2008年3月17日月曜日

第十三段 チベット動乱

何やら先週金曜日(2008年3月14日)当たりからチベット・ラサで軍を出動させるレベルの暴動が発生している模様です。当初は軍出動で速やかに鎮圧されるかと思った今回の事件ですが、本日(3月17日00:21)時点で判明している所では、かなり中国当局も手を焼いているようです。

<判明していること>
・今回の暴動による死者は10名以上
・今回の件に関するチベット族の抗議活動は青海省、甘粛省、四川省に波及。
・新華社、中国政府庇護下にあるチベット仏教指導者パンチェン・ラマ16世の「暴動」非難発言を発表。
・チベット自治区政府、「暴動」参加者について投降と情報提供の見返りに罪状を軽減するとの通告を自治政府のウェブサイト上で発表。

ご存じの通り、チベットやその周辺に広がる内陸各省は、急速な経済発展に乗り遅れがちで、貧困やそこから派生する各種問題によって、地方政府とその背後に控える北京への不満が鬱積していた地域です。そんな状況で、元々反北京意識の強いチベット・ラサで「暴動」が発生したことは、周辺地域に広がるチベット人の分布と合わせて、枯れ野に火を放つが如き事態と言えるでしょう。

ここで気になるのは、中国政府が問題対応策の一環として、「暴動」参加者に投降を呼びかける通告をわざわざウェブ上でも発表したこと、自らの庇護下に置くチベット仏教の宗教的権威パンチェン・ラマ16世を出してきたこと、この2点です。
まずウェブ上での投降の呼びかけですが、これは直接的には国際世論に対して「我々は人道に則って事態の打開を目指している」という態度を示すためのアリバイ作りと言えます。しかし、そもそも今回の1件が外部に漏れる前に事態を封殺できれば、こんな呼びかけをウェブ上でする必要はなかった筈です。それがこんな状態(事件の速やかな封殺ができず、事態打開に手間取っている間に情報が海外に漏れてしまった)になってしまったのですから、今回の「暴動」が、現時点では当局が容易に制圧できない事件であることが窺われようというものです。
2点目のパンチェン・ラマ16世の担ぎ出しも、今回の「暴動」がなかなか厄介なものであることを示唆していると思われます。何せ、「権力は銃口から生まれる」と言ってのけた創始者を持ち、必要と判断すれば自国民にさえ軍や警察のむき出しの暴力行使をためらってこなかった北京政権が、事態打開に向けて力ではなく宗教的権威というカードを切っているのですから・・・。

一方で、一連の宥和的ともいえる対応について、「北京オリンピック等を控え、あまり強面な印象を外部に与えたくないのでは?」、という考え方もあるでしょうが、領土の一体性を脅かしかねない事態について、北京政府が対外的な印象を慮って実力行使を躊躇うとは、共産党政権成立後の歴史的経緯をみれば考えにくいものがあります。となれば今回の「暴動」に対する宥和的対応は、北京政府にとって事態解決策を立案・実施するための時間稼ぎと見るのが自然でしょう。

弱気相場の中で売り材料を探している香港H株価が、今回の事件にどう反応するのか(或いは無視するのか)、要注意です。
それに、今回の事件が胡錦濤国家主席率いる共産主義青年団出身グループ(いわゆる団派)と江沢民前国家主席を中心とする上海閥、そして党高級幹部子弟グループ(いわゆる太子党)の権力闘争に与える影響からも目が離せません。 (>ω<)ノ

因みに、サマック・タイ首相がこのタイミングでミャンマーとの経済協力拡大を打ち出したのは、今回のチベット動乱長期化によって東南アジア大陸部に於ける中国の影響力が低下することを見越し、その結果生じるであろう空隙を狙ってタイの影響力拡大を図る意図があったりするかもしれませんねぇ・・・。
考え過ぎ?  (;´д`)