2009年2月28日土曜日

第二百二十二段 ロシアが原子力空母を建設するようです

世界に空母を持つ国は数あれど(有効に使えているかは全くの別として)、原子力空母を持つは当代の覇権国アメリカ合衆国とフランス。そんな西側の原子力空母独占に異を唱えようとでもいうのか、ロシアが原子力空母建設に向けて動き出したようです。ロシアの通信社Novostiが以下のように伝えております。

Russia to build nuclear-powered

60,000-ton aircraft carrier

MOSCOW, February 27 (RIA Novosti) - Russia's new-generation aircraft carrier will be nuclear powered and have a displacement of up to 60,000 metric tons, a United Shipbuilding Corporation executive said on Friday.

Vice Adm. Anatoly Shlemov, the company's head of defense contracts, said the new carrier was still at the drawing board stage, but its blueprint and basic specifications have already been defined.

He said the carrier will serve as a seaborne platform for new-generation fixed- and rotary-winged aircraft, in particular, a fifth-generation fighter that will replace the Su-33 multirole fighter aircraft currently in service, as well as unmanned aerial vehicles (UAV).

"It will be a fifth-generation aircraft with classic horizontal take-off and landing capability," the admiral said.

Shlemov said, unlike in the past, the new aircraft carrier would not be armed with cruise missiles, which were not part of its "job description."

He said that at least three such carriers were to be built, for the Northern and Pacific Fleets.

The executive offered no timeline on the project, saying it was not as yet clear which shipyard would get the contract.

The new carrier has an estimated price tag of $4 billion.

So far the Russian Navy only has one aircraft carrier, the Admiral Kuznetsov Project 1143.5, built in 1985, with a displacement of 55,000 metric tons, a crew of 1,500, and capability to carry more than 50 aircraft.(出典:Novosti

現在のロシアを見れば、昨今の金融危機や原油・天然ガス価格の下落、海外投資家の離反等で厳しい経済状況下に置かれております。そんな中で打ち出されたのが今回の「原子力空母の建設」です。予算規模としては見積額で40億ドル(米国がGMに支援策第一弾として融資した金額とほぼ同額)、サイズとしては基準排水量60000トン(現在ロシアで就役している唯一の空母アドミラル・クズネツォフ(通常動力)が基準排水量55000トン、最近日本の横須賀に配備された原子力空母ジョージ・ワシントンが基準排水量81600 トン)と報じられております。

ロシア政府がこのような方針を発表した意図を考えるに、同国のドボルコビッチ大統領経済顧問が金属・鉱山企業救済のために政府による金属の買入に前向きな姿勢を示していること、手許資産に不安の生じたロシアの防衛産業に同国銀行団が総額16億ドルの融資を行った事(出典:Novosti)(今までのロシア政府の動き、そしてクドリン財務相直々に当該融資案件を発表している所等を考慮すれば、今回も各銀行に対してそれなりの政府圧力があったことは想像に難くない)、この2点に着目すれば、今回のロシアの原子力空母建設は一種の公共事業と考えられます。
・・・・かつて大日本帝国が公共事業の一環として戦艦大和等の建設を行ったのと全く同じ匂いがしますなぁ。 ( ̄w ̄;)

まぁ、現状ロシア産で国際的に売れるものと言ったら木材や鉱物といった原材料、天然ガスや石油というエネルギー資源、それと兵器ぐらいしかないわけで(あとは「キャビア」ぐらいか・・・・)、しかも世界的な景気後退やマネーフローの変化で原材料やエネルギー資源の価格は極めて低調。そんな中では兵器輸出に外貨獲得(あと雇用維持)を託すしかないわけで、ならば兵器産業の基盤維持と活性化を狙って政府が梃入れを行うというのも一見するともっともな話。米国の自動車産業支援や各国の金融機関支援政策と似た文脈で理解可能な話ではあります。

ただし、政府支援の結果生産されるものが自動車や「信用」ではなく、安全保障問題に直結してくる兵器というのが今回のロシアの行動の特徴的な所。それに加えて、元来欧米防衛産業の縄張りであったカタールやクウェートといった中東湾岸諸国に対しても、ロシアが最近自国兵器の売り込みを活発化させてきているとか(出典:Novosti)。今回の「ロシア、原子力空母建設へ」というニュースと併せ、米国やEUの反応、そしてロシア離れの進む海外資本の動きが気になる所です。

・・・・それにしても、ロシア産兵器の対湾岸売り込み活発化かぁ・・・・・・。
(△ ̄|||)
ヨケイナコトシナイデヨッ! ロシアサン!!

