2008年12月28日日曜日

第百八十二段 北京からのプレゼント

この12月を振り返ると、中国が米国との関係強化に動き出していることを窺わせるニュースが報じられております。

・中国政府による米国債積極購入(出典:日経ネット
→過去のブログでも書いたような気がしますが、結局中国の莫大な外貨準備を受け止められる
 だけの規模・流動性を有する市場は、エージェンシー債市場が信頼を失った今、米国債市場
 しかないわけで、金融危機云々を抜きにして中国は米国債の購入を続けていかざるを得ない
 立場にあるといえます。それでもCDS市場で米国債のデフォルトリスクがジワリジワリと上昇して
 いく中、世界最大の外貨準備国が米国債購入を積極化していくことは、金融面のみならず、
 政治面でも一定の効果をもたらすでしょう。一見すると当たり前の行為、否応なくしなければな
 らない行為を宣伝や実行タイミングを上手く調節することで、相手に着せる恩に変えるやり方
 は、個人の生活においても学ぶべき点が多そうです。

・中国海軍、ソマリア沖の対海賊作戦に艦艇を派遣(出典:日経ネット
→派遣される中国海軍艦艇は、既にソマリア沖に展開している米国等のNATO艦艇と協力しな
 がら海賊掃討を行うらしいです。「海賊退治」という国際社会が納得する大義名分を掲げて兵
 を動かし、同時に既にソマリア沖に艦艇を派遣している米国等のNATO諸国との関係強化、
 外洋海軍としてのノウハウ・経験蓄積、各経済協力とセットにした上でのアフリカ諸国へのプレ
 ゼンス誇示、これらの戦略的利益を同時に獲得しようという中国の布石の置き方は実に鮮や
 かなものです。
 今後、更に中国が人民解放軍をPKO名目なんかでアフガンやイラクに派遣することになった
 ら、日本の存在感はワシントンの外交レーダーから一気に消失してしまうのだろうなぁ・・・・。
 (その分、米国がもがく泥沼に中国も引きずり込まれるリスクはあるとして・・・・。)
 因みに、中国共産党政権が海軍艦艇をアフリカに派遣したのは、確か2007年の7月28日の
 タンザニア・南アフリカ訪問が最初だった筈(出典:人民日報(日本語版))。それより古いも
 のとなると、記録上は14世紀(日本で言えば、大体足利義満なんかが活躍していた頃)に明王朝
 によって実施された「鄭和の大航海」まで遡ることになる。
 
・中国、トウモロコシ輸出抑制か(出典:ブルームバーグ)
→国内の内陸農村部と沿海都市部との巨大な経済格差に悩む中国は、農村所得
 の引き上げで問題解決を図ろうとしております。当ブログの第百七十一段では、
 「北京政府は農村所得引き上げ策の一環として、トウモロコシ輸出の促進を図って
 いるらしい」と書きました。ところがその後の動きで、寧ろ中国政府はトウモロコシ
 輸出を抑制する方向に舵を切ったらしいとのニュースが流れました。この促進から
 抑制への180度の転換が意味する事は何か? 色々なことが考えられようと思いま
 すが、一つ「対米配慮」というのも考えられるかと思います。米国の世界的な影響力
 が、経済や軍事面での突出のみならず、その巨大な穀物生産とその輸出にも支え
 られているのは周知の通り。もし中国が当初の予定通りトウモロコシ輸出を促進して
 いた場合、米国産トウモロコシの世界的シェアは下落することが考えられます。そう
 なった場合、ワシントンの目には「政治・経済面のみならず、食料安全保障でも影響
 力拡大を図る中国」という構図が浮かぶことになり、徒に警戒感を高めてしまう可能性
 が考えられます(特に金融危機やイラク失政で米国の国際的威信が大きく揺らいでい
 る今は)。そんな事態の回避を目的の一つとして、中国政府はトウモロコシ輸出を抑
 制することにしたのではないか、というのが点額法師の考える所。

これらオバマ次期政権を睨んだ秋波が中国から米国に送られ、2009年1月1日には米中国交樹立30周年という記念が控えている中、米国との同盟を外交基軸に据えている日本はどうするんですかねぇ? 政権の持続性に疑問符がつき、「あれはできません。これもできません」、「どうせ民主党政権なんだから日本軽視・中国重視なんでしょうと」と言っているだけでは、間違いなく米中の狭間に埋没していくことになろうかと思われます。まぁ、それで日本国民(もっと突き詰めて言えば点額法師個人)の豊かさと平和、自由が守られるなら、一向に埋没してもかまわないのですが・・・・。( ̄w ̄)

そんなことをつらつらと考える2008年年の瀬。

2008年12月27日土曜日

第百八十段 コンタンゴ1

原油価格について欧米の投資銀行連が「1バレル=180ドル」、「1バレル=200ドル」と言った者勝ち的な予想をぶち上げ、それに某国の経済官庁事務次官が逆切れしていた、あの狂乱の日々。バイオエタノールが持て囃されたことによるトウモロコシ・コムギ・ダイズの先物価格乱舞と世界各国で発生した「喰い物よこせ」暴動が世を騒がせた騒乱の日々。勢いに乗る金属メジャーが中国や日本の鉄鋼メーカに2倍近い鉄鉱石価格値上げを突き付けた熱狂の日々。

