2008年3月3日月曜日

第九段 トルコ軍、イラク北部より撤退。そしてイランは・・・

第四段で取り上げました「トルコ軍、イラク北部侵攻」ですが、2月29日を以てトルコ軍はイラク北部からの撤退を行った模様。侵攻開始から撤退までの一連の報道を見る限りでは、最大1万とも言われる兵力規模を投入した割には、PKK掃討にそれほど目立った戦果を上げられなかった様に見受けられます。やはり、米国、EUからの圧力には抗しきれなかったということでしょうか。今回の作戦の幕引きが、トルコ軍内の反政権意識を昂進させることにならなければよいのですが。

とりあえず、結果としては作戦は他国からの水入りにより中止。トルコ、PKKともに決定打無しで両者引き分け。管理人の予想はハズレ。と言った所ですか。まだまだ精進が足りません。

さて、そのトルコの北と南では先週から本日2008年3月3日に至るまで色々と動きがありました。
先ず北では、コソヴォの自治政権がセルビアからの一方的な独立宣言を行ったことで、緊張が高まっています。これに対して、NATOは早速コソヴォに展開する兵力を増強する旨の声明を発表しております。しかし、NATOについては、以前にゲーツ米国防長官がアフガンに展開する兵力の手薄さと兵力増派に対する各国政府の及び腰に不満の声をあげていた筈。何となく、アフガンに比べれば対処の容易なコソヴォに人員・資源を集中させることで、より危険の多く事態改善の兆候も見られないアフガンへの関与拡大を断る口実にしようという欧州側NATO加盟国の意図が透けて見えるような気がします。まあ、難民流入などを考えると、欧州側NATO諸国政府が、遥かに遠いアフガンより身近なコソヴォにこそ持てる資源・人員を集中すべきだと考えても不思議はありません。イラク戦争で一気に顕在化したNATO内の亀裂は、今も現在進行形で拡大中なのでしょうなぁ。「主敵を失った同盟なぞそんなものだ」と言われればそうなのですが・・・。

そう考えるとなると日米同盟はどうなっていくのか? 旧ソ連の位置に中国・北朝鮮を据えて同盟強化を図っていくのでしょうか? いや、短期的にはそうなるかもしれませんが、米国にとって中国は中央アジアから太平洋地域にかけての安定化を図る上で経済的にも政治的にも重要な協力相手となりうる存在ですし、北朝鮮は潜在的には中国に併呑されることへの警戒感を有していることから、中国がアメリカの望まない進路を取った場合の牽制用の駒として利用価値があります(核を保有していればなおのこと・・・)。日本にとっても中国は最早経済的に切っても切れない仲。北朝鮮についても、色々と問題は抱えていますが、レアメタル等鉱物資源供給国としての魅力や米国同様に中国(場合によっては韓国、ロシア)への牽制用の駒としての利用価値は十分にあります。こうして見ると、長期的に見れば日米同盟にも遠心力が働く可能性は十分にあります。その場合、ユーラシア中央部から太平洋にかけての地域安全保障がどのように担保されていくのか、非常に興味がある所です。

閑話休題、お次はトルコの南の話。今年3月2日、アフマディネジャド・イラン大統領がイラクを訪問しました。この訪問に先立って、イランはイラクのインフラ整備のために約10億ドル相当の融資を行う意向を示しました。考えると、イランにとって長年の仇敵であったサダム・フセインをこれまた積年の対立国アメリカが駆逐。しかもその後のイラク混迷でアメリカが様々なものを失っていく一方で、イランはシーア派勢力を通じてイラクへの影響力を拡大している。これ以上ないぐらいに鮮やかな「漁夫の利」の実例ですねぇ。イラク戦争最大の勝者は結局イランのような気がしてなりません。( ̄w ̄;)
孫子の「百戦して百勝するは善の善なる者に非ざるなり。戦わずして人の兵を屈するは善の善なる者なり」を思い出してしまいました。