2008年11月21日金曜日

第百五十六段 21世紀の矛盾論

楚(注1)に盾と矛を売る者がいた。盾を褒めて言うには、「この盾の堅いことと言ったら、突き通せるものなど御座いません」。矛を褒めて言うには「この矛の鋭いことと言ったら、突き通せないものは御座いません」。そこで見物人が問うに「じゃあ、あんたの矛であんたの盾を突いたらどうなるんだい?」と。商人は答えることができずに黙りこくってしまった。

注1:長江中流域にあった古代国家。現代中国の地域区分で言えば、
   湖北省、湖南省を中心とした一帯を支配していた。

ご存じ、「矛盾」という言葉の語源となった故事に御座います(出典は『韓非子』)。

つい最近まで、点額法師はこの故事を「韓非が論を進めるために創ったフィクション」だと思っておりました。でも今では、「意外と本当にあった出来事なのかも知れない」と思っています。考えを変えるキッカケとなったのが、ロイターに載っていた以下のニュースです。

死去した富豪、「永遠の命」保証の風水師に

遺産譲る遺言=報道


[香港 11日 ロイター] 昨年4月にがんで死去した香港の富豪の女性が生前、「永遠の命」を約束した風水師に財産を譲り渡す遺言を作成していたなどと、11日付の地元紙が報じた。

 この女性は、生前アジアで最も裕福な女性だったニナ・ワンさん。メディア報道によると、ワンさんの遺産は推定120億ドル(約1兆2000億円)余りに上るが、2通の相反する遺言が存在して相続手続きが難航している。

 実業家で熱心な風水愛好家のトニー・チャン氏が2006年にワンさんが病床で作成した遺言では自分が唯一の相続人だと訴える一方、ワンさんの家族は2002年の遺言に基づき相続権を主張している。

 サウス・チャイナ・モーニング・ポストは、ワンさんの家族の弁護士が当地の高裁で、「われわれは、トニー・チャン氏がワンさんに対し、遺言にチャン氏の名前を入れることなどが永遠の命や長寿を保証するだろうなどとうそをついたと主張する」と述べたと伝えた。

出典:ロイター

「不死」を保証した風水師のために遺言状で便宜を図る不死と遺言状。まさに突き通せるものの無い盾と突き通せないものの無い矛の関係。聞けば「不死が保証されてんのに、何で遺言状なんぞ作るんだ?」と突っ込まずにはおれない話。これが凄いのは、紀元前作の例え話ではなく21世紀の香港で発生した実話ということ(誤報やヤラセでない限り)。(w ̄;)

一見すると「始皇帝以来、不老不死の好きな国民性ですね」と思ってしまいますが、考えると甘言・佞言を弄して人に取り入ろうとする不埒な輩はいつの世、いつの国においても存在するもの(例えば永田町とか、永田町とか、ながたt・・・・)。いざ自分の前にそんな輩が現れた時、「じゃあ、あんたの矛であんたの盾を突いたらどうなるんだい?」と突っ込める冷静さを常に心がけたいものです。