2008年4月7日月曜日

第二十五段 GCC通貨統合私見

GCCの通貨統合で一波乱起きたらしい。
その波乱とは、オマーンが2010年通貨統合への参加を正式に見送ったこと。オマーンの言い分としては、ポスト原油を見据えた産業育成のため、財政赤字の拡大は避けられず、GCC共通通貨参加要件の財政赤字対GDP比3%を満たせそうにないからというもの。
一見すると真っ当な参加見送り理由に思える。

しかし、ここで逆に考えてみたい。参加要件が満たされたらオマーンは通貨統合に参加するのかと。
「する」と考える向きにとっては、今回のオマーンの声明は通貨統合に於いて少しでも有利なポジションを確保するためのバザール的手法の一環と見えよう。「しない」と考える向きにとっては、あらかじめGCC通貨統合が困難な道のりであることを強調し、通貨統合がお蔵入りとなった場合の混乱を最小限に抑える政策の一環として映る。

ではオマーンは通貨統合に参加するのかしないのか。管理人はしないと考える。まずGCCの現状を俯瞰してみると、GCC諸国の中ではサウジがGDPと証券市場の時価総額で圧倒的な大きさを持っている。しかもメッカ、メディナというイスラム教2大聖地の守護者という一面、米国との密接な関係を反映して中東での政治的影響力も大きい。そんな状況下でうかうかと通貨統合に参加してしまった場合、経済的にサウジに埋没してしまうのは勿論、政治的にも権力の旨味をサウジ王家に剥奪されかねないという恐怖感がオマーン側にあるのではないか。そして恐らくサウジに経済的にも政治的にも飲み込まれる恐怖感は、他のUAEやカタール等も共有していると考えられる。だが彼らはイランの脅威に対抗するためサウジの機嫌はあまり損ねたくない。そこで、比較的イランと良好な関係を維持しているオマーンが通貨統合消極派の先頭に立っていると思われる。
(牛後より鶏頭の方がましという考え方だ)
恐らくサウジ以外のGCC諸国はサウジの面子にも配慮して通貨統合を「永遠の検討課題」として位置づけようと動くのではないか。

そもそもドイツが強いマルクを手放して共通通貨ユーロに舵を切ったのは、二度にわたる世界大戦の教訓から、ドイツを欧州の一員として確実にビルトインすることへの広範な支持がドイツ内外にあったからだ。そしてその支持はジャン・モネ以来の制度的試行錯誤によって実体あるものとして強化されてきた。一方のGCC共通通貨構想を支える思想的制度的基盤は、それ程強固なものだろうか?
そう考えるとGCC通貨統合の実現性そして仮に通貨統合を実施した場合の統合通貨の持続性には懐疑的とならざるを得ない。

アッバース朝崩壊後のアラブ政治を特徴付けるものは、統合よりも分裂であった。