2008年10月28日火曜日

第百四十一段 極東アジアとブラジル

バルチック海運指数が、ニュートンのリンゴも真っ青な自由落下ぶりを見せております。具体的に申しますと、今年の5月20日に最高値の11793ポイントをつけて昨日10月27日は1048ポイント。5ヶ月間で90%以上の下落に御座います。

各種鉱石や穀物等を運搬するバラ積み船運賃の国際指標たるバルチック海運指数がここまで低迷しているのは、様々な理由はあれど、以下のニュースで伝えられる動きがその一因になっていることは想像に難くありません。

鉄鉱石値上げ攻防 最大の買い手・中国とブラジル・ヴァーレ

 世界最大の鉄鉱石輸入国の中国と、鉄鉱石世界最大手のブラジル、ヴァーレ(リオドセ)が鉄鉱石値上げを巡り舌戦を繰り広げている。世界景気が減速傾向を強める中、資源価格の攻防が顕著になってきた。

 発端はヴァーレが9月、日本や中国などの顧客に対して「欧州向け価格とそろえる」として年度途中では異例の値上げを求めたこと。中国では自動車需要の減 速などを背景に鉄鋼需要も減少。港では引き取られない輸入鉄鉱石が大量に滞留している状態で、鋼材の値下げも相次いでいる。(10:47)

出典:日経ネット

資源爆食中国のいわば影法師として存在感を高めてきた資源国ブラジル。そのブラジルが、徐々に極東アジアに於いて単なる原材料供給国の範疇を超えて存在感を増しつつあります。

今年4月10日には国営石油会社ペトロブラスが日本のエクソン系製油会社南西石油を買収しております(出典:ブルームバーグ)。意外に知られておりませんが、この南西石油という会社は、沖縄県の西原町に精油施設を抱えている関係から、在沖米軍にジェット燃料の供給も行っていた会社です。台湾海峡や朝鮮半島の発火抑止が在沖米軍の行動能力に依っている面が大きいことを考えると、その在沖米軍の動力源の少なくとも一部に、米国との友好関係を維持する一方で中国との経済的繋がりの大きいブラジルという存在が関与することになったことは、地域安全保障の文脈上、軽視できない動きでしょう。

また、ブラジルが極東アジアで展開する外交について、以下のニュースも興味深いものがあります。

北朝鮮に大使館開設検討=時期は未定-ブラジル

 【サンパウロ27日時事】ブラジル外務省当局者は27日、北朝鮮の平壌に大使館開設を検討していることを明らかにした。両国は2001年3月に国交を結び、北朝鮮はブラジルの首都ブラジリアに既に大使館を設けている。
 同当局者は「長期的な視野で大使館をつくる方針で、互いに協議中だ」と語った。設置時期は「まだ予備的な検討で未定」としている。(2008/10/28-08:24)(出典:時事通信

当ブログでも度々「北朝鮮は地下資源に恵まれた地域である」という点について触れてきましたが、そこに鉄鉱石シェア世界第1位の金属メジャーたるヴァーレを擁するブラジルが、大使館開設を検討しているとの由。ヴァーレの民営化が97年と最近のことで、今も同社とブラジル政府との間に強いコネクションがあることを考えると、今回のブラジルの動きは、ヴァーレが将来的に北朝鮮に於ける資源権益を獲得していくための援護射撃といった見方もできるでしょう。ヴァーレのADR(rio:NYSE)を保有する者の観点からすれば、少なくとも悪くはないニュースです。

今後、極東アジアの政治経済にブラジルがどれだけのインパクトを与える存在となっていくのか、非常に興味深い所です。( ̄w ̄)