2008年7月30日水曜日

第九十四段 囲師には必ず・・・

人類史上に於ける戦略書のアルファにしてオメガとも言うべき『孫子』の九変編に以下のような言葉が御座います。
囲師には必ず闕き、窮寇には迫ること勿れ。

要するに、「敵を包囲する時はワザと一部に逃げ道を作り、進退窮まった敵を完全に追い詰めてはならない」という意味です。

何故か? 別に人道主義や憐憫の情を重んじての言葉ではありません。「窮鼠猫を噛む」という俚諺が御座いますが、退路を失った人間というものは、往々にして信じられないような蛮勇や力を発揮するもの。そんなものと戦ってひどい損害を受けるよりは、敵にわざと退路や生存の希望を見せることで、決死の覚悟というものを持たせず、ひと押しすれば勝手に自壊するように仕向けるべきことを述べた言葉なのです。

さて、ユーラシアの西端では、欧州に供給される天然ガスを巡ってロシアが活発な動きを見せております。過去にも、ロシアとウクライナの天然ガス紛争や天然ガス版OPECの創設提唱がありましたが、最近も、ロシア・ガスプロムがリビアに対して同国生産の石油・天然ガス全量買い取りを提唱、ロシア・アルジェリア間のエネルギー分野における協力強化合意、帝政ロシア以来関係の深いカスピ海沿岸・中央アジア諸国に対してロシアを排除する形の対欧州エネルギー資源供給に参加しないように働きかける等の動きがあります。

一見すると、ロシアは実に効果的にエネルギー面での対欧州包囲網を構築しているように見えますが、逆にここまでロシアの優位が見えてくると、危機感を覚えた欧州の代替エネルギー開発を一層加速させてくる可能性があります。のみならず、イラク戦争以来遠心力が働いてきた欧米関係が、「エネルギー資源を梃に強大化するロシアの脅威」を背景として、再び求心力を取り戻してくる可能性もあります。

もしこれらの可能性が現実のものとなると、ロシアは完全な欧州包囲網を構築したおかげで、影響力の源泉であったエネルギー資源の価値低下と強化された欧米同盟に直面するという非常に有難くない状況下に置かれることになります(まさに窮鼠に噛まれた猫状態)。そうならないために、ロシアは欧州に包囲網の抜け道(偽りの希望)を用意する必要があると思われます。さて、ロシアはどのようなイリュージョンで欧州を幻惑してくるのでしょうか? それとも資源価格高騰のもたらすユーフォリアに酔いしれ、微妙なハンドル捌きをしないまま、最悪の結果まで突き進んでしまうのでしょうか? ( ̄w ̄)

2008年7月25日金曜日

第九十二段 米軍撤退後のイラク経済は?

ある日、反ブッシュの人物と親ブッシュの人物が口論をした。
反ブッシュ:「ブッシュのイラク侵攻はとんでもない愚行だった。おかげでどれだけの無益な
       犠牲がでたことか・・・」
親ブッシュ:「いや、ブッシュ大統領のイラク解放によって、イラクにアメリカン・デモクラシー
       が根付いた」
反ブッシュ:「君は何を言っている? 今のイラクでは役職はコネで決められ、貧富の差が
       どうしようもないほど広がり、多くの人々が銃で殺されているんだぞ!」
親ブッシュ:「君こそ何を言っている? 今君が言った事こそ、アメリカン・デモクラシーの真
       髄じゃないか!」

政治家の評価は棺覆いて後定まるとは申しますが、覇権国アメリカの第43代大統領、即ち当今の治天たるW.ブッシュ氏は、「弱く不安定なイラク」と「イランの影響力拡大」を(少なくとも一時的に)もたらした大統領との評価を避けることはできないでしょう。

さて、そのイラク、「イランに対する防波堤」から「イランの実質的な勢力圏」に移行しつつあるイラクでは、最近、資金需要が上昇傾向にあると在イラク米国大使館が申しているとか。ロイターが米国大使館の調査結果として報じている所によれば、民間銀行が今年2月に実施した融資総額は約7.5億ドル、3月時点の信用状残高も1.9億ドル近くにまで達したとのこと。米国大使館はこれを以って「イラクの金融セクターが回復傾向にある」としています。(記事リンク:ロイター

まあ、「イラクの復興は順調ですよ」と印象付けたいが為の主催者発表臭がニュースに漂うのは兎も角(因みに、記事によれば、米国大使館から同調査についての情報提供要請があった時、イラクの中銀と財務省はこれを拒否したとか・・・)、気になるのが、米軍撤退後のイラクにおける金融経済と通貨覇権の帰趨。

ここで視点を北方にずらして、欧州バルカン半島はコソヴォの状況を見てみますと、特筆すべき産業も無く、隣接するセルビアとも対立するコソヴォの経済は、NATOやEU、国連等の落とすユーロやドルに強く依存した状態にあります。そのため、地域情勢が下手に安定化してNATOやEU、国連が撤退してしまうことを恐れる空気もあるとか。

