの今回の行動は「勘弁してくれ」というもの以外の何物でもないでしょう。
   ただし、コーカサス地方や中央アジア、イランに対して米軍のプレゼンスを示していく上でトルコは
   欠かせない同盟国。愉快ではないが、作戦が短期に終わるのならやむなしと言った所でしょうか。
3.EU
  ・トルコのEU加盟反対派にとっては、当作戦に伴う市民の犠牲等をクローズアップすることで、
   比較的容易にトルコ加盟反対キャンペーンを張れるので、悪くない話でしょう。
   逆に加盟賛成派は、短期かつ小規模の犠牲で当作戦が終結することを祈っているのでは。
4.ロシア
  ・トルコ軍の作戦地域がイラク有数の油田地帯にあたるため、今回の一件は原油価格の押上要因
   として機能すると思われます。これは、価格が急騰するエネルギー資源をテコに国際的影響力を
   高めようとするロシアにとっては、悪くない話です。
   また、歴史的経緯からトルコの軍事行動に対する不安感を高めるアルメニア等のコーカサス諸国
   に対し、軍事的安定を手っ取り早く提供できることをアピールし、コーカサス諸国に対するロシア
   の影響力を一層高めることもできます。
   また、当該作戦によってトルコに対する欧米の風当たりが強まった場合、領土保全を旗印に
   トルコに接近し、NATOに楔を打ち込むことも可能になります。
   今回の一件、ロシアにとっては朗報かもしれません。
5.イスラエル
  ・敵対するシリア、イランの注意を分散できるという意味では悪くない話です。ただし、中東での
   数少ない友好国であるトルコの弱体化は、イスラエルも望まないでしょう。
   ひょっとすると、インテリジェンス面での協力等を通じて、陰ながらトルコの行動を支援し、事態の
   早期終息を目指すことになるのでは。
6.シリア、イラン
  ・両国とも、親米国家であるイラクそしてトルコの国内に存在する米軍に脅威を感じて
   います。その両国にとって、イラク、トルコを混乱に陥れかねない今回の一件は、一見朗報に
   見えます。ただし、今回の一件でトルコが一方的に勝利した場合は、莫大な原油へのアクセス
   を手中におさめ、ユーフラテス川等の水源の支配を一層強固にした親米国家トルコの登場を
   考えねばなりません。逆にトルコが一方的に敗北すれば、シリア、イラン両国内におけるクルド
   人の政治活動が活発化しかねません。
   恐らく、シリア、イラン両国とも、トルコとPKK両方にパイプをつなぎ、明確な勝敗が出ないよう、
   都度不利になった側を支援していくことになるでしょう。

今後の事態の推移としては、CNN等の国際規模のマスコミが作戦に伴う市民等の
犠牲に注目する前に、ある程度PKK幹部の身柄を拘束できればトルコの勝ち。
逆にマスコミが犠牲の拡大について騒ぎ始めるまで事態を引っ張れれば、
PKKの勝ちといった所ではないでしょうか。