2009年1月3日土曜日

第百八十六段 イランのための戦争

「ある日、ルーズベルト大統領は私に対して、こんどの戦争を何と呼ぶべきかについて、一般の意見を求めていると言った。私は即座に『無益な戦争』と答え た。前大戦の戦火を免れて、世界に残されていたものを破壊し尽くした今度の戦争ほど、防止することが容易だった戦争はかつて無かったのだ」
――――ウィンストン・S・チャーチル 『第二次大戦回顧録』第一巻より

イラク:原油確認埋蔵量は1,120億バレルで、サウジアラビアに次ぐ。原油埋蔵量の90%程度が未開発(出典:Wiki

本日のGulfnews紙(UAEの英字新聞)に以下のようなニュースが載って御座いました。

Iraqi Prime Minister Al Maliki in Iran for security talks

Agencies
Published: January 03, 2009, 12:41

Tehran: Iraqi Prime Minister Nuri Al Maliki visited Iran on Saturday for talks with Iranian officials on security in Iraq.

Al Maliki planned to meet Iranian President Mahmoud Abbas and supreme leader Ayatollah Ali Khomenei to discuss the Iraq-US security pact signed last month.

Officials said they will also talk about US policy in Iraq under the administration of US President-elect Barack Obama, and also the situation in Gaza.(出典:Gulfnews

要するに、マリキ・イラク首相がイラクの安全保障について協議するためにイランを訪問し、先月締結された米・イラク地位協定のイラン側への説明の他、オバマ次期米政権下でのイラク政策、ガザを巡る状況について協議を行ったというのが記事の内容です。

1980年代にイランと干戈を交え、その後もイランと対峙し続けたサダム・イラク政権を米国が弊履を捨て去るが如く打倒したのが2003年のこと。以来、イラクはサダム独裁政権が強権で押さえつけていた宗派間・民族間・部族間の対立が一気に吹き出し、解放者気取りで乗り込んできた米英軍をも飲み込んで修羅の泥沼と化します。そんな中でイラクに影響力を拡大したのが隣国イランです。その影響力は、豊富な油田を抱える南部のシーア派地域に止まらず、同様にシーア派勢力が大きな力を持っている現在のバグダッド中央政府にも強く及んでいると言われております。先頃、イラク中央省庁、米大使館がかたまるバグダッド中央部の米軍管轄区域(通称「グリーンゾーン」)の治安維持権限が、米軍からイラク政府に移譲されたとのニュースが流れましたが、別の言い方をすれば、バグダッドで米国がイランの目を気にせずにいられる場所が遂に消失したとも言えます(え!? とっくの昔からそうなってるって?)。

イランの目から見たイラク戦争とは、仇敵サダム・フセイン政権を同じく仇敵たる米国が排除し、その後のイラク混乱で米国は勝手に自滅・消耗。そして世界最大規模の原油埋蔵地イラクへのイランの影響力拡大を無償でもたらしてくれた、間違いなく「イランのための戦争」であったと言えるでしょう(逆に米国にとっては何ら得るものの無かった「無益の戦い」)

今、世界の目はイスラエル・パレスチナに向けられておりますが、そのイスラエルとイランとの間に大きく横たわるイラクの動向がこれまで以上に大きな意味を持ってくるのが、2009年以降の中東情勢なのではないかと思われます。