現在のイラクでは、駐留米軍とその周辺が落とす米ドルが大きな影響力を持っていると推測されますが、ポスト・ブッシュ政権が米軍のイラク撤退を実行した時、巨大な需要マシーンでもある米軍の消失にイラク経済が耐えられるのか? そこが気になる一点目です。
もう一点気になるのが、莫大な原油埋蔵量を擁し、同時に中東の地理的中心でもあるイラクで米ドルの影響力が落ちた時、勢力を強める通貨はドコか? ユーロか? ロシア・ルーブルか? イラン・リヤルか? それとも・・・。

2008年7月22日火曜日

第九十一段 音速の遅い読書『宇治拾遺物語』

『宇治拾遺物語』という作品が御座います。
書誌的な情報としては、13世紀前半頃に成立した説話集であり、作者は判然としておりません(Wiki参照)。全15巻197話からなり、日本、唐土や天竺にわたる様々の話を載せています。
2008年7月に至るまで影印から完全現代語訳までが様々な出版社から出版されていますが、ここのブログで取り上げるものは、小学館の日本古典文学全集28(1973年初版)によります。
(とはいっても、あらすじにおける抜粋・現代語訳の責は、管理人にあります。)

全15巻197話もある中から今回取り上げるのは、巻8の第6話「猟師仏を射る事」。
話のあらすじは以下の通りです。
 1.昔、愛宕の山に長年修業を積んできた僧侶が住んでいた。
 2.近くにはその僧侶を慕う猟師が住んでいた。
 3.ある日、僧侶は猟師に対して「最近、自分の所に普賢菩薩がお見えになるのだ」と告げ、
   今晩は僧坊に泊って共に有難い菩薩に礼拝することを勧める。
 4.猟師は僧侶の申し出を快諾する。
 5.深夜になり、僧侶、猟師とそのお供の童の所に神々しい光と共に普賢菩薩が姿を現す。
 6.僧侶は感激して深く祈りを捧げる。
 7.一方の猟師は「長年修業を積まれたお坊様にのみ菩薩が見えるなら兎も角、
   仏事などロクにせず、罪深い殺生を重ねてきた自分や童子にまで菩薩が見
   えるのはおかしい」と訝る。
 8.やおら猟師は弓に矢をつがえ、さっと菩薩を射る。
 9.射られた菩薩は光を失い、鳴声を上げて逃げ出してしまう。
10.取り乱して詰め寄る僧侶に、猟師は「立派な貴方のみならず、罪深い私にも見え
   たのが不思議で射たのです。真の仏ならば弓矢如きで傷付くこともないでしょう。
   それなのに弓矢が突き刺さったのは不思議なことです」と言う。
11.翌日、3人が血の跡を辿っていくと、谷の底で大狸が死んでいた。僧侶はこの大狸
   に化かされていたである。僧侶は信仰心こそあったが思慮に欠けていたため、まんまと
   騙され、猟師は信仰心こそなかったが思慮があったため、偽りを見破れたのであった。

大狸にしてやられた僧侶の滑稽さが際立つお話ですが、時は中世。迷信・俗信の多く蔓延った時代に、理知的な判断を下せた猟師の方こそ褒められるべきでしょう。
そしてこのお話は遠い時代の怪奇譚に止まるものではありません。マスコミ等が実態以上に派手派手しく大げさに取り上げる話題・論調に振り回されてしまう現代日本の我々もまた、偽りの普賢菩薩を伏し拝んだ僧侶とあまり変わる所はないのではないでしょうか。
見た目の華々しさ、仰々しさに囚われることなく、一歩引いた冷静な目で観察と考察を行う(そして行動に移せる)猟師の精神の有り様を常に心に銘じて日々を送りたい、そう思わされた一話でした。

2008年7月20日日曜日

第九十段 イラン核問題雑考

イランの核開発を巡る動きが慌ただしくなっている。世に流れている大半の関連情報は「絶対にイラン核兵器保有を認めない米国VS何が何でも核兵器保有を実現したいイラン」といったニュアンスで色付けされている。この色付けについて天邪鬼的な視点から少し考えてみたい。

そもそも、米国は絶対にイランの核兵器保有を認めないのか? 管理人はそうは考えない。核兵器保有を認めることへの見返り、そしてイスラエルの安全を保証するスキームさえ用意できれば、米国は寧ろ十分にイランの核を認め得ると考える。

過去(特に冷戦崩壊後)の核兵器拡散状況を見ると、パキスタンとインドの前例がある。1990年代後半の両国の核実験は米国の反発を喰らい、両国には米国主導の各種制裁が実行された。しかし、2008年現在を見るとそのインドやパキスタンに対する制裁はほぼ完全に無効化され、印パ両国の核兵器保有は既成事実として定着している。何故か? それは印パ両国が米国に相応の戦略的利益を提供した(或いは提供できることが見込める)からである。

