2008年9月13日土曜日

第百十八段 秋刀魚とアービトラージ

秋らしい爽快な晴天が続く今日この頃。こうなってくると秋刀魚を食べたくなるのは管理人だけではない筈。そんな秋刀魚について気になるニュースが二つ御座いました。

先ずはJETROのメールマガジン「WORLD INFO TRAIN ★ NEWS STATION」(9月11日配信版)で知ったことなのですが、着実に経済発展を遂げるヴェトナムで、秋刀魚の消費量が急拡大中であり、日本からの対ヴェトナム秋刀魚輸出量が、2008年1月~7月では前年同期比の65倍(3800トン)に達したというもの。食べ方としてはサンマとトマト等をヌックマム(魚醤)に漬けて煮るのだとか(交通手段や保存技術の発展によってある地域に新しい食材が持ち込まれることで、その地域の食文化に新しい可能性が芽生えるというのは、グローバル化の善き側面だと管理人は考えます)。一方で日本においては豊漁によって秋刀魚の値崩れが起きているとのこと(出典:共同通信)。

ヴェトナムでは需要が急拡大する一方、日本では過剰供給による値崩れ。何とも対照的な有様です。これを見ると、「値崩れした日本で安く秋刀魚を買い、需要拡大中のヴェトナムに売れば利鞘が稼げる」という素人考えが頭を過ります。実際、米国の農家は農産品市場動向をパソコン等を通じて把握しながら、より需要の強い作物を優先して作付したり、収穫物を振り分けたりして(例えばバイオエタノールに回すか、飼料に回すか等)、利潤の最大化を図っております。要するに金融市場でいう所のアービトラージが可能な状態に米国の農家はあるということです(アービトラージとは、一つのものに対して各市場間で異なる値段が付けられている場合、割安な市場で買って割高な市場で売ることを言います。今回の話で説明すれば、秋刀魚について日本では割安、ヴェトナムでは割高な値段がついている場合、日本で買った秋刀魚をヴェトナムで売って両市場の価格差から利鞘を稼ぐ行為がアービトラージと言えます。また、割安市場で買って割高な市場で売るという行為が続けられた結果、割安市場では買い(需要)が強まるので商品価格が上昇し、一方の割高市場では売り(供給)が強まるので商品価格が下落し、最終的に両市場間の価格差が解消されることになります)

このアービトラージを世界最大の人口地帯であるアジア圏の食料供給に生かせないでしょうか? つまり、少子高齢化による人口減少によって将来的な食料需要の縮小が予想される日本国内のみならず、アジア圏の生鮮食料品の価格動向(何処で何が割安・割高か?)をより容易に把握できるようなスキームを構築することで、輸出業者や生産者がより機動的に生産・収穫物の振り分け先を決定し、利潤最大化を追求できる状態を現出させます。そうすることで過足の地域から不足の地域へと生産物と対価が動き(アービトラージが働いた状態)、結果として生産者が豊作貧乏、豊漁貧乏に悩まされることも減少し、食料不足の悪影響も軽減できると考えられます。少なくとも日本にとっては、補助金や輸入関税に頼る従来の農林水産業支援よりは、EPA交渉やWTO会合でより多くの国々の賛同を得易いのではないでしょうか(そもそも、補助金や関税といった手段は政治的圧力によるリソース配分の歪みが発生し易く、その上不当利権や汚職の温床になりがちです)。

秋刀魚を巡る対照的なニュースを見聞して、そんなことをふと思いました。