・・・それも今は昔の物語。今やWTIはピークから100ドル以上も下落し、農産品も鉱物も等しく価格下落に巻き込まれる毎日に御座います。その余波によって一時盛り上がった「資源小国日本は、資源の安定供給を如何に図るべきか」といった議論は胡散霧消してしまいました。

では、今後もコモディティ価格は下落の一途を辿り続けていくのでありましょうや?
いや、市場はどうもそう考えてはいないようです。と申しますのも、NYMEXやCBOTといった商品先物市場を見てみますとコンタンゴという状態が依然として継続しているからです。

そもそも先物市場を見てみれば、そこには「限月」というものが御座います。この限月とは先物契約の満了月、有態に言えば、取引決済の最終期限となる月のことです。この限月が最も近いものを「期近」、期近より未来のものを「期先」と申します。そして先物市場参加者は、限月の異なる先物を売買して利益確保やリスクヘッジを行っているわけです。WTIを例としますと、現在の期近が2009年2月となり、そこから一月毎に限月が設定されて、最も遠い期先が2017年12月となっております(基本的に米国の先物市場では期近が最も多く取引されるため、単に「WTI価格」といえば期近に付けられた価格のことを指します。このことはトウモロコシ等の農産物においても同様です)。

そしてコンタンゴとは、先物価格が期近から期先に行くに従って価格が上昇していく状態のことです。このような状態になる場合、先物市場では「現在は潤沢な商品供給が将来的には逼迫してくる」との予想が支配的であることを示します(逆に期近から期先に行くに従って価格が下落していくことを「バックワーデーション」と言い、市場が将来的な供給過多を予測していることを示します)。
それを具体的なグラフの形にしたのが以下の図に御座います。

WTI                                             トウモロコシ(シカゴ)

NYMEXデータより点額法師作成                             CBOTデータより点額法師作成

WTIをみれば、12月第2週から第4週にかけて全限月で価格が下落し、一方のトウモロコシ(シカゴ)では12月第3週から第4週にかけて全限月で価格が上昇していることが分かります。一見すると対照的な両者の動きですが、期近から期先に行くに従って価格が上昇している点、つまりコンタンゴの状態にあることは共通しております。特にWTIを見れば、2009年2月限から2011年8月限にかけての価格上昇が急になっているのが気になる所。(w ̄;)

この先物市場が示した原油やトウモロコシの先高予想。そして各国中銀が金融危機打開のために行った(そして今も行っている)大規模な市場への資金供給。この二つを考え合わせれば、金融危機終息後の世界がゴルディロックス経済の状態に戻ってくれることは、あまり期待できなさそうです。

第百七十九段 「友達」ねぇ・・・・

欧州の動物愛護活動家が自分達の国の獣食文化のみならず、他国の獣食文化にまでケチをつけることは、特段珍しいことではない(韓国の犬食然り、日本の海獣食然り・・・)。ところが今度は、「足のあるもので食べないのは机だけ。空を飛ぶもので食べないのは飛行機だけ」とまことしやかに囁かれる中国で、中国国民(の一部)が自国の獣食文化に物言いをつけたというのだから、なかなか面白い。

槍玉にあがったのは「猫食」。烽火が上がったのは広東省だという(詳細は以下の報道参照)。

「猫は友達、食べ物ではない」

中国、愛猫家が抗議活動

  【北京27日共同】さまざまな動物を食材にすることで知られる中国広東省で、猫を食用としていることへの抗議活動が広がっている。中国の愛猫家はインター ネットなどを通じて連携、「猫は友達で、食べ物ではない」との横断幕を掲げて駅前で街頭活動を行い、活発に世論に訴えている。

 背景には、生活水準の向上や食生活の変化による動物愛護意識の高まりがあるとみられる。猫の肉は広東料理の食材で、住民の一部は滋養強壮に効果があると信じている。煮込み料理に使うため冬場が旬とされ、地元紙によると、この季節には広東で1日1万匹前後が消費される。

 発端は今月上旬、江蘇省南京の駅から箱に詰められた5000匹以上の猫が広東省広州に運ばれたとの報道。これらは野良猫や飼い猫で、1匹10元(約130円)以上で売買され、流通ルートが確立しているという。

 報道はネット上で広まり、激怒した愛猫家20人以上が17日夜、広州駅前で抗議活動。北京の50人以上の愛猫家も広東省北京事務所に抗議の申し入れを行った。(出典:共同通信


猫の旬は冬。そーなのかー。
でも猫の肉って何となく筋張ってそうで、煮込むにしても牛スジと同じように結構時間を要するイメージがあるのだが、その辺どうなのか? (誰に聞いている?)

閑話休題、あの中国で市民が街頭活動を行えるようになってきたことに、何だか隔世の念を禁じえない(まぁ、中国の地方・中央当局にも「小規模で非政治的なデモ・街頭活動ならば、「ガス抜き」として許可・黙認してやってもよかろう」と考えている節があるようだが・・・・)。そして、この猫食抗議活動が発生したのが広東省であるという点から、中国沿海部の豊かさ・経済的余裕が欧州や米国、日本といった先進諸国に比肩しつつあることが改めて実感できる。さて貴州省や青海省、陝西省といった内陸諸省で同様のニュースが聞かれるようになるのはいつのことやら・・・・。

因みに、この中国の愛猫家の態度、「ボールは友達」と言いながら、後に自分たちの怒りをその友達(ボール)にぶつけた、キャプテンな翼君に比べれば、実に首尾一貫した態度と言えるかもしれない。
( ̄w ̄)

