2008年11月27日木曜日

第百六十段 ヨルダンの原子力開発

中東にヨルダンという国がある。イスラエル、シリア、イラク、サウジアラビアに囲まれためぼしい産業のない国である。そのヨルダンが最近、原子力開発に力を入れているらしい。ネット上で確認できるものを拾ってみると、実際、以下のようなニュースを確認することができた。

<ヨルダンの核開発の軌跡(2008年11月26日時点まで)>
・2008年11月4日  日本の資源エネルギー庁原子力政策課長、
             講演で「ヨルダン等から原子力開発にかかる協力要請がある」旨を公表。
(出典:日本原子力産業協会(原子力関連ニュース))
・2008年10月24日 韓国と原子力協定を仮締結
(出典:Yahoo!ニュース)
・2008年10月2日  仏アレバ社とヨルダン中央部におけるウラン共同探査協定締結
(出典:日本原子力産業協会(原子力関連ニュース))
・2008年8月19日  中国と原子力協定を締結
(出典:サーチナ)
・2008年6月29日  英国と原子力協定を仮締結
(出典:時事通信)

元来石油資源に恵まれず(天然ガスは多少あるものの、殆どが希少な外貨獲得手段として輸出に回されている)、ヨルダン川の汚染や枯渇懸念、都市人口の急増に悩むヨルダン政府にとって、原子力による発電能力の強化や海水淡水化事業は魅力的なものだろう。

また、個人的な独断と偏見だが、ヨルダンの核開発には、イランの核開発問題に神経を尖らせるサウジの意向も見え隠れしているように思える。イランに核開発の独走を許してしまえば、サウジの中東における政治的影響力は大きく後退することになる。かといってサウジ自身や同国の影響力が強いGCCという枠組みで核開発を行った場合、どうしても対イラン牽制という色合いが強く出てしまう上、「何故豊富な原油・天然ガスがあるのに、原子力にこだわるのか?」という現在イランが欧米諸国から突き付けられているのと同じ疑問に直面し、徒に欧米の疑念すらも高めてしまいかねない怖さがある。

そこでサウジとしては、同じイスラム教スンニ派の王制国家であり、同時に全方位等距離外交を掲げ、石油資源に乏しいヨルダンに核開発を先行させることで、イランや欧米の警戒感を煽ることなく、いざという時に備えて各種ノウハウや放射性物資の提供を受けようという狙いがあるのではないかと考えることもできよう。

そしてヨルダンの地理的配置をもう一度確認して見れば、北方には親イランのシリア、そしてそのシリアとイランの支援を受けたヒズボラが割拠するレバノンが鎮座している。西にはイスラエル、そしてイランの支援を受けるハマスと欧米の支援を受けるファタハが内部抗争を繰り広げるパレスチナ自治区が存在する。一見するとヨルダンの原子力施設は随分と剣呑な位置にあるように思えるが、イランの中東における影響力の拡大を防止するという意味で、ヨルダンの核開発を支援・擁護することについてサウジとイスラエルには寧ろ共通の利害が発生するのではないだろうか。最近イスラエルがハマスの勢力圏であるガザを中心に掃討作戦を強化しているのも、或いはヨルダンの原子力開発の安全を図るという意図を含んでのことかもしれない。