2008年9月6日土曜日

第百十一段 中国の市場主義的環境対策

中国の環境問題の深刻さは、マスコミの報道等を通じてよく知られている。知られているだけではなく、偏西風や海流の流れに乗って中国発の各種汚染物質が日本に漂着し、酸性雨や光化学スモッグ、海洋生態系への悪影響(例:エチゼンクラゲの大量発生による漁業被害)といった実害も生んでいる。そして国際的に温暖化問題への注目が集まる中で、「資源爆食」ともいわれる非効率な産業体系が生む大量の二酸化炭素についても中国に対する海外の厳しい視線が注がれるようになってきた。

思うに、中国の経済躍進に伴う環境問題の発生で実害を被る日本としては、中国が「改革・開放」を唱えて経済成長に邁進し始めた1980年代から、莫大な円借款の内、単純なアンタイド部分を減らして主に環境分野に資金が流れるようにし、そして投じられた資金がしっかりと環境保護に役立てられているかの監察スキームを構築するといった各種施策を講じておくべきだったのだろうが、今更それを悔いても仕方がない。今後の日中の環境面での協力前進に期待するのみである(地政学的な損益が対立しがちな日中両国において、環境問題はWin-Winの関係が比較的築き易い分野でもあり、両国間の接触チャネルの確保といった点からも重要度は高いと言えよう)。

閑話休題、そんな環境問題に揺れる中国(Foreign Policy誌の2007年3/4月号では、「中国にとって最大のリスクは、環境問題等の生態学的リスクだ」と指摘されている)では、2008年8月5日に「上海環境エネルギー取引所」という取引所が開設された。JETROの9月5日付ニューズレターで知ったのだが、以下のようなことらしい。
環境保護・エネルギー技術の総合取引所を開設
-汚染物質などの排出権取引も視野に-(8月5日)
環境保護・エネルギーに関する技術や資産の取引市場「上海環境エネルギー取引所」(中国語名:上海環境能源交易所)が8月5日に設立された。国内最大の財産権取引市場である上海市連合産権取引所に設置される。環境保護・エネルギー分野に特化した技術や資産の取引所開設は中国初。上海市政府は、同取引所で二酸化硫黄(SO2)などの汚染物質やクリーン開発メカニズム(CDM)にかかわる排出権取引を行うことも視野に入れ、関連政策の策定を急いでいる。
(詳細は、2008年8月8日付け通商弘報をご参照ください)
出典:JETRO(リンク先PDF)
この中国当局の動きには、現在店頭取引となっている温室効果ガス排出枠取引を取引所取引とすることで、価格形成の透明性を高める一方、排出枠取引における価格決定権を欧米に独占させまいとする狙いがあるようだ(出典:人民網日本語版)

思うに環境関連特許や温室効果ガス排出枠取引なら、日本でももっと早い時期から取引所取引の枠組みを構築することが可能であったろうに、今年になってからやっと東証で排出枠取引の研究会が始まり、特許等の財産権取引の取引所取引実現は遥か霞の彼方という体たらく。この国では「進取の気性」は最早絶滅してしまったのだろうか?

何はともあれ、上海環境エネルギー取引所の設置が、中国の環境問題改善に資するものになってくれることを、偏西風の風下、東シナ海一帯の海流が流れ着く先の列島に住む住人としては期待したい(エコノミストの山崎元氏がビジネス誌等で発生の可能性を指摘している「エコバブル」の乱気流に呑まれなければよいが・・・・)