2008年12月17日水曜日

第百七十五段 音速の遅い読書『北極大変動 加速する氷解/資源ビジネスの野望』

今回の音速の遅い読書で取り上げるのは、以下の一冊。

NHKスペシャル 北極大変動―加速する氷解/資源ビジネスの野望 (NHKスペシャル)
NHK「北極大変動」取材班
単行本
日本放送出版協会
発売日 2008-11

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元々はテレビ番組としてNHKが放映したものを書籍化したのがこの一冊。

本書の構成もまた、番組の構成を踏襲して以下の二部構成となっております。
・第一部:氷が解け悲劇が始まった
→最近何かと話題に取り上げられる地球温暖化が北極圏に与える影響を主に環境面や
 自然科学に軸足を置く形で取り上げた章。
・第二部:氷の海から現れた巨大資源
→北極海海氷の大幅な減少によって、北極海に眠る莫大な天然資源の開発が可能とな
 りつつある状況について、ノルウェーの石油企業スタットオイルハイドロやロシアのガス
 プロムの動向を中心として取り上げた章。

第一部の内容も十分に面白いものだったのですが、点額法師個人として最も面白く読めたのが、北極海の資源を巡る各国政府や企業の動きを取り上げた第二章です。北極海という極限環境での資源開発に取り組むスタットオイル社やガスプロムですが、その両者の活動は各社の自己努力に加え、更に二本の柱に支えられています。一本目の柱が、三菱重工や日立造船、サムソン重工といった日韓の製造業が供給する、特殊船舶やプラント等の各種ハイテク装備。もう一本の柱が、北極海の資源開発を自国の国益に結び付けようという強固な政治的意思を持った政府の後押しです。第二章では、この石油企業、製造業、政府の動向が上手くまとめられており、北極海における資源開発の様子を立体的に浮かび上がらせていることに成功していると思います。

その第二章の中で印象深かったのは、以下の二点です。
・スタットオイル社は、油田・ガス田開発の遠隔支援施設をノルウェー本土のみならず、
 米国、中国にも設けることで、時差を利用しての資源開発24時間サポートを実現しよ
 うとしている。
 →何だか眠ることのない外為市場を彷彿とさせる動きですな。それに、スタットオイル
  社が北極海で使用しているハイテク装備品を考え合わせると、同社にとって将来的に
  は油田・ガス田開発支援サービスが新たな事業分野として立ち上がってくる予感も
  します。
・既にノルウェーが北極海で開発したガス田から、日本に向けて輸出が行われている。
 →本書によれば、2008年3月23日、ノルウェーが北極海で採掘した天然ガスを載
  せたLNG船が横浜に入港し、東京ガスの工場に天然ガス供給を行ったとのこと。
  LNG船はスエズ運河を通過して日本に至ったとのことですが、もしこのまま北極海の
  海氷が減少していけば、やがては北極海航路を利用した運搬も可能となるでしょうか?
  もしそうなれば、マラッカ海峡やアデン湾に跋扈する海賊は飯の食いあげですな。
  ( ̄w ̄)

地球温暖化の進展がもたらす影響について、様々な点から想像力を刺激してくれる一冊ではないかと思います。

2008年12月14日日曜日

第百七十三段 毒饅頭はペルシャ湾を超えるか?

イランの核開発問題が世界の耳目を集めて久しいが、そのペルシャ湾の向こう側でも核開発について動きがあったようである。UAEの英字紙Gulfnewsが12月13日に報じた所では、米国がUAEとの原子力協定締結に向けて動き出したという(記事原文は以下の通り)。

Dubai: US President George W. Bush's administration plans to sign a nuclear cooperation deal with the UAE in the next few weeks, the Wall Street Journal reported on Friday, citing a senior US official.

It said the UAE has agreed on nuclear material safeguards and will not develop its own fuel.

The country has already signed agreements with two US companies, Thorium Power Ltd of Virginia and Colorado's CH2M Hill Cos to oversee its nuclear energy plans, the Journal reported, saying the Bush administration has championed the nuclear agreement with the UAE as a model for promoting peaceful nuclear energy.

Rep Ileana Ros-Lehtinen of Florida, ranking Republican in the House Foreign Affairs Committee, introduced legislation this week that would set conditions before Congress could approve the agreement.

The newspaper said the UAE has pledged to purchase nuclear fuel for its reactors from outside suppliers, rather than developing its own fuel and would allow monitoring and snap inspections by the United Nations' International Atomic Energy Agency.

The report also said the UAE has hired a 30-year veteran of the US Nuclear Regulatory Commission, William Travers, to help run the country's nuclear regulatory body.(出典:Gulfnews)

要するに、米国のブッシュ政権は2~3週間以内にUAEとの原子力協定を締結する意向であること、UAEは独自ではなく米国と協調の上で核開発を進める意向であること、UAEは核開発にあたってIAEAの査察・監督も積極的に受け入れること、既にUAEは原子力開発にあたって二つの米国企業と契約を締結している他に自国の原子力規制委員会立ち上げのために米国原子力規制委員会のベテランを雇っていることを記事は伝えている。

中東の核開発と言えば、イランの核開発問題以外にも、GCC加盟国共同での核開発が提言されたり、ヨルダンが各国と積極的に原子力協定締結や仏アレバ社と組んでの国内ウラン鉱開発に乗り出したりといった動きがそれぞれ報じられている(ヨルダンの最近の核関連の動きについては当ブログ第百六十段参照)。これらの動きをみれば、イランとの関係が深いロシアやヨルダンと組んだフランスに負けじと米国が中東原子力ビジネスに力を入れるのもむべなるかなと思われる。

