2009年1月12日月曜日

第百九十三段 米・イラン和解の兆候?

少し音速が遅くなってしまうが、1月10日の共同通信に以下のようなニュースが載っていた。

イスラエルの支援要請米が拒否

イラン空爆で、米紙報道

 【ニューヨーク10日共同】米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は10日、イスラエルが昨年、核兵器開発を阻止するためイラン空爆を計画、米政府に軍事支援を要請したがブッシュ大統領が拒否していたと報じた。

 同紙によると、イスラエルは(1)地下深くまで貫通する特殊貫通弾(バンカーバスター)の供与(2)イラン中部ナタンツの核施設まで飛行するための給油支援(3)米軍が管理するイラク上空の飛行許可-を求めた。

 米政府はイラクに展開する米軍が巻き込まれ、中東での全面戦争になりかねないなどとして要請を即刻拒否したという。

 同紙はイスラエルがイラン攻撃を立案した背景として、米政府が2007年12月に発表した国家情報評価(NIE)で「イランが03年秋に核兵器計画を中断」とイランの脅威を低く評価、独自に対処する必要があると危機感を抱いたためとしている。(出典:共同通信)


そして12日にはロイターが以下のようなニュースを伝えた。


オバマ次期米大統領、

対イラン政策で新姿勢示す考え

[ワシントン 11日 ロイター] 米国のオバマ次期大統領は11日、イランに対して新たなアプローチで臨むことを明らかにした。イランの人々への敬意を強調し、米国がイラン指導者に何を求めるかきちんと説明するものとしたい意向。

 オバマ次期米大統領は、ABCの番組「ジス・ウィーク・ウィズ・ジョージ・ステファノポロス」でインタビューで「イランはわれわれにとって最大の チャレンジの1つだ」と述べ、イランのレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラへの支援に懸念を示した。また、イランの核濃縮施設についても、中東の軍 拡競争につながる可能性があるとの見方を示した。

 オバマ次期大統領は、ブッシュ大統領の政策から転換する過程でイランとこれまでよりも幅広い関わりを持っていく考えを示し、「われわれは新たなアプローチを取らねばならないだろう」と語った。

 新たなアプローチでは、米国はイラン国民の大志に敬意を払っているとのメッセージを送るが、米国が国際社会に属する国家の行動に一定の期待を持つとのメッセージも伝える予定だとしている。

 米政府はイラン政府が核兵器を保有しようとしていると非難。一方、イランは同国の核開発は発電のためで平和目的だと主張している。

 オバマ次期米大統領は、イランが核開発をやめるよう経済的インセンティブを用意するが、仮にイランが核開発の中止を受け入れない場合はより厳しい経済制裁を行う可能性もあるとの考えを示している。(出典:ロイター)

この二つのニュースは、米国がイランに向けて発した関係改善のサインではないのか?
確かに現在の所、米国とイランは鋭い対立関係にある。しかし、第二次大戦終結後から今日に至る米国とイランの複雑な愛憎関係を全く無視したゼロ・ベースで考えてみれば、米国とイランは互いに交換可能なカードを保有していることに気付かされる。

具体的に言えば、米国にとって現在はまっている二つの泥沼、アフガニスタンとイラクの状況を改善するには現地のシーア派勢力に影響力を有するイランの協力が不可欠。そして最近火を噴いたガザをあくまで世界経済には実害の無いローカルな人道上の危機にとどめるのにも、ハマスやレバノンからイスラエルに睨みを利かせるヒズボラのスポンサーであるイランの協力は不可欠。一方、イランにとって空爆の恐怖に怯えることなく核開発を進めるにはせめて米国の黙認は欲しい所。そして長年の欧米の制裁によって疲弊したイラン経済を立て直すには、米国との関係改善は避けては通れない道(他にも、イラン側が提供するとは考えにくいが、核開発や弾道ミサイルに係る北朝鮮や中国との協力・取引の情報も米国にとっては喉から手が出るほど欲しい情報だろう)。

以上のように互いに必要とするものを抱えた両国が対立を続けるというのも不自然な話である。そして歴史を鑑みれば、米国は各政権の「最重要課題」解決のために、今までの経緯・歴史を無視した電撃外交を行うことがしばしばある。代表的なものとしては、ソ連や北ヴェトナムに対する有利な交渉ポジション獲得を念頭に置いた中華人民共和国との国交正常化然り、対テロ戦争協力獲得のための対インド・対パキスタンへの経済制裁解除と核保有の黙認然り。

従って、当ブログでも何度か取り上げているが、米国がアフガニスタンやイラク、そしてガザ危機での協力と引き換えに経済制裁解除と核開発容認(黙認)を柱とするイランとの電撃和解を行う可能性は十分にあると考えられる。

日米安保を外交基軸に据え、同時に原油供給の9割程度を中東湾岸地域に負っている、そしてイランと武器や核開発で取引のある国々(北朝鮮、中国、そしてロシア)に地理的に囲まれている日本としては、米・イラン和解が自国に与える影響を事前に注意深く検討しておく必要があるのではないか。