2008年11月22日土曜日

第百五十七段 食はカンボジアにあり?

一時の狂乱的なコモディティ・バブルも崩壊し、石油や各種金属資源、農産物の市場価格が下落に転じたことで、食料危機やエネルギー危機といった言葉もすっかり忘れ去られようとしております今日この頃。しかし、世の中には食料の安定供給に気を抜いていない国も依然としてあるように御座います。2008年11月21日のThe Financial Times紙が「Cambodia holds land deal talks」という題の記事でそんな各国の動向の一端を伝えております。

記事の概要としては、現在クウェート、カタール、中国、そして今年はコメ不足に泣いた韓国やフィリピンといった国々がカンボジアでの農地投資に強い関心を示したり、実際に投資を行っているというものです。カンボジアの農業状況を鑑みれば、メコン河とトンレサップ湖という水源に恵まれた大地が広がっていることから、国土面積:約18万K㎡の21%が農地として利用され、人口:約1400万人の34%が農業従事人口という農業国家。主要作物としてはコメ、天然ゴム等があります(以上、参考文献:『データブック・オブ・ザ・ワールド 2007年版』 二宮書店)。記事によれば、そんなカンボジアに対し、クウェートが約5.5億ドルの農業投資でカンボジアと合意し、中国(そう、メコン河の源流たるチベットを押さえ、カンボジア内戦時にはポル・ポト派やシアヌーク派のパトロンとして影響力をふるった、あの中国です)は昨年に約6億ドルの資金貸与を行ったとか。(因みに日本で今話題になっている「定額給付金」の規模が約200億ドル。規模の大小は兎も角として、クウェートや中国の対カンボジア投資の方がよっぽど生きたお金の使い方に見えるのは僻目ですか? そうですか)

FT紙の記事ではカンボジアが取り上げられておりましたが、資金的に豊かな国々が途上国に農業投資を行うという事例は他にもありまして、スーダンやルーマニア、ウクライナ、パキスタンや中南米諸国にも農業投資を目的とした中東マネーが流入しているとか・・・(参考文献:『フォーサイト 2008年10月号』 新潮社

経済的に豊かな国の資金が農業投資という形で途上国に流入するのは、経済発展から取り残されがちな途上国農村部の生活水準向上に繋がる一面があり、個人的には良いことだと考えております(無論、農業投資の契約内容やそれによる果実が公正に分配されるか? といった問題があるのは事実で、そういった問題点について解決や悪影響低減のために国際的なガイドラインも場合によっては必要となってくるでしょう。)

ここで食料の大半を輸入に頼る(というか頼らざるを得ない)日本の状況に視点を移すと、日本で「食料安全保障」というと、どうしても議論が「どうやって国内自給率を上昇させるか」に集中していく傾向が御座います。しかし考えてみれば、「どうやって国内自給率を上昇させるか」という議論については、単純に食料自給率を上げた所で、もし日本自体が冷夏等の異常気象に襲われてしまえばあまり意味がないわけで、リスク分散の観点からは不十分な議論と考えられます。本来ならば「日本国民に対して好都合(安全性や価格、嗜好等の面で)な食料供給態勢を如何に築くか?」という議論が初めにあり、その上で「何処までを輸入に頼るのか?」、「何処までを自給でやっていくのか?」といった議論に入っていくのが本筋のように思われます。

閑話休題、個人的にこういったニュースを見ると、「新興国の成長によるコモディティ需要の逼迫」というシナリオが完全に死んだわけではない、と少しだけ勇気づけられる気がします(モンサント(mon:NYSE)やポタッシュ社(pot:NYSE)に直接的影響が及ばないにしろ)。
(´ヮ`;) サイキンノシジョウノウゴキニハ、ウチノメサレッパナシダッタカラナァ・・・