一方で軍事目的の核開発が懸念されているイランにとって、ペルシャ湾対岸のUAEは有数の貿易相手国。その上、イランから多くの情報関係者が既にUAEに浸透していると言われている。それを考えれば、米国がUAEに提供した核技術・情報がイランへ流出する可能性は捨てきれない。そう考えると、米・UAE原子力協定は、一見すると米国にとって仇敵イランの核開発を援助してしまいかねない、随分とリスキーな政策に見えてしまう(それに米国のイラン攻撃が実施された場合、UAEの原子炉がイランの報復対象なりかねない怖さもある)。

そこで、確かな根拠の全くない個人的な妄想だが、ひょっとして米国はわざとUAEを通じて偽の原子力技術・情報をイランにリークしようとしているのかもしれない。核開発(軍事目的か民生目的かは別として)に血道をあげるイランにとって、米国の原子力技術・情報は手を伸ばしたくなる魅力的な存在であると思われる。ならば、それを逆手にとって虚偽の原子力情報、致命的なバグを抱えた原子力技術をイランに流し、その核開発を頓挫させる策も机上では成り立つ。いや単なる机上の空論ではない。

この相手が欲する情報・技術という饅頭に虚偽・バグといった毒を仕込んで提供するという策略について、既に米国は経験を有している。それは、1982年の旧ソ連におけるパイプライン大規模爆発事件である。一説にその爆発規模はTNT火薬3キロトン相当。核爆発ではないかとの憶測も一時的に流れたというから、その爆発の凄まじさが知れよう。この事故には裏があった。当時、西側のハイテク情報を狙ったKGBの活動に業を煮やしたCIAは、意図的に一定条件で発現するバグを仕込んだパイプライン制御用ソフトウェアを開発し、それをKGBに掴ませることに成功する。そしてそのソフトウェアが実際に使用され、仕込んだバグが発現した結果、件の大規模爆発が発生したというのだ。結果、ソ連のパイプライン建設に多大な遅延が発生した他、西側産ソフトウェアに対する疑心暗鬼からソ連の経済・軍事活動は大きな打撃を受けることになったという。この話は、元米空軍長官でレーガン大統領の特別補佐官を務めたこともあるトーマス・C・リード氏の著作『At the Abyss: An Insider's History of the Cold War』に記載されている話である。

いや、或いは今回の対UAE原子力協定は、敢えて報復の対象となりかねない原子炉建設を明示することで、米国がイランに先制攻撃をする意図が無いことを示すためのサインと考えることも可能である。

また、点額法師個人としては、米国がUAEに提供するウランを何処から入手するかが非常に気になる。ここは是非カメコ(ccj:NYSE)からウランを取得して欲しいものだが・・・・。

単純な好奇心としても個人的な欲得絡みの話としても、今後の経過が興味深いニュースである。

2008年12月11日木曜日

第百七十一段 中国、トウモロコシ輸出を強化

北京政府は二匹目の泥鰌を首尾よく捕えることが出来るのだろうか? 鄧小平は「先に豊かになれる者から豊かになれ」と号令をかけて改革開放の一石を投じ、沿海都市部の不満を自由な経済活動に逸らすことで、共産党政権の延命と中国の強大化という二鳥を得た。農村地域で頻発する騒擾事件に頭を痛める胡錦濤政権もその顰に倣おうとしているようだ。

北京政府は11月13日に、鋼材や化学工業品、トウモロコシ、雑穀および同製粉などの食糧類について輸出関税を12月1日から撤廃する通達を公布した。特にトウモロコシ、雑穀類の輸出関税撤廃については、単に国内の余剰在庫を捌こうという意図以上に、農産物の増産・輸出拡大によって農村経済を潤し、農民たちの信認を取り戻そうとする北京政府の狙いが窺える(因みに、中国のトウモロコシ生産高は世界第2位)。12月10日には、関係者の話として「中国政府はトウモロコシについて最大500万トンの輸出割当枠発給を考えている」ことが報じられた。報道によれば、中国政府はトウモロコシ輸出について税金の払い戻しや輸送コストの助成も考えているというから、北京政府もそれなりに気合を入れた政策なのだろう(出典:ブルームバーグ)。

トウモロコシの用途は飼料や食用の他、精製したデンプン(所謂「コーンスターチ」)が食品加工用、工業用、製薬用に用いられる等、非常に用途の広い作物であり、最近では、エネルギー資源(バイオエタノール)や生分解性樹脂の原材料にも用いられている。もし中国のトウモロコシ増産と輸出拡大が実現した場合、トウモロコシの需給緩和による価格下落効果が広い範囲に及ぶ可能性が考えられる。特に最近の原油価格急落で価格競争力を失いつつあるバイオエタノールメーカーには、干天の慈雨となろう(因みに、オバマ次期米国大統領が選挙期間中、新エネルギー政策として「バイオエタノール重視」を掲げていたのは有名な話)。

