2008年12月17日水曜日

第百七十五段 音速の遅い読書『北極大変動 加速する氷解/資源ビジネスの野望』

今回の音速の遅い読書で取り上げるのは、以下の一冊。

NHKスペシャル 北極大変動―加速する氷解/資源ビジネスの野望 (NHKスペシャル)
NHK「北極大変動」取材班
単行本
日本放送出版協会
発売日 2008-11

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元々はテレビ番組としてNHKが放映したものを書籍化したのがこの一冊。

本書の構成もまた、番組の構成を踏襲して以下の二部構成となっております。
・第一部:氷が解け悲劇が始まった
→最近何かと話題に取り上げられる地球温暖化が北極圏に与える影響を主に環境面や
 自然科学に軸足を置く形で取り上げた章。
・第二部:氷の海から現れた巨大資源
→北極海海氷の大幅な減少によって、北極海に眠る莫大な天然資源の開発が可能とな
 りつつある状況について、ノルウェーの石油企業スタットオイルハイドロやロシアのガス
 プロムの動向を中心として取り上げた章。

第一部の内容も十分に面白いものだったのですが、点額法師個人として最も面白く読めたのが、北極海の資源を巡る各国政府や企業の動きを取り上げた第二章です。北極海という極限環境での資源開発に取り組むスタットオイル社やガスプロムですが、その両者の活動は各社の自己努力に加え、更に二本の柱に支えられています。一本目の柱が、三菱重工や日立造船、サムソン重工といった日韓の製造業が供給する、特殊船舶やプラント等の各種ハイテク装備。もう一本の柱が、北極海の資源開発を自国の国益に結び付けようという強固な政治的意思を持った政府の後押しです。第二章では、この石油企業、製造業、政府の動向が上手くまとめられており、北極海における資源開発の様子を立体的に浮かび上がらせていることに成功していると思います。

その第二章の中で印象深かったのは、以下の二点です。
・スタットオイル社は、油田・ガス田開発の遠隔支援施設をノルウェー本土のみならず、
 米国、中国にも設けることで、時差を利用しての資源開発24時間サポートを実現しよ
 うとしている。
 →何だか眠ることのない外為市場を彷彿とさせる動きですな。それに、スタットオイル
  社が北極海で使用しているハイテク装備品を考え合わせると、同社にとって将来的に
  は油田・ガス田開発支援サービスが新たな事業分野として立ち上がってくる予感も
  します。
・既にノルウェーが北極海で開発したガス田から、日本に向けて輸出が行われている。
 →本書によれば、2008年3月23日、ノルウェーが北極海で採掘した天然ガスを載
  せたLNG船が横浜に入港し、東京ガスの工場に天然ガス供給を行ったとのこと。
  LNG船はスエズ運河を通過して日本に至ったとのことですが、もしこのまま北極海の
  海氷が減少していけば、やがては北極海航路を利用した運搬も可能となるでしょうか?
  もしそうなれば、マラッカ海峡やアデン湾に跋扈する海賊は飯の食いあげですな。
  ( ̄w ̄)

地球温暖化の進展がもたらす影響について、様々な点から想像力を刺激してくれる一冊ではないかと思います。