パキスタンが米国に提供した(或いはできる)利益
1.同国のカーン博士を結節点とした北朝鮮と中東諸国を繋ぐ核コネクションの情報提供。
2.対テロ戦争に対する情報や基地の提供といった各種協力。
3.イランへの牽制役。
等々・・・

インドが米国に提供した(或いはできる)利益
1.対テロ戦争への協力。
2.莫大な人口を抱える自国市場の開放。
3.台頭する中国への牽制役。
4.3とも関連するが、中露を中心とした地域機構「上海協力機構(SCO)」への参加による
  トロイの木馬的役割(因みに現在はオブザーバー資格で参加中)。
等々・・・

従って、もしイランが対テロ戦争やイラク、アフガニスタンの治安安定化その他様々な事柄で米国に相応の利益を提供した場合(或いはできる見込みを具体的に示せば)、意外に米国はスンナリとイランの核兵器保有を認めると考えられる。
その際の問題点として「如何にイスラエルの安全保障を確保するか」が浮上してくるが、これについては以下の方策が考えられる。

1.イスラエルのNATO加盟
既にイスラエルは「地中海の対話国家」という位置付けでNATOとの共同軍事演習や治安維持協力等を進めている。また、意外かもしれないが、NATOの加盟条件に地理的な限定(例えば加盟国は欧州に限る等)はない。あるのは言論の自由や多党制が保障された民主国家か? 周辺諸国との間に紛争を抱えていないか? といった点。民主国家という点では既にイスラエルはクリアしている。周辺諸国との紛争についてもエジプトとは平和条約を締結しており、残るパレスチナ、レバノン、シリアについても一枚岩的にイスラエルとの対話拒否・対決姿勢を示している所は現状ない。従って難易度は高いが周辺国との間で何らかの和平合意が成立する可能性はある。その意味ではパレスチナ強硬派のハマスやレバノン各勢力に強い影響力を有するシリアの動きは要注目である。

2.核を以て核を制す
仮にイランが核兵器を保有することになった場合、他の要素に変化がなければ、中東のパワーバランスはイラン優位に動く。それを中和するために、米国はイスラエルと長年協力・友好関係を維持してきた(と同時に親米国でもあった)トルコ、エジプトに核兵器保有を認め、イランの核兵器保有のインパクトを薄めようとする可能性がある。特にトルコが核兵器を保有すれば、南方に位置するシリアへの圧力効果も期待できよう。ただし、両国とも近年イスラム教の価値観を強調する勢力の力が強まっている。これらの勢力は往々にして反米的姿勢(穏当に言えば米国と距離を取ろうとする姿勢)を採っていることもあり、この策を実行した場合、両国の政治状況如何によっては、結果的にイスラエルや米国の脅威を一層強めかねない怖さはある。

因みに、「米国とイランの緊張が武力衝突に繋がるか」について世界の耳目が集まっているが、米国株式市場における防衛セクターの値動きを見ると、どうやら市場は「ポスト・ブッシュ政権での財政再建 → 防衛費も削減される → 防衛企業の売上・利益減少」というシナリオを描いているようである。当然イランとの戦争が始まれば防衛費削減なんぞあり得ない話なので、米国株式市場としては「米・イラン武力衝突は無いだろう(少なくとも当面は)」と判断していると考えられる。従って、現時点での米国とイランの武力衝突発生の可能性は、巷間囁かれているよりは可能性が低いのではないかと管理人は考えている。

第八十九段 音速の遅い読書『図説日本の古典13 御伽草子』

『御伽草子』という作品群があります。主に南北朝~室町時代(14~16世紀)に成立した短編物語をまとめたもので、狭義では「一寸法師」等の23編の物語を集成したものとなりますが、現在ではもっと広く、南北朝~室町時代に成立した短編物語全体の総称として用いられております。(詳細についてはWiki参照)

今回の音速の遅い読書で取り上げるのは、その『御伽草子』について様々な絵巻物等の図説を駆使しながら、作品の時代背景や内容について専門家が解説してくれる『図説日本の古典13 御伽草子』(集英社 1980年3月初版)です。(因みにAmazonの商品説明に「婦女子の人気読み物として親しまれた絵本形式の楽しい小説集」と御座いますが、和風ディズニー的なものを期待すると色々ときついかもしれません)

この書籍であらすじが紹介されている物語群の中から、更に選抜して当ブログ第八十九段で取り上げるのが「あきみち」という話。

あらすじは以下の通り。
 1.鎌倉の富豪山口秋広が盗賊金山八郎左衛門に殺害される。
 2.翌年、京都で訴訟中だった秋広の一子秋道が帰宅し、父殺害の悲劇を知る。
 3.秋道は父の仇討ちを誓い、金山八郎左衛門の捕捉に血眼になるが、上手くいかない。
 4.一向に打開の道が開けないことに業を煮やした秋道は、自分の美しい妻を遊女として
   金山八郎左衛門に近づけ、彼の所在を掴む案を思いつく。
 5.秋道は嫌がる妻を説得し、彼女を遊女として金山八郎左衛門に接触させる。
 6.そんなことを知らない金山八郎左衛門は、秋道の妻を美しい遊女として寵愛する。
 7.やがて一年が過ぎ、秋道の妻は八郎左衛門の子を妊娠する。
 8.子を孕むまで慣れ親しんだ女だからということで、八郎左衛門は秘密のアジトを秋道の妻
   にばらしてしまう。
 9.秋道は妻からの情報を基に八郎左衛門の殺害に成功する。
10.秋道の妻は実質二人の男の妻となり、かつ子まで設けた男が殺害されたことに心を痛め、
   出家をする。そして秋道もそれに続いて出家し、山口家は金山八郎左衛門の忘れ形見が
   継いだ。