一方で、トウモロコシという作物は成長多量の水を必要とする作物でもある。現在の中国が、砂漠化や都市部・工業部門で拡大する水需要、そして水そのものに対する深刻な汚染問題を抱えていることを考えれば、単純な増産は先々困難に直面すると思われる。そこで注目されるのがGMトウモロコシの存在である。GM作物の世界的大手であるモンサント(mon:NYSE)は、ドイツ化学大手BASF社と乾燥耐性のあるトウモロコシを開発しており、その商品化は遠くないとされている。既に中国ではGM綿花が導入されており(作付面積350万ha)、仮に乾燥耐性トウモロコシが商品化されれば、その導入についても大きな混乱や反対は生じないものと思われる。そしてそれはモンサント(mon:NYSE)の利益、引いてはその(弱小とは言え)一株主たる点額法師の利益にも繋がる。

北京政府が果たしてトウモロコシを梃に不満渦巻く農村部の経済発展に成功するのか? そしてそれがモンサントの利益に繋がってくるのか? 個人的に気になるトピックである。

参考資料
ジェトロ北京ニューズレター 2008年12月9日号(Vol.14)
Foresight 2008年11月号 新潮社

2008年12月10日水曜日

第百七十段 モスクワより関税引き上げを込めて

当ブログ第百六十五段にて「G20の「保護主義反対声明」なんてあてにならない」ということを書いてからちょうど1週間後の12月10日、ロシアが自動車の輸入関税を引き上げてきた(出典:時事通信)。

最近のルーブル安に加え、巷間囁かれているルーブル切り下げを仮に実行すれば、わざわざ物議を醸すような輸入関税引き上げなんぞしなくとも、ロシア国産車の価格競争力はそれなりに維持・強化されると思うのだが、今までのロシアの為替政策を顧みると「強い通貨=強い国家のステータス」と考えているふしがあり、政治的に「弱いルーブル」政策に舵を切りにくい事情があることは想像に難くない。

かといって世界的な金融危機の中で各国中銀が利下げや大規模資金供給に動いている中、ロシアのみが強い通貨政策を維持し続ければ、ルーブル高外貨安によってロシアの財・サービス輸入が加速し、同国の脆弱な製造業に致命傷を与える可能性が浮上する。そのような事態は、経済の石油・天然ガス依存からの脱却を焦眉の課題とするロシア政府にとって看過し得ないものであろう(現ロシアの前身たるソ連が原油依存の経済体制から脱却できぬまま、1980年代の原油価格低迷によって国家財政に痛撃を受け、崩壊への道に転げ落ちていったことを考えれば、メドベージェフ政権が現在感じている危機感もさぞやと思われる)。

つまり、今回のロシアの自動車輸入関税引き上げは、「強いルーブル政策の維持」と「自国産業保護」を両立させることを狙った措置と考えられる。懸念される欧米等からの批判については、恐らくメドベージェフ政権はアフガン問題を人質に取ることで実害が無い程度に抑え込めると踏んでいるのではないだろうか。

ここでアフガニスタンの状況に目を移せば、そもそもアフガニスタンは内陸国。従ってそこに展開する軍勢に補給を行うには、パキスタン、イラン、旧ソ連領中央アジアのいずれかを経由する必要がある。現在はパキスタン・ルートがアフガンに展開する米軍・多国籍軍への主要な補給ルートとなっているが、ここ最近、このパキスタン・ルートにおいて米軍・多国籍軍の補給部隊を狙った大規模な襲撃が仕掛けられている(出典:共同通信)。
もし今後、パキスタン・ルートが機能不全に陥るようなことになれば、代替ルートとして考えられるのは、前述のようにイラン・ルートかロシアが強い影響力を有する旧ソ連領中央アジア・ルートしかない。しかも米国のオバマ次期政権は、大統領選挙を通じて、一貫してアフガンに対する米国のコミット強化を訴えてきた。こうしたアフガニスタンの状況を考慮に入れれば、「多少ロシアが利己的な振る舞いに出た所で、アフガン問題を抱える西側の批判は腰の引けたものにならざるを得ない」とロシア側が判断してもおかしくは無い。

とまれ、ロシアの関税引き上げの狙いが何処にあるにしろ、逆風吹きすさぶ日本の自動車産業にとってまた一つ厄介事が加わったことは間違いないだろう。特にロシア外で生産した自動車をロシアに輸出するというビジネス形態を採っている企業にとっては、頭の痛い問題かと思われる。

第百六十九段 家電下郷と3種の神器

中国の財務部と商務部は、農村部での家電購入に補助金を支給する「家電下郷」制度を来年2 月から4年間に渡り全国で実施すると発表した(現在は国内14省・自治区・直轄市で実施)。この結果、政策対象地域の総人口は3億9300万人に上り、9200億元(12兆6000億円)程度の経済効果が期待されているらしい。

因みに、「家電下郷」政策では対象となる商品を以下の4商品に限定しており、購入金額の13%程度を国が支給するものとなっている。
<対象商品>
・カラーテレビ
・冷蔵庫
・洗濯機
・携帯電話

・・・・どこかで見たことのある組み合わせだと思えば、高度経済成長期日本の「3種の神器」と殆ど変わらないことに気付く。
<3種の神器>
・白黒テレビ
・冷蔵庫
・洗濯機

白黒テレビがカラーテレビになり、携帯電話が加わっている所に20世紀中頃と21世紀初頭の差異が感じられるといえば感じられる。よく巷では中国沿海部と内陸部の圧倒的な経済格差について語られるが、上海や香港といった沿海部の都市が21世紀初頭の世界、そして「家電下郷」で恩恵が及ぶ内陸部や農村が1950年代の日本と考えると、GDPや平均所得といった数字を追いかけるよりも、中国が抱える巨大な経済格差(というか断絶)がより明確に浮かび上がってくる。

