2008年4月18日金曜日

第三十一段 楊中国外相語りて曰く・・・

来日中の楊中国外相が「北朝鮮のテロ支援国家指定解除は近い」という旨の発言をしたらしい。テロ支援国家解除問題は米朝の問題であって、単純に考えれば中国が口を挟める問題ではない。ならば何故中国はこのタイミングで上記のような発言をしたのか?

一つ考えられるのは、「ニクソン・ショック」のトラウマ再燃である。外交面において日米両国が協力体制にあることは贅言を要しないが、一方で日本にはアメリカに対して、東アジア地域の問題を日本を無視する形で決着を図るのではないかという恐怖感というかトラウマがある。これは1970年代のニクソン訪中、米中国交回復、そしてなす術なく台湾との外交関係を生贄としてしまった上での日中国交回復という一連の流れによって日本外交に刻まれた傷である。日本は最近、北朝鮮に対する経済制裁延長を国会で可決した。日本人拉致問題や核問題によって国民の北朝鮮に対する視線も厳しいものがある。その中で「北朝鮮のテロ支援国家指定解除は近い」という情報が流れれば、日本の世論や当局に「今回もアメリカは日本の頭越しに事態打開を図っているのではないか?」という疑心が生まれることになる。その果てに「米国に振り回されるのはもう沢山だ」という考えが日本の多数派となることを狙っての、件の中国外相発言のように思えてならない。「女真は万に満たず、万に満つれば敵すべからず」という言葉があるが、手強い相手はまず分裂させ、互いに消耗し合わせるのが謀略のセオリー。日本としては軽挙妄言を控え、日英同盟破棄後の顛末を忘れるべきではない。

もう一つ考えられるのは、中国外相の発言によって、実態は兎も角、外見上は朝鮮半島問題における米中の緊密な連絡体制を誇示することで、今後東アジアの安全保障環境は米中で仕切る、もしくは中国が主導的に影響力を行使することで米国の黙認を得ているような印象を振り撒き、日本の国際的な政治的影響力拡大を牽制することを狙ったものではないか、というもの。

はてさて、楊中国外相が投じた一石がどのような波紋を広げていくか、興味深い所。