この話を見た時、我らが兼好先生の徒然草第百八十八段「ある者、子を法師になして」が連想されました。その段の中で兼好先生は囲碁を例に挙げ、以下のようにおっしゃっておいでです。
十を捨てて十一に就くことは難し。一つなりとも勝らん方へこそ就くべきを、十まで成りぬれば、惜しく覚えて、多く勝らぬ石には換へ難し。これをも捨てず、かれをも取らんと思ふ心に、かれをも得ず、これをも失ふべき道なり。
要するに「何かを達成しようとするなら、相応の犠牲・コストは惜しむな」ということです。山口秋道は妻という犠牲を払って(十の石を捨てて)父の仇討ちという本望を遂げました(十一の石を取りました)。

投資の道もまた同じではないでしょうか? 儲けるためには相応のリスクを背負わねばなりません。そしてリスクが背負いきれないほど大きくなった(或いはそうなる見込みが非常に高い)と判断される時は、心に苦いものを感じながら損切りをする必要があります。もしそれが出来なければ過大なリスクに押し潰されて再起不能となり、結果的に次の儲けの機会を掴めなくなる可能性が高まります。つまり、儲けるという本望を遂げるためには、損切りによる損失実現というコスト・犠牲を甘受せざるを得ない場面があるわけです。

また、金山八郎左衛門は美女と子まで成すという幸福に溺れて用心を緩めた結果、首を取られる羽目に陥っています。これもバブルや好況の波に乗って利益(評価益含む)を出したことが慢心・油断の基となり、投資環境の反転で大怪我をする投資家に重なるものがあります。

一投資家として実に考えさせられることの多い(身につまされることの多い)物語だったので、ここに取り上げたものです。

2008年7月17日木曜日

第八十八段 ジンバブエ天中殺

「民主主義とは、投票者ではなく集計者が権力を握る制度である」と言ったのは誰であっただろうか?
「権力は銃口から生まれる」と言ったのは誰であったろうか?

アフリカ南部のジンバブエと云う国の最近の有り様を見ていると、上記の言葉がこれほど見事に当てはまる国もなかなかあるまいという気にさせられる。
この国の最高権力者であるロバート・ムガベ大統領は、3月の大統領選で野党候補に負けると、「野党候補の得票が過半数に達していない」として6月27日に決選投票を行うこととした。そして軍や警察、民兵組織といった実力機関を使って野党勢力やその支持者への弾圧を開始し、その結果、6週間の選挙期間中に野党関係者に80人~500人の死者が発生したとされる。結局、野党候補は決選投票表からの撤退に追い込まれ、ムガベ政権続投が確定した。

それでも、鄧小平以来の中国共産党や韓国の軍事政権等に代表される開発独裁型政権のように、国家経済の近代化や国民生活水準の向上に多大な貢献があればまだ救いはあるのだが、ムガベ政権下のジンバブエ経済は極度のインフレ状態に追い込まれている。
(本日のロイターが伝える所では、物価上昇率が前年比220万%に達したとか・・・)

そもそも、ジンバブエと云う国は、鉄鉱石や石炭、クロム鉱といった各種鉱物資源に恵まれたこと、そして効率的な大規模農業を背景としてアフリカの中では比較的豊かで安定した経済状況にあった。しかし、ムガベ政権が2000年に白人農場主の土地を強制収用する決定を下したことにより、経営ノウハウを有した白人農家層が壊滅状態に置かれ、輸出に回せるほどだった農業生産も激減。そこに旱魃が重なったことで飢饉とインフレに火が着き、今日の有り様となっている。この状況下で高まった国民的不満が、3月大統領選における野党候補勝利に繋がるわけだが、それをムガベ大統領は集計結果の操作と暴力の行使によって(先達の言葉を忠実になぞることによって)無かったことにしてしまった。