この「家電下郷」政策の狙いとしては、一般的に「世界的な景気減速を内需拡大で乗り切ることを狙った施策」と言われる。無論そうした一面も大きいのだろうが、点額法師には、「家電下郷」が大枚をはたいた北京政府の治安政策にも思える。

というのも、今中国の内陸部や農村地域では、地方政府による土地の恣意的な収用や金銭の徴発、それにともなう住民への暴力に反発しての騒擾事件が多発している(日本のニュースでも「中国××省で農民が役所を焼き打ち」といった具合に一部が報じられている)。これを根本的に解決するには、地方政府にメスを入れる必要があるが、複雑に利権の入り組んだ問題なので、一朝一夕に解決できるものではない。かといってこのまま頻発する騒擾事件を力のみで押さえつけていけば、国民の不平不満はより一層激化することになり、やがて北京政府は農民反乱の頻発で瓦解していった歴代中華帝国の轍を踏みかねない。ならば北京政府がとる手段としては、多くの国民に飴を与え、その甘みで国民の不平不満を慰撫しながら、問題の解決に着手するという手段がベターだと思われる。

その飴となるのが、今回の「家電下郷」なのではないか。実際、人間はある程度物を持ち、経済的な豊かさ・利便性をそれなりに実感できるようになれば、急速に保守化(安定化志向)に走る傾向がある。このことは「恒産無くして恒心無し」、「衣食足りて礼節を知る」といった古の聖賢の言葉にも顕れているし、現北京政府の開祖たる毛沢東が「最も革命を受け入れる」層として無産に等しい貧農を重視した事実によっても、逆説的に確認することができる。日本を顧みても、貧しい1950年代、60年代こそ安保反対闘争やら学生運動といった大規模騒擾事件が頻発したが、高度経済成長の実現と共に一気に下火となっていったのは周知のことである。

果たして、カラーテレビから流れる娯楽と冷蔵庫、洗濯機がもたらす利便性に国民の多くが酔いしれている間に、北京政府は騒擾の根本原因である政治腐敗の解決に道筋をつけられるか。実に興味深い所である(それにしても、携帯電話流通の拡大が沿海部と内陸部の反政府勢力をより結び付け易くする可能性を考えれば、よく北京政府は「家電下郷」の対象商品に携帯電話を加えたものだ)。

参考資料:ジェトロ北京ニューズレター 2008年12月9日号(Vol.14)

2008年12月7日日曜日

第百六十八段 サルコジ仏大統領、ダライ・ラマ14世と会談

サルコジ仏大統領が、中国の反対を押し切る形でチベット亡命政府指導者のダライ・ラマ14世と会談を行った。経済的魅力を前面に押し出して多くの国々を靡かせてきた中国にとって、ここまで露骨に反発を無視されたのは、最近では珍しいのではないだろうか。

例えば、米国でさえ、今年10月の対台湾武器売却において中国に最大限の配慮を見せている。
というのも、当初台湾が米国側に購入を申し入れていた主要兵器は以下の通り。総額で約100億米ドル(台湾の年間防衛費にほぼ匹敵)に達する豪気な買い物である。

・F-16C/D戦闘機 66機
・ディーゼル潜水艦
・PAC-3(パトリオット迎撃ミサイル最新版) 6セット
・AH-64D攻撃ヘリ 30機
・E-2T早期警戒機
・ハープーン対艦ミサイル
・UH-60輸送ヘリ

以上の中で、台湾の防衛戦略に死活的重要性を持つのが(中国にとっては致命的に厄介なのが)、空海における台湾の優位性を維持するためのF-16C/D戦闘機とディーゼル潜水艦、そして弾道ミサイルの脅威を軽減するためのPAC-3である。そして、上記の内、実際に米国から台湾に売却が決定された武器は以下の通り。

・PAC-3(パトリオット迎撃ミサイル最新版) 4セット
・AH-64D攻撃ヘリ 30機
・E-2T早期警戒機
・ハープーン対艦ミサイル

米国は、台湾にとって死活的重要性を持つF-16C/D戦闘機とディーゼル潜水艦の購入希望を拒絶し、PAC-3については売却数を削減している(従って購入額は約65億米ドルまで減少)。これらは米国が対台湾武器売却にあたって、最大限中国の意向を忖度した結果と推測される。

実際、この武器売却を受けて中国側は形通りの非難を発表したものの、米中軍事交流の中止は今年11月末まで予定されていた高官相互訪問など比較的軽微なものに限定され、10月8日には中国駐米大使が「今後は米国の姿勢を見守りたい」との見解を示して早々に対米非難を打ち切っている。しかも、その後の中国側の対台湾窓口機関である「海峡両岸関係協会」会長陳雲林氏の訪台が予定通り決行されたのは周知の通り。
(参考文献:Foresight 2008年12月号(新潮社) 「台湾への「米国製武器売却」でほくそえむ中国」)

それだけに、今回のサルコジ仏大統領のダライ・ラマ14世との会談は、各国の対中行動の中で異彩を放っているといえよう。しかも、会談場所にポーランド・グダニスクを選んでいることからして、中国に対する強い当てこすりを感じてしまう。
というのも、ポーランド・グダニスクは自主管理労組「連帯」の発祥の地である。その「連帯」が主導したポーランドの民主化が東欧民主化の発火点となり、ソ連崩壊の一因となったことは知られている通りである。そして、この「連帯」が火付け役となった市民運動による民主化・共産党独裁の崩壊こそ、中国が「和平演変」として最も警戒・敵視している事態なのである。
そんな場所で中国指導部が蛇蝎の如く忌み嫌う「分離主義者」の指導者と会談するというのだから、サルコジ仏大統領は本当に思いきったことをしたと言えよう。

