2008年9月15日月曜日

第百十九段 潜水艦騒動

去る9月14日、国籍不明の潜水艦が日本領海を侵犯したとのニュースが御座いました。ことの詳細は日経ネットが伝える所では、以下のようなことだとか。

高知県沖、領海内に国籍不明の潜水艦

 14日午前7時前、高知県沖の豊後水道周辺の日本領海内で国籍不明の潜水艦が潜望鏡を出して潜航しているのを海上自衛隊イージス艦「あたご」が発見した。約5分後に領海外に出たとみられる。ただちに追尾したが、同8時40分ごろ見失った。海自はP3C哨戒機や護衛艦などを派遣して、周辺海域の捜索を続 けている。

 防衛省によると、発見現場は足摺岬の南南西約57キロメートル、領海の内側約7キロメートル地点。横須賀港(神奈川県)から母港の舞鶴港(京都府)に帰る途中、艦橋にいた艦長や見張り員が目視で確認した。

 潜水艦は南方に向けて航行していたという。関係機関に照会した結果、自衛隊や米軍の所属ではないと判明した。林芳正防衛相は同日夕、省内で記者団に「大 変遺憾だ。国籍が判明すれば外交ルートを通じて抗議する」と強調。中国の潜水艦ではないかとの指摘には「確認中だ」と述べるにとどめた。(14日  19:01)(出典:日経ネット

この国籍不明潜水艦が発見された豊後水道は、少し北上すれば海上自衛隊呉基地や在日米海兵隊岩国基地を指呼の間に望む要衝でもあります。

そんな場所に侵入した潜水艦の所属国が気になる所ですが、日本列島周辺で軍事行動を起こす可能性があり、かつ潜水艦の運用能力を持っている国としては、日米以外では中国、ロシア、韓国、台湾が挙げられます。この中から件の潜水艦所属国を探って見たいと思います。

第一に韓国ですが、これは以下の点で容疑者から外れるものと思われます。
・韓国保有の潜水艦の音紋は同盟国米国が把握しており、日本から米国に件の潜水艦情報
 が渡った場合、それが韓国のものであれば、すぐに特定されると想定される。
・日本政府が「潜水艦による領海侵犯」を公表したことは、日本政府としては「事件を内々に
 穏便に処理する気はない」ということを宣言したことに等しい。もし件の潜水艦が韓国のもの
 であれば、東アジアにおける同盟国同士の諍い・不信が表面化することを恐れた米国の圧
 力により、事件自体公表されることはなかったと想定される。
・現在の朝鮮半島情勢は、北朝鮮の金正日総書記の健康状態とその後継を巡ってセンシティ
 ブな状態にある。そんな中で、わざわざ韓国が「領海侵犯(しかも日本の内懐ともいうべき場
 所で)」という一歩間違えれば戦闘行為に発展しかねない挑発行為をするとは考えにくい。

第二に台湾ですが、これも以下の点で容疑者からは外れるものと思われます。
・韓国の場合と同様に、台湾保有の潜水艦の音紋は米国に把握されていると考えられ、その
 特定は困難ではないものと思われる。
・韓国の場合と同様、米国の同盟国である台湾、日本間の対立が表面化することは米国にと
 っては望ましくない事態である。従って、もし件の潜水艦が台湾所属のものであった場合、
 「領海侵犯」という事件自体が公表されず、内々に処理されるものと考えられる。
・中国との対立が本格的に解消したわけでもない状況下で、台湾が日本を敵に回しかねない
 (控え目に言っても、反発を高めかねない)挑発をすることは考えにくい。

こうなると、残るのが中国とロシア。両国とも水上艦や航空機による日本の領海・領空侵犯については実績があるだけに判断に迷う所です。ただし、以下の点を考えれば、件の潜水艦が中国所属である可能性が6割、ロシア所属である可能性が4割といった所かと思われます。
・ロシアには「西(欧米)と関係が悪化した場合は東(日本、中国、インド)との関係強化を図る」
 という外交パターンがあり、折しも今はグルジアを巡ってロシアと欧米との関係が冷却化して
 いる時期である。従って日米の離間を図ることはあっても、日本の反露感情を徒に煽る行動
 は考えにくい。
・中国には最近でも潜水艦による日本領海侵犯を引き起こした実績がある。
・冷戦時代の遺産としてロシア太平洋艦隊の主要な展開ルート(対馬海峡や津軽海峡、宗谷
 海峡等)には比較的充実した日米の監視体制が構築されている。