あまりと言えばあまりなムガベ政権の振る舞いに、欧米は勿論、周辺国からも非難の声が上がった(たとえ控え目ではあったとしても)。しかし、ジンバブエ国民にとって憂鬱なことに、国際社会には言葉や文字によるムガベ政権非難以上のものは期待できないだろう。
国連では既に幾つかのムガベ政権に対する制裁案が中国とロシアに阻まれている。もともと中国は地下資源権益欲しさ、欧米の対ジンバブエ批判・制裁が自国に対する前例となることへの恐怖等から、ムガベ政権に同情的な立場をとってきた。
それに加え、去る7月14日、欧米主体の国際刑事裁判所が、資源権益で中国と強い繋がりを有するバーシル・スーダン大統領に対し、ダルフール紛争に関する人道上の罪で逮捕・訴追する意向を示した。中国から見れば自国のアフリカ資源権益を欧米が潰そうとしている構図となるわけで、アフリカの問題について欧米が常任理事国中国の協力を得ることは一層困難になったと言わざるを得ない。

仮に欧米が独自に制裁に乗り出したとしても、経済制裁では単にジンバブエにおける中国の勢力拡大を後押しする結果にしかならないだろう。軍事的な制裁にしても、欧州や周辺国にはその能力自体がない。唯一能力を有する米国は、イラクとアフガニスタンでイッパイイッパイの状況でジンバブエに手を回す余裕はない。

どうやら、ジンバブエ国民に残された一縷の希望は、ムガベ大統領の寿命が尽きることしかないようだ(それが政治的な意味でか生物的な意味でか、或いはその両方かは別として)。

2008年7月12日土曜日

第八十三段 原油高騰と日本経産省事務次官発言

原油価格高騰が止みません。先週は1バレル=130ドル台まで下がったので「もしや」とも思ったのですが、イランが豪快にミサイルをぶっ放してくれたおかげで(あとナイジェリア紛争の停戦協定が破られそうだというわけで)、結局は140ドル台まで反発。昨晩は過去最高水準の147ドル台まで到達したとか。

市場格言に「もうはまだなり、まだはもうなり」という言葉が御座います。要するに「皆が『相場ももうお終いだ』と言っているうちはまだ相場は上げ続け、逆に皆が『相場はまだ上がる』と言い出した頃には相場はもう終局となる」という意味です。1バレル=60ドルラインを突破して以後の原油市場はまさにこれ。まこと、市場の先行きの計り難きは秋の空や乙女心に匹敵するものがありますなぁ。

そんな変幻自在な原油市場に「確実」という枕詞を付けて先行き予測を披露したのが、現経済産業省事務次官、川北隆生氏だとマスコミは伝えております。マスコミが伝える所の彼の発言は以下の通りに御座います。
・「(原油相場が)直ちに下落するかと言われたら分からないが、確実に下がる方向に動いていく」
・「『(最高値圏の)140ドルを突破して200ドルにいく』といった分析はもう非現実的になった」
(上記発言の出典:時事通信 2008年6月23日
・「どんなことがあってもファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)は60ドルだと言い続ける」
(上記発言の出典:時事通信 2008年6月9日

彼の発言と6月以降の原油市場の動きを見比べるのも一興かもしれませんが、ここでは別の問題点を指摘したいと思います。

1.経済産業省の情報分析・伝達機能は大丈夫か?
経済産業省は周知のように日本の産業政策の中枢です(少なくとも中枢の一つです)。同時に傘下に資源エネルギー庁を持ち、関連団体として石油天然ガス・金属鉱物資源機構(所謂「JOGMEC」:独立行政法人)を擁しており、原油関連の情報およびその分析結果の蓄積については日本でも有数の恵まれた組織と言えるでしょう。そんな組織の実質的なトップが、強い表現も使って示した展望が結果的に現実とは乖離している。そのことをどう考えるべきでしょうか。
一つ考えられるのは、分析を行う部署・組織の人材的なレベルが低い可能性です。
ただし、実際に各種公開資料や各組織(例:JOGMEC)の職員が示す見解(組織としての見解か、個人としての見解かは問わず)に目を通すと、一概に彼らの分析能力が低いとは言えないでしょう。実際に雑誌等への寄稿でより現在の状況に近い見解・予想を示された方もいるわけですから。
従って、事務次官の発言の背後に組織の人材のレベルの低さがあるという考えは少々無理がありそうです。
二つ目に考えられるのが、現場では正しい予測もなされている、ただし、上(終着点:事務次官)には結果的に正しい予測が伝えられていない、という可能性です。
組織(それも大規模な)における情報共有の不全発生というのは、古今東西を問わず見られる事例です。従って事務次官の発言の背後に潜むものとしては、この可能性が最も高いような気がします。
因みに、詳細なパターンとしては以下のように分けられるかと思います
  1.関東軍パターン
  大日本帝国における関東軍と東京の関係のように、現場組織が意図的に情報を独占して
  上部の意思決定に支障をきたすパターン
  2.第四次中東戦争パターン
  現場から正しい情報が上がってくるものの、それが途中で或いは最上部で握りつぶされる
  結果、しかるべき意思決定が行われない(もしくは誤った決断が下される)パターン。
  イスラエルの華麗な勝利で幕を閉じた第三次中東戦争。その後、「アラブ諸国がその雪辱を
  狙って行動を起こそうとしている」という情報が各地からイスラエル情報機関にもたらされます
  が、機関本部の人間は、「アラブに何ができる」という偏見から、危機を告げる現地報告を握
  りつぶしてしまいます。その結果、エジプトを中心としたアラブ各国軍の奇襲によって、イスラ
  エルは多大な損害を被ることになりました。
  3.「大躍進」パターン
  最高意思決定者の逆鱗に触れることを下部の人間が恐れる結果、正しい情報ではなく、最
  高意思決定者の期待に沿った情報(或いは沿うように改変された情報)のみが上に流れ
  ていくパターン。
  1958年、中国の最高権力者たる毛沢東は、当時世界第2位の経済大国であったイギリスを
  15年で追い越すという目標を掲げ、鉄鋼や農産物の一大増産計画を実行に移しました。し
  かし、その計画は未だ脆弱な状態にあった中国の工業基盤、各地域の生態的特徴を完全
  に無視したたものだったため、各地で破綻が相次ぎます。そのことを当時の共産党有力者
  であった彭徳懐が指摘すると、毛沢東は彼とその支持者を粛清・追放していきます。その結
  果、大躍進政策の不備を指摘する者はいなくなり、結果、政策は2000万人以上とも言われ
  る餓死者と中国経済の破綻という結果が出るまで継続されることになりました。
  4.根なし草パターン
  最高意思決定者が、組織とは完全に乖離した形で自分の個人的見解を方々で口にするパ
  ターン。
  最近の典型例としては、某国で一時期外務大臣を務めた某女性国会議員が挙げられる。
北畑事務次官の発言が、どの様な要因によるものかは明確には分かりませんが、彼の発言が政策の中枢(少なくともその一つ)である経済産業省の病弊を表しているとしたら、一国民としては少々暗澹たる気持ちにならざるを得ません。 ( ̄△ ̄|||