ここでフランスの過去の対中行動を回顧すると、90年代の台湾に対するミラージュ2000戦闘機、ラファイエット級フリーゲート艦の売却が思い当たる。この武器売却の結果、フランスは、取引にまつわる贈収賄工作の露見、フランス企業が受注していた広州地下鉄工事や大亜湾原子力発電所の第二期工事の取消といった中国政府によるフランス系企業への攻撃、在中領事館(広州)の強制閉鎖といった散々な目にあった挙句、94年に初めにジュッペ外相(当時)の名義で「仏政府は今後、二度と台湾への武器売却をしない」という詫び状を北京に提出することになった(そしてフランスが態のいい「見せしめ」となったことで、台湾に武器を供給する国は米国に限定されることになった)

一見するとサルコジ仏大統領のダライ・ラマ14世との会談は、90年代フランスの失敗を繰り返す所業にも思えるし、フランスがチベットに肩入れした所で実利的に得るものは無く、寧ろ中国市場へのアクセスに支障をきたしかねないだけなのだから、愚行以外の何物でもないように思える。しかし、そんなことはサルコジ仏大統領や彼を支えるフランス外務官僚たちも百の承知の筈だ。ならば何故、サルコジ仏大統領はダライ・ラマ14世と会談したのか? しかもソ連崩壊の着火点となったポーランド・グダニスクという場所で。そこが分からない。

ダライ・ラマ14世への肩入れを明確にすることでチベット亡命政府内の対中強硬派を牽制し、あくまで穏健派主導のチベット問題解決を図りたいのか? いや現時点で中国側にチベット亡命政府穏健派との話し合いでチベット問題解決を図る意図がない以上、各種リスクを背負ってまでダライ・ラマ14世への肩入れをする価値は考えにくい。寧ろダライ・ラマ14世の国際的求心力低下を印象付け、チベット亡命政府内で強硬派の勢力を伸張させ、強硬派と穏健派の内部抗争を惹起し、暴発した強硬派を中国の手で壊滅させ、内部抗争で弱体化したチベット穏健派を抱き込んだ中国の(中国による、中国のための)「チベット問題解決宣言」を素知らぬ顔で賞賛・承認した方がフランス(そしてその他諸国)にとって話は早いと思われるが・・・・。

中国に対してフランス・欧州が容易い交渉相手ではないことを示すための示威行動か? 米国の失速を背景に、今後の国際的な政治・経済秩序を欧州・中国間で話し合う機会も増加するであろうことは想像に難くない。それを見越して、フランス・欧州が唯々諾々と中国に靡く存在ではないことを広く国際社会にアピールするためのダシにダライ・ラマ14世に使ったということなのだろうか?

それとも、北京オリンピック辺りからフランスや欧州において広まった中国への反発に対する一種のガス抜きとしてサルコジ・ダライ会談が設定されたということなんだろうか? もしそうならば、事前にフランス・欧州と中国で「中国は、サルコジ仏大統領とダライ・ラマ14世との会談を他の政治・経済問題に波及させない。フランス・欧州はその見返りを中国に提供する」といった取引が成立している可能性があるわけで、そうなると当面は遠のいたと思われたEUの対中武器禁輸解除が、逆に早く成立する可能性もでてきたということか。

或いは、確固たる戦略や政策もなく、単に人権や自由といった大義名分に酔ったか、判官びいき的な感情に押し流されるままにサルコジ仏大統領はダライ・ラマ14世との会談を決断したのだろうか?

思いつくままに推測を書き連ねてみたが、やはりサルコジ仏大統領の意図が分からない。ただ、それだけに一層興味深い。果たして中国はこのサルコジ仏大統領が投じてきたくせ球をどう打ち返すのだろう? 本当に興味深い。

2008年12月2日火曜日

第百六十四段 ASEAN首脳会議は延期

12月中旬にタイ・チェンマイで開催予定だった3会議が、いずれも来年3月に延期されたそうです(出典:共同通信)。反政府組織の跋扈・騒擾が止まない現状下、鬼に加えて狸も大笑いしそうな話ですが、至極当然の決定と言えば当然の決定。でも来年かぁ・・・・、それまでASEAN自体が存続しているんですかねぇ?(ぉ

そんなことを感じながら各ニュースサイトをチェックしていると、そのタイ、政権自体が崩壊したようです。

タイのソムチャイ政権が崩壊、憲法裁命令 空港は部分再開へ

 【バンコク=三河正久】タイ憲法裁判所は2日、最大与党「国民の力党」など与党3党が昨年12月の総選挙で党ぐるみの選挙違反をしたと認め、解党を命じ る有罪判決を言い渡した。ソムチャイ首相ら各党幹部は5年間の政治活動を禁じられ、同首相は失職、政権は発足2カ月余りで崩壊した。一方、首相退陣を求め てバンコク近郊の国際空港を占拠していた反政府勢力「民主市民連合(PAD)」は運航再開で空港当局と合意した。

 解党3党の議員はあらかじめ受け皿として設立した別の党に60日以内に移り、連立を維持する構えだ。与党議員らは2日、連立の枠組みを維持することで合 意し、8日にも下院で暫定首相を決める指名選挙を行う。解党により幹部計109人が被選挙権を5年間取り上げられたが、首相を選出する下院では3党を含む 連立与党議員が依然として過半数を占める。(20:22)(出典:日経ネット)

