2008年12月11日木曜日

第百七十一段 中国、トウモロコシ輸出を強化

北京政府は二匹目の泥鰌を首尾よく捕えることが出来るのだろうか? 鄧小平は「先に豊かになれる者から豊かになれ」と号令をかけて改革開放の一石を投じ、沿海都市部の不満を自由な経済活動に逸らすことで、共産党政権の延命と中国の強大化という二鳥を得た。農村地域で頻発する騒擾事件に頭を痛める胡錦濤政権もその顰に倣おうとしているようだ。

北京政府は11月13日に、鋼材や化学工業品、トウモロコシ、雑穀および同製粉などの食糧類について輸出関税を12月1日から撤廃する通達を公布した。特にトウモロコシ、雑穀類の輸出関税撤廃については、単に国内の余剰在庫を捌こうという意図以上に、農産物の増産・輸出拡大によって農村経済を潤し、農民たちの信認を取り戻そうとする北京政府の狙いが窺える(因みに、中国のトウモロコシ生産高は世界第2位)。12月10日には、関係者の話として「中国政府はトウモロコシについて最大500万トンの輸出割当枠発給を考えている」ことが報じられた。報道によれば、中国政府はトウモロコシ輸出について税金の払い戻しや輸送コストの助成も考えているというから、北京政府もそれなりに気合を入れた政策なのだろう(出典:ブルームバーグ)。

トウモロコシの用途は飼料や食用の他、精製したデンプン(所謂「コーンスターチ」)が食品加工用、工業用、製薬用に用いられる等、非常に用途の広い作物であり、最近では、エネルギー資源(バイオエタノール)や生分解性樹脂の原材料にも用いられている。もし中国のトウモロコシ増産と輸出拡大が実現した場合、トウモロコシの需給緩和による価格下落効果が広い範囲に及ぶ可能性が考えられる。特に最近の原油価格急落で価格競争力を失いつつあるバイオエタノールメーカーには、干天の慈雨となろう(因みに、オバマ次期米国大統領が選挙期間中、新エネルギー政策として「バイオエタノール重視」を掲げていたのは有名な話)。

一方で、トウモロコシという作物は成長多量の水を必要とする作物でもある。現在の中国が、砂漠化や都市部・工業部門で拡大する水需要、そして水そのものに対する深刻な汚染問題を抱えていることを考えれば、単純な増産は先々困難に直面すると思われる。そこで注目されるのがGMトウモロコシの存在である。GM作物の世界的大手であるモンサント(mon:NYSE)は、ドイツ化学大手BASF社と乾燥耐性のあるトウモロコシを開発しており、その商品化は遠くないとされている。既に中国ではGM綿花が導入されており(作付面積350万ha)、仮に乾燥耐性トウモロコシが商品化されれば、その導入についても大きな混乱や反対は生じないものと思われる。そしてそれはモンサント(mon:NYSE)の利益、引いてはその(弱小とは言え)一株主たる点額法師の利益にも繋がる。

北京政府が果たしてトウモロコシを梃に不満渦巻く農村部の経済発展に成功するのか? そしてそれがモンサントの利益に繋がってくるのか? 個人的に気になるトピックである。

参考資料
ジェトロ北京ニューズレター 2008年12月9日号(Vol.14)
Foresight 2008年11月号 新潮社