2.世界的なマネーフローの縮小への対処
現在、原油やその他資源の価格高騰によって、消費国から生産国への大規模な所得移転が起きています。一方で生産国に流れた所得は、投資や生産国の内需拡大による輸入増加によって、少なくない部分が消費国に還流し、消費国に(或いは消費国、生産国全体に)相応の利益をもたらしています。これは、外需拡大による日本経済の復調やSWFの欧米金融機関出資によるグローバル金融システムの下支えを想像して頂ければ、分かり易いかと思います。
ここで、もし事務次官が披露した意見のように1バレル=60ドル台まで下がったらどうなるか? 事務次官は下落期間等については口にされませんでしたが、徐々に長い時間を経て調整するのではなく、短い期間で一気に原油価格調整が行われた場合、どうなるか?
当然、「消費国 → 生産国 → 消費国」という資金の流れが大きな影響を受けることは想像に難くありません。その時、日本経済はどうなるのでしょうか? 点額法師個人の見解ですが「ガソリン代下がった。万歳」では終わらないと思います。原油価格崩落がもたらす負の影響について、経済産業省はどう考えているのか、それが一向に見えてこない。表沙汰になってこない。恐ろしいことです・・・。

2008年7月7日月曜日

第八十一段 カブールの爆魔

2008年7月7日、アフガニスタン・カブール市で自爆テロが発生した。狙われたのはインド大使館。テロの方法は爆発物を搭載した自動車ごと大使館に突っ込むというもの。死者は41人、負傷者は140人。

旧ソ連軍撤退後のアフガニスタン情勢を顧みれば、それはパキスタンの庇護を受けたタリバン(パシュトゥン人主体の勢力。主な根拠地はアフガン東南部)と各地域の軍閥の連合体である北部同盟(ウズベク人やタジク人、ハザール人等の少数民族主体の勢力。主な根拠地はアフガン北西部)の抗争の歴史であった。その中でインドは対立するパキスタンがタリバンを支援していることから、自身は北部同盟を支援することになる(敵の敵は味方)。
そして911とそれに続く米国の攻撃によってタリバン政権は瓦解し、欧米の支援の下、北部同盟という基盤の上に、国民統合のシンボルとしてパシュトゥン人のハミド・カルザイが大統領を務める新政権が成立して今日に至っている。だが一方でカルザイ政権の支配は首都カブールとその周辺に限定されたものとなり、地方はタリバンの残余勢力や北部同盟を構成していた軍閥勢力が割拠し、不安定な状態が続いていた。

逆に言えば、地方は兎も角、欧米の支援を背景として成立した政権のお膝元であるカブール一帯は、比較的治安が安定していた地域だったのだ。だが今回、その安定は破られた。しかも狙われたのはインド大使館。歴史的背景からいって、そして過激なイスラム教解釈に基づいて異教徒、外国人の排撃を掲げるタリバンのイデオロギーからして、インド大使館はタリバン(或いはそれに同調する者たち)にとって、第一級の標的。当然、そのことは当事国インドやカブール政権、そして欧米諸国にとっても先刻承知のことであり、高いレベルの警戒が払われていたことは想像に難くない。それでもテロが成功してしまった。

今回のテロがもしカルザイ政権の統治力弱体化(お膝元のカブールすら掌握しきれなくなってきた)を示すのだとしたら、これはテロ封じ込め、核拡散問題(アフガニスタンの混乱は間違いなく隣国の核兵器保有国パキスタンにネガティブな影響をもたらす)という観点から実に由々しきことである。

同時に、カブールでの惨事に見舞われたインドは、日本にとって経済面でも国際政治の面でも重要なパートナー足りうる国家である。そしてアフガンでテロと対峙しているのは、日本の同盟国であったり、政治経済面で多くの共通利害を持つ欧米諸国である。現在この日本でG8サミットが行われているのだから、日本の首相が音頭を取って各国首脳とともに一致してテロ批判の声明を出すぐらいのことはしてもいいのではないかと思う(多分、今の日本の総理には無理な話だろうが・・・)。

それに気になるのが、911テロもそれ自体の単発的出来事というよりは、バーミヤンの大仏爆破によるタリバンおよびアル・カイーダの国際社会への宣戦布告(2001年3月10日前後:爆破は数回に分けて行われた模様)、そして北部同盟のカリスマ的指導者であったマスード将軍の爆殺(2001年9月9日)を経て行われていたこと。
今回のカブール・テロが更なる悲劇の序曲とならなければいいのだが・・・。

タリバンが大仏破壊を行うまでの国際社会やタリバン内部の動きを活写したのが、以下の一冊。
単発的なニュースを追うだけでは分からない事情も書かれていて、とても面白い。
大仏破壊 バーミアン遺跡はなぜ破壊されたのか』(文藝春秋 高木徹著 2004年12月初版)

2008年7月6日日曜日

第八十段 インドがトウモロコシ輸出を禁止

うだる様な暑さ。京都にいた頃は上賀茂神社、下鴨神社、貴船神社、深泥ヶ池に涼みに行っていたものの、コンクリートジャングル東京に来てからは、そんな雅た避暑法は使えず。かといって下手に冷房を入れると冷房病で悲惨な目に遭ってしまう。ひたすら冷たい烏龍茶やアイスコーヒーを啜りながら耐え忍ぶことしかできない東京の夏(江戸風鈴でも楽しみたいものの、近隣から「耳障りだ」と言われてしまうのも嫌ですしねぇ)。

世界経済に目を転じれば、東京の夏に負けじと熱を発しているのが新興国のインフレ。その熱を煽り立てているとされているのが、原油と穀物価格の高騰。特に穀物価格の高騰は生産国の輸出統制をも発生させております。

BRICsの一角としてその経済成長を嘱望されていたインドもまた、インフレの熱に耐えきれずに対抗策としてムギ、コメ、食用油の輸出禁止を発動(インフレ鎮静化にどの程度の効果があるかは不明ですが・・・)。そして7月6日の日経ネットによれば、その輸出禁止リストに新たにトウモロコシが追加されたとか(出典:日経ネット)。インドのトウモロコシ生産量は2005年データで1450万t(世界生産量第6位で2.1%のシェアを占める)。ただし、大半は国内消費に回されていることもあり、輸出シェアは貿易額ベース1.3%で世界第9位(参考:FAO)。それでも米国中西部の天候不順等でタイトさを増しているトウモロコシ供給量を考えれば、十分な価格上昇要因として動いてくれそう。

中国でも「国内の穀物生産量が需要に追いつかない」という見通しを政府当局が発表しています(出典:ロイター)。当面は貯蔵分の取り崩しでしのぐらしいですが、これもいつまでもつか・・・?

そもそも中国やインドは地図で見た国土こそ大きいものの、農業に適した地域は大河川の近辺等に限定されています。そして両国とも経済構造の近代化が進行することで、農業から他産業への人口移動が急速に進行し、農地自体も住宅地や工場といった他用途への転換が進むことになります(これは戦後日本で実際に発生し、規模の大小を別とすれば他の新興国でも現在進行形の出来事)。

そんな状況下で穀物供給量を増やすとしたら、イールド(農地1エーカー当たりの収穫量の事。1エーカは4.046平方m)を増やすしかないわけで・・・。
そうなると必要になるのは収穫量の多い品種の種子と大量の肥料。今回のニュースが、ここ1週間ほど不甲斐ない値動きのモンサント(mon:NYSE:GM作物種子メーカー最大手)とポタッシュ(正式にはポタッシュ・コーポレーション・オブ・サスカチワン:pot:NYSE:肥料生産能力で世界最大手のカナダ企業)の支援材料になってくれればよいのですが・・・。 ( ̄w ̄)

2008年7月4日金曜日

第七十八段 百日の鯉? 恋?