何だか軍部、与党派、反政府派、司法を巻き込んでの泥仕合が一層激しくなっていくような予感がしてなりませんが、このタイの有様を見ていると、学生運動や安保反対闘争の嵐が吹き荒れながらも、その鎮静化に成功した(そして高度経済成長と統治機構の安定化を成功させた)1960年代日本の自民党や霞が関が、本当に偉大な存在に見えてきます(それが今や見る影もなくおちb(以下検閲により削除))。

堪らないは中国でしょうなぁ・・・。EUとの協力強化を誇示して米国にプレッシャーを与える好機でもあったEU・中国首脳会議がチベット問題を巡って中止となり、次いで強大な経済力と豊富な外貨準備高を背景に主役の座が約束されたも同然であったASEAN+3首脳会議、東アジア首脳会議は、不甲斐ないホスト国のせいで「延期」に追い込まれる。何かに呪われたかのように晴れ舞台の予定が潰されていく中国・・・・。誰か「中国調伏」の祈祷でもやってりして・・・・?

国際的な金融危機が本格的に波及してきた日本にとっても、ASEAN+3首脳会議、東アジア首脳会議は、地域諸国と連携して対応策を打ち出すための格好のセレモニーとして利用が見込めただけに、「勘弁してくれ」と言った所でしょうか?

とまれ、来年に延期されたASEAN首脳会議、ASEAN+3首脳会議、東アジア首脳会議の開催場所は、デモ隊や反政府組織が猖獗を極める半端な民主国家よりも、政府の国内統制がしっかりしたヴェトナムかシンガポール、若しくは政情の安定した豪日あたりでやることにした方が良いのではないですかねぇ・・・?
(´ヮ`;)

2008年12月1日月曜日

第百六十三段 EU・中国首脳会議は中止されました

当ブログ第百六十一段で取り上げたEU・中国首脳会議ですが、中止となっていたみたいです。しかも中止決定が公になったのが11月26日。そして「会議の帰趨が興味深い」という旨をブログで書いたのが11月28日
・・・・・恥ずかし過ぎるッ!! (/ω\)

中国、EUとの首脳会議取りやめを通告 ダライラマ訪欧で

 【ブリュッセル= 下田敏】欧州連合(EU)は26日、12月1日に仏リヨンで予定されていたEU・中国首脳会議の取りやめを中国が通告してきたことを明らかにした。チベッ ト仏教最高指導者ダライ・ラマ14世が欧州を訪れ、EU各国の首脳らと会談するため。EUと中国は今年春にチベット自治区での騒乱で対立した経緯がある。 首脳会議の突然の中止で関係が冷え込む恐れがある。

 EUは声明で「(首脳会議中止の)中国の決定は遺憾だ。EUは国際的な金融・経済情勢などで中国と関係強化の用意がある」とした。EU 議長国フランスのサルコジ大統領は12月6日にポーランドでダライ・ラマと会談する予定で、中国はフランスに「(会談には)断固反対する」と伝えていた。(出典:日経ネット)

・・・・気を取り直して、今回の中止による中国とその周辺の国々の利害得失を考えると、以下のようになろうかと思われます。

<日本>
・EUの対中武器禁輸措置の解除が遠のいたという点では悪い話ではないと思われます。
・EUとの連携が難しくなった中国が一気に対米協調外交に舵を切ってきた場合、台湾海峡
 や朝鮮半島を巡る枠組み・合意が、日本の頭越しに米中間で形成されてしまう可能性に
 ついては注意が必要かと思われます。

<中国>
・新鋭兵器の調達源について、当面はロシア依存を続けざるを得なくなったという点で
 失点と言えるかと思います(因みに、ロシアは自国配備のものより能力水準を下げた
 武器を中国に売却しています。その理由は、主に、両国が国境を直に接している、
 そして過去(ロマノフ朝以来)何度も鋭い対立を繰り返して干戈を交えている、といった点
 にあります)
・次代の国際的な経済・政治秩序の形成にあたって、米国に張り合うためのパートナー
 としてEUに積極的な期待が当面は持てなくなった点で失点と言えるでしょう。

<ロシア>
・武器売却のお得意様をEUに奪われる危険性が減ったという意味で、朗報と言えるでしょう。
・共にロシアの原油・天然ガスの一大消費先である中国とEUの連携が見えにくくなったことで、
 強気の資源外交を進め易くなるという点で、朗報と言えるでしょう。

中国にとっても失うものの多いEU・中国首脳会議中止決定ですが、「チベットは誰が何と言おうと手放さない」という中国側の従来通りの意思表示という面の他に、ひょっとしたら中国側は、米国の次期国務長官に親中派と目されているヒラリー・クリントン氏が有力視されるという状況を考慮し、「EUがガタガタ文句を言うならば、我が国は米国と組むぞ」というメッセージも込めて今回の決定を下したのかもしれません。とまれ、巨大な人口と高い経済成長率、世界最大級の外貨準備高を誇る中国との関係が拗れたままというのは、景気後退という課題と新国際金融秩序の主導権確保という野望を有するEUにとっても頭の痛い問題の筈。中国が投げてきた首脳会議中止というボールをEUがどう返すのか、注目していきたいと思います。



でも、本当に恥ずかしい・・・・。 (/ω\)