2008年11月7日金曜日

第百五十段 オバマ次期大統領は石油の使者か?

去る2008年11月4日の米国大統領選で勝利し、次期大統領の座を射止めたオバマ氏。その彼がどんな政策を打ち出してくるのか? そしてそれが日本や世界にどんな影響を与えるのか? について様々な人々が希望或いは恐怖を込めて予想を語っております。点額法師もそんな口さがない京雀の群れの一員となり、独断と偏見に満ちた見通しを示してみようかと思います。

結論として、オバマ政権は日本の石油戦略・安全保障戦略にとって望ましい状況を作り出してくれる可能性がある、と点額法師は考えます。何故そのような結論を導き出したか、以下の文章でご説明致します。

大統領選でブッシュ政権からの「Change」を掲げて大勝を収めたオバマ氏ですが、意外に「Change」の余地は無いかと思われます。というのも第二期に入ってからのブッシュ政権は、外交では穏健な国際協調主義、経済政策についてはウォール街に口も金も出す介入主義に転じているからです。

外交面の変化について、第一期ブッシュ政権(特に911テロ後の)は、卓絶した軍事力を背景に「世界をアメリカにとって安全なものに作り変える」という一大戦略の下、先制と単独行動を行動原理とした国際秩序の変革者(破壊者)として行動しました。その戦略がイラクで頓挫した結果、第二期ブッシュ政権は地域大国や国連との協調を中心とした現状維持・安定優先の外交スタンスに舵を切ります。このことは、極東アジアに於いては六カ国協議や中国に対する抑制された態度、中東に於いては国連常任理事国や欧州との協調を優先した対イラン政策を見れば一目瞭然です。

経済面の変化について、当初のブッシュ政権は民間の自由な経済活動に対して不介入主義を旨としてきました。ところが、住宅バブルの崩壊が世界を揺るがす一大金融危機に発展するや、金融機関への公的資金の投入や市場規制の強化といった介入主義に転じております。

つまり、オバマ氏が大統領選で掲げた国際協調的な外交政策、経済に対する政府のコントロール回復は、既に第二期ブッシュ政権で大枠として採用済みの路線と言えます。従って、オバマ氏が選挙期間中に訴えた外交政策や経済政策を実行に移した場合、意外な程に前政権との違いが見えにくいものとなる可能性が高いと言えます。これは「Change」を最大の旗印とするオバマ政権にとって非常に厄介な問題となります(有態に言えば、飽きられて次の大統領選が危うくなる)。

そこでオバマ政権には、前政権との違いを明確に示す政策を実施する必要が出てきます。その切り札として有力な存在が、オバマ次期大統領が選挙期間中に度々口にしてきた「イラク撤退」と「アフガン安定化」です。一方でオバマ次期大統領が引き継ぐことになる米国には、「イラク撤退」と「アフガン安定化」を独力で達成するだけの資産は殆ど残っていません。よって誰か有力な協力者を獲得しなければならないのは自明の理。ならばその協力者とはどの国か? 地理的配置と政治的影響力を考えれば、その最右翼はイランとなるでしょう。パキスタンやインドと言った前例を考えれば、米国が「平和的」核開発の容認と経済制裁解除を実施し、イランがイラク、アフガン安定化に向けた対米協力を行うという形で、米・イラン関係が電撃的に改善する可能性があります。

そこで出てくるのが日本。少資源国日本にとって、イランの豊富な原油(2005年時点埋蔵量世界2位)・天然ガス(2005年時点埋蔵量世界2位)は真に魅力的な存在です。実際に日本は2005年時点で原油輸入量の13%程度をイランから購入しています。と同時に、今までイランが日本の同盟国たる米国と緊張した関係にあったため、日本のイランに於ける資源権益は日米同盟の不安定要因ともなってきました。もしオバマ政権の米国が、政治的必要性の命じるままにイランとの関係改善に動いた場合、日本にとっては日米同盟への悪影響を心配することなく、イランでの資源権益獲得に邁進できるという夢のような環境が現れることになります。

同時に、日本にとって安全保障上の脅威となっている中国の軍備強化に一定の制限を加えることも可能となるかもしれません。日本とイランとの経済関係が強化され、その結果として流入してきたジャパンマネーをイランが軍事費につぎ込んだ場合、イスラエルや欧州への脅威度が上昇することになります。当然彼らは日本に懸念を伝えてくるでしょうが、この時日本は次のように言えばよいのです。「君たち(欧州やイスラエル)は中国に兵器や軍事技術を売却・提供している。それが止むまで我々はイランに金を流し続ける」と。

実際にオバマ政権の米国とイランとの間で関係改善があるかは、神のみぞ知る所ではありますが、一つの可能性として考慮に入れておくのも悪くないかと思われます。( ̄w ̄)