『徒然草』第二百三十一段に「園の別当入道は」というお話が御座います。

<あらすじ>
園の別当入道(俗名:藤原基氏 1211年~1282年)という当代一の料理人がおりました。ある日彼も参加した酒宴で見事な鯉が披露されます。宴の出席者たちは誰もが園の別当入道が鯉を見事に捌くさまを見たいと思うのですが(現代で言うところの『料理の鉄人』?)、そんなことを軽々しく言うとミーハーに見られやしないかと思って誰も「名人、ちょっと捌いてみて下さいよ」の一言が言えません。そんな空気を察した園の別当入道は、「ここ百日間ほど鯉を毎日欠かさず捌くことを日課としています。今日それを欠かすわけにもいきませんので、その鯉を捌かせてはもらえませんか?」と言って存分に妙技を振るい、人々はそれを堪能しました。
この園の別当入道の機転に対し、我らが兼好先生は「作為が過ぎている」と批判し、何事も素直で単純なものが望ましいのだという持論を展開したのでした。
※なお、園の別当入道の料理作法は、園流料理として現在まで引き継がれているのが凄い所。

今日のロイターであるニュースを目にした時、この「園の別当入道は」が不意に頭に浮かんできました。
そのニュースとは以下のものです(出典:ロイター

<ニュース内容>
台湾の男が当地郊外のホテルの部屋で、交際相手への愛情表現として複数のろうそくを「アイ・ラブ・ユー(愛している)」の形に並べて火をつけたところ、火災を引き起こしていたことが分かった。地元メディアが3日に報じた。報道によると、火災が起きたのは5月31日。男性がろうそくを点灯した40分後、あらためて2人で部屋に入ったところ、火災に気付いたという。英字紙チャイナ・ポストによると、男性はその後警察に逮捕され、治安を脅かした罪に問われた。

文字通り「燃え盛る愛情」というわけですが、 兼好先生なら恐らく「素直に言葉で『愛してる』と言えばいいのだ。それを下手に興趣を凝らそうとするからこんなことになるのだ。馬鹿者が。」ぐらいのことは言いそうな話ですねぇ。( ̄w ̄)

因みに、このニュースについて管理人が「火災の後、しょんぼりうなだれるヘタレ君を気丈な彼女が『全くあんたって本当に馬鹿なんだから。私がいないと何もできないくせに、下手なことするからこうなるのよ』と責め立てる。それで更にうなだれるヘタレ君。それを見て彼女が溜め息一つこぼした後に、『おちおち放っとくこともできない。いいわよ、あんたの世話は私が全部引き受けてやるわよ!』と言い放つ・・・なんて展開があったら最高に和みませんかねぇ?」と発言した所、知人に「バーカ。現実を見ろ、現実を」と冷たくあしらわれてしまいました。 しょんぼり(´・ω・`)
濁悪穢土のこの世の中、夢の一つや二つ見たっていいじゃん!! ヽ(`Д´)ノ

今回の話とはあまり(というか全く)関係有りませんが、また興味深い動画を見つけたので紹介させて頂きます。
哀調を帯びたメロディーが、盛者必衰の理をしみじみと感じさせてくれる珠玉の動画です。
・・・っていうか、大恐慌時の画像を使い過ぎじゃありませんか? (w
「Wall Street Meltdown」と違って歌詞の字幕がないのが非英語圏住民には少々きついとこですが・・・。

2008年7月1日火曜日

第七十六段 ピュロスの勝利

ピュロスの勝利(Pyrrhic victory)
犠牲が多すぎて割に合わない勝利のこと。
紀元前3世紀頃の武将ピュロスは、イタリアの都市国家タレントゥムの傭兵としてローマとの数次の激戦に勝利した。このことを部下が称賛した時、ピュロスが払った犠牲の大きさを顧みて「もう一度戦ってローマ軍に勝ったとしても、我々は全く壊滅するだろう」と言ったことに由来する。

何故唐突に慣用句の説明から話を始めたかと申しますと、英豪系資源メジャーのリオ・ティントを巡るM&Aに鉄鋼大手のミタルが参戦するというニュースを見た時、不意にこのピュロスの勝利という言葉が浮かんだからです。

リオ・ティントには、既に同じ英豪系資源メジャーのBHPビリトンが1600億ドル相当の買収額を提示して御座います(因みに日本の国家予算は大体8000億ドル程度)。そこに新たな競争相手が参入。しかもその相手が資金力には定評のあるミタルスチールとなれば、BHPが提示した買収額は更なる上乗せを余儀なくされるものと思われます。そうなった時、よしんばBHPがミタルを退けてリオ・ティントを手中に収めることができたとしても、果たしてそれが採算に見合った取引となるのか、疑問の余地なしとはしません。前掲のピュロスの勝利になっても不思議はないものと思われます。逆にミタル側は、たとえリオ・ティントを買収できなくても、買収額の引き上げでBHPの採算性を毀損できればそれで十分と考えているのではないでしょうか。

それに、リオ・ティント株式の9%を保有する中国アルミの向背も気になる所。世紀の買収劇から一層目が離せなくなりそうです。(今回の買収劇で主要関係企業がみんなボロボロになった時を見計らって、我らがヴァーレが美味しい所を全てかっさらっていく展開になれば言うことなしなんですがねぇ・・・。)
( ̄w ̄)

出典:ファイナンシャル・タイムズ 6月29日