2009年2月22日日曜日

第二百二十段 山西省ガス爆発

中国山西省の鉱山でガス爆発が発生し、100人近い人員がまだ地下に取り残されているという。2月22日にBBCが「新華社報道」として報じている(以下にBBC記事を掲示)。

Gas explosion traps China miners

The blast at the mine in Gujiao City, in Shanxi province, occurred before dawn when 436 miners were underground, Xinhua news agency said.

Initial reports suggested that 340 miners had managed to escape but 96 remained trapped underground. The mine belongs to Shanxi Jiaomei Group.

China's mining industry is the world's deadliest, with 3,200 deaths last year.

However, China has said safety is improving, with the number of fatalities from coal mining accidents falling 15% in 2008 compared with the previous year.

Xinhua also reported that the number of accidents had fallen by 19% to 413,700 last year.(出典:BBC

事件が発生したのは、山西省(中国有数の鉄鉱石と石炭の生産地帯)の地方都市古交(Gujiao)市。位置は以下の地図に赤四角で示したように、省都太原市に隣接している。

GoogleMapsに点額法師が加工を加えたもの
さて、ここでふと気になったのが現在の山西省の省長もしくは省書記の処遇である(何となく語感からすると省長が省のトップという感じがするが、実際には省書記がトップである)。

というのも、前省長の孟学農は、2008年9月に発生した土石流事件(無茶な炭鉱開発に起因する土石流の発生によって260人が犠牲になったと言われる)の責任を取らされ、胡錦濤国家主席に近い政治的立場であったにもかかわらず、在任1年で省長の職を逐われているからだ(因みに、孟学農は北京市長時代にはサーズ問題で詰め腹を切らされているという、政治的には甚だ運の無い人物である)。

一方、トップの省書記であった張宝順(彼もまた共青団出身で胡錦濤派の人物と目されている)は2008年10月に北京に呼び戻され、「中共中央科学的発展観学習実践領導小組副組長」という役職についている。一地方(それも資源面で重要な地方)のトップであった人物に与えるには軽職の印象があるが、或いはほとぼりが冷めるまで閑職に置いておき、外には「降格」で事件の責任を取らせたという印象を与えつつ、後に再起のチャンスを与えるということなのかもしれない。

そんな張宝順の後を継いで、現在の山西省のトップたる省書記を務めているのは宋秀岩(女性:前職は青海省省長)という人物である。彼女もまた、共青団出身で政治的立場としては胡錦濤国家主席に近い立場とされている。また、近親者に中国共産党や人民解放軍の有力者はなく、所謂「太子党」には該当しない(別の言い方をすれば、何かしらのスキャンダルが発生した場合、力強い藩屏となってくれる存在が無い)。
また、省長は王君という人物が務めている(彼についての詳細は職歴以外は調べきれず)。

折しも現在の中国では、世界的な景気後退を背景とした経済成長率鈍化が失業率や企業破綻を増加させ、沿海都市部の経済的成功を内陸貧困省に均霑する 役目を果たしていた農民工の所得を痛撃している他、一向に進まない反腐敗闘争や依然として跋扈する縁故主義を背景に、中国国民の間で現政権に対する不満が 徐々に昂じつつあると言われる。

そんな中、胡錦濤派と目される人物がトップを務める地方で、下手をすれば100人近い死者が発生するガス爆発事件が勃発した。

さて、現山西省政府は残された100人近くの鉱夫の救出に成功し、発生する批判の声を最小限に抑え込むことができるのか? それとも救出に失敗して非難囂々の中、省長やその他幹部をスケープゴートにして逃げ切りを図るのか? 最悪、トップの省書記にも累が及ぶことになるのか? そして今回の事件を機に、所謂上海閥や中国共産党内保守派といった胡錦濤政権に反抗的な勢力がどうでてくるのか?

全く以って興味が尽きない。( ̄w ̄)

2009年2月18日水曜日

第二百十七段 兵站無くして戦勝無し

2009年2月18日(日本時間)、米国のオバマ政権は1万7千人規模の兵力をアフガンに増派することを決定した(出典:日経ネット)。

しかし、アフガンに駐留する米軍主導の多国籍軍(以下、「アフガン駐留軍」と表記)を取り巻く環境はなかなかに厳しい。特にパキスタン側からの補給ルートがタリバンやそれを支持する部族民兵等によって寸断され、空輸の一大拠点であったキルギスのマナス米軍基地が、地元キルギス政府の決定で閉鎖される見込みとなったことで、アフガン駐留軍は「兵糧攻め」の危機に曝されているのだ。そこに新たな兵力を増派した所で、武器・弾薬・その他物資の補給状況に改善が無ければ、最悪、単なる穀潰しを増やしてアフガン戦線崩壊を早める結果に繋がりかねない。

無論、米国がそのことに気付かない筈もなく、既に幾つかの処置が取られている。例えば2月9日にはBBCNovostiといったメディアが、「カザフスタンが、自国内を通過するアフガンへの物資輸送(ただし非軍需品)を米国に許可」と報じたし、2月13日には再びNovostiが「米国、ロシア領を通過してアフガンに非軍事物資を輸送」と報じている。そして2月17日に報じられたのが以下のニュース。

Russia ready to boost cooperation

with U.S. on Afghan cargo transit

MOSCOW, February 17 (RIA Novosti) - Moscow has the potential to broaden cooperation with Washington on supplies of non-lethal cargo to the U.S. troops in Afghanistan via the so-called "northern corridor," a Kremlin official said on Tuesday.

Due to worsening security on the main land route from Pakistan and the expected closure of a U.S. airbase in Kyrgyzstan, NATO has to rely on alternative routes to supply the U.S.-dominated International Security Assistance Force (ISAF) in Afghanistan.

"The logistics issue is crucial for the Americans, who continue to build up their military contingent in Afghanistan," Anatoly Safonov, special presidential envoy for international cooperation in the fight against terrorism and transnational crime, said at a news conference in Moscow.

There are 62,000 foreign troops in Afghanistan, more than half of them from the United States, and President Barack Obama has pledged to deploy another 30,000 U.S. military personnel to the war-ravaged country.

"We have recently said that our transit route is open and we are ready to search for possibilities of increasing its effectiveness," Safonov said, adding that Russia and the West had been coordinating the supply details and locations of transshipment bases.

The Russian Foreign Ministrysaid on Monday that a consignment of U.S. non-military cargos was being prepared in the Latvian capital of Riga for transit to Afghanistan via Russia, and would soon be dispatched.

Russia and NATO signed a framework agreement on the transit of non-military cargos in April 2008.

Despite the recent deterioration in relations with NATO, Russia has continued to support the military alliance's operations in Afghanistan, fearing the worsening security situation and the steadily growing opium production in the country.

Several NATO nations, including France, Germany and Canada, already transport so-called non-lethal supplies to their contingents in Afghanistan via Russia under bilateral agreements.

The "northern corridor" for U.S. transshipments through Russia would likely cross into Kazakhstan and then Uzbekistan before entering northern Afghanistan.(出典:Novosti

上記記事の要旨としては、パキスタン側からの陸路輸送ルートの安全が脅かされ、キルギスの米空軍基地も閉鎖されることとなり、アフガンに駐留する米国主導の多国籍軍(総兵力62000人)が代替輸送ルートを開拓する必要に迫られる中、ロシアが「北方回廊」を通じたアフガンへの非軍事物資輸送について、米国との協力を拡大させる方向に動いているというもの

なお、記事によれば「北方回廊」とはカザフスタン-ウズベキスタン-アフガニスタン北部を繋ぐルートである由。右記地図に赤線で示した、カザフスタンのクズィル・オルダからウズベキスタンの首都タシケントを経てアフガン北方の要衝マザーリ・シャリーフへと繋がるルートと考えて大過あるまい(GoogleMapsより点額法師作成)。

そしてこのマザーリ・シャリーフは、ドスタム将軍を中心とするウズベク人勢力の牙城でもある。この地の重要性の高まりは、ウズベク人勢力のカルザイ政権における発言力強化を通じて、様々な民族・宗派勢力の危うい均衡の上に立っている現アフガン政権の今後に微妙な波紋を投げかける可能性があろう。

また、右記地図では若干見にくいが、トルクメニスタンやイランから始まってアフガニスタン・ヘラートに入るルートも存在する。現在、イランは核問題やレバノン、パレスチナを巡って米国と対立しており、トルクメニスタンは「永世中立国」を宣言して自国をアフガン戦争の枠外に置こうとしているため、アフガン駐留軍にとって現時点でのヘラート・ルートの実用性は高くない。しかし、パキスタン・ペシャワールからアフガニスタン・カブールに至る主要補給ルートの治安に改善の兆しが見られず、かといって「北方回廊」ルートへの過度の依存がウズベク人勢力の伸長によるカルザイ政権内のパワーバランス崩壊を招きかねない怖さを孕んでいる以上、米国やNATOはヘラート・ルートを無視し続けるわけにはいかないと考えられる。核問題やヒズボラ、ハマスといったイスラム過激派の支援問題ほど目立つわけではないが、オバマ政権が「アフガン重視」の旗を掲げ続ける限り、ヘラート・ルートは米国の対イラン政策の隠れた主役であり続けるだろう(無論、トルクメニスタンに対する働きかけも見逃せない注目点ではあるが・・・・)

因みに今回取り上げた話題と日本との関連性を考えれば、記事には、ロシア領内を通過する物資輸送について、フランスやドイツ、カナダといったアフガンに兵力を展開しているNATO諸国が既にロシアとの二国間協定を締結していることも載っている。もし、今後日本がアフガンに自衛隊を展開させることになれば、同様の協定をロシアと結ぶ必要が出てくることが予想される。また、アフガン問題を梃子にロシアが対米関係、対EU関係の改善に成功した場合、日本が北方領土問題でロシア側の譲歩を獲得することは一層困難なものとなろう。

2009年2月17日火曜日

第二百十六段 その時事務方は?

・己れを行うに恥あり、四方に使いして君命を辱めざる、士と謂うべし。
―――孔子 『論語』

・君主にとって、厳重の上にも厳重に警戒しなければならないことは、軽蔑されたり見くびられたりすることである。
―――マキアヴェッリ 『君主論』

日本の財務大臣にして金融担当大臣(事件発生時)の中川昭一衆院議員の行状が世界の耳目と失笑を集めております。

事の発端は、2月15日のG7後の記者会見。そこでかの御仁が披露したのは、危機に臨む大臣の覚悟ではなく、記者団からの質問に対する時として支離滅裂な受け答え、ろれつの回らない有様でした。過去より飲酒癖のある人物として定評のあっただけに、「日本の財務大臣、酔っ払いでG7後の記者会見」と報じられ、満天下に恥をさらす形となったので御座います。

結局、中川昭一議員は予算成立後の大臣辞任を表明したものの、最終的には周りの圧力に屈して2月17日に辞表提出とあいなりました(因みに、事の顛末を報じたメディアは、 ABCやCNN、BBC、FT紙といった西側メディアのみならず、中国日報(中国)、Novosti(ロシア)、Gulfnews(UAE)、 HindustanTimes(インド)等々に及びました。まさに満天下まさにグローバル)。

そんな中川議員の問題の映像がYouTubeにあげられておりました
(まぁ、支持者の方が「みっともない所だけ集めて編集したんだろう」と噛み付く余地のあるものではありますが・・・・)

※今年の流行語大賞は「あのー・・・、ふぅ(溜息)」「どこだ?」で決まりか? ( ̄w ̄)

ただ、ここでふと思うのが、随行していた事務方の動き。もし、中川昭一議員が巷間言われているように酩酊状態にあったのだとしたら、恐らく一番初めに気付いたのは彼らの筈。成人した一般的な人間程度の判断力と推察力があれば、酩酊大臣を記者会見の場に臨ませれば、かなりみっともない状態になること、そしてその後に待っているであろう展開を想像するのはさして困難ではないかと思われます。

・愚者が誤った道を歩けば、愚かとみなしてよろしい。賢者が誤った道を歩けば、どうしてなのか考えてみる必要がある。
―――サキャ・パンディタ 『善説宝蔵論』(一般には『サキャ格言集』と呼ばれる)

上記のように古の聖賢も申しております。ここで拙い脳みそながら、「ロクでもない結果が予想されるのに、体調が万全ではない(婉曲的表現)財務大臣が記者会見に臨むことになったのは何故か?」を考えてみようかと思います。

<可能性1>
・単純に事務方が大臣の状態に気付かず、大臣を記者会見に臨ませてしまった。
→仮に大臣がろれつの回らないほどに酩酊していたのだとしたら、それなりに酒臭かったり、
 或いは事務方の誰かが大臣と言葉を交わした際に気付く筈。よってこの可能性は低い。

<可能性2>
・事務方は大臣の状態に気付いていたが、ここまで大事になるとは想像できなかった。
→一説に「100年に1度」ともいわれる金融危機、そしてそれによる日本の急激な景気悪化の
 中で開かれたG7。従って内外マスコミの注目も高かろうし、記者からそれなりの数の質問が
 飛んでくることは想像に難くない。そんな場所に酩酊大臣を出せばロクなことにならないこと
 は、成人した人間の一般的な判断力・推察力があれば想像がつく筈。よってこの可能性も
 低い。

<可能性3>
・事務方は大臣の状態に気付いており、その後に待っているであろう結果にもある程度見当が
 ついていた上で、大臣を記者会見に臨ませた。
→事務方の裏切りとも言えるケース。単純に考えればあまり成立しなさそうなケースある。
 しかも、日本のマスコミが伝える所では、中川議員が大臣を務める麻生内閣は、霞が関の言い
 なり。ならば<可能性3>は自分たちの手で自分たちの傀儡を痛めつけるような所業と言えよう。
 しかし、霞が関の思考や立場を想像すれば、
 ・中川議員を生贄にして、レームダック化した麻生政権との距離を「次」の勢力に示す。
 ・天下りや公務員人事制度に五月蠅くなってきた最近の麻生内閣は友好勢力とは呼べない。
 といった点で、<可能性3>が成立する余地はあると思われる。

点額法師の拙い脳みそで考え付く可能性はこのぐらい。その上、考え付いた中に正解があるかどうかも霧の中。衆に優れた人物であれば、もっと多くの可能性を考え、そこから正解を導き出せるのでしょうが、そこは世事に疎い遁世者の愚考ゆえひらにご容赦願いたく存じます。

さて、外にあってはグローバルに失笑を買い、内にあっては反麻生内閣勢力に附け込む隙を大いに与えた中川議員。そんな人物でありながら、恐らく地縁・血縁・既得権益に守られて次の衆院選も議席安泰が予想されるのが、日本という国の民主主義

国名に「民主主義」を冠したどこぞの独裁国家(主要産業:ミサイル)を笑っていられない・・・・・
( ̄w ̄;)

2009年2月16日月曜日

第二百十五段 減産の波、ニッケルに及ぶ

世界的に不況風が吹き荒れる中、昨年後半から資源国や資源企業にも「減産」を打ち出す或いは既に実行に移したというところが増加してきております。OPECの原油減産然り、ヴァーレやリオ・ティントの鉄鉱石減産然り、三菱商事や住友商事の石炭減産然り、アルコアや中国アルミのアルミ減産然り。ロシアもまた既にOPECに協調する形で原油を減産しております。

そして今度は、そのロシアにあるニッケル生産世界最大手のノリリスク・ニッケル社が、ニッケル価格の下落に耐えかねて、オーストラリア西部でのニッケル生産一時停止に踏み切ったというお話(若干話が逸れますが、考えると石炭や各種鉱物資源減産の舞台はその多くがオーストラリアを舞台としたもの。財政黒字の存在や大きな利下げ余地、そして今にして思えばあまりに強気な資源需給観測等を背景に、一時は世界的な金融危機の安全地帯とも目されていたオーストラリアですが、やはり金融大海嘯を無傷で乗り切ることは叶わないようです)。

Norilsk Nickel suspends Australia

nickel production over crisis

MOSCOW, February 16 (RIA Novosti) - Russian metals giant Norilsk Nickel announced on Monday it was suspending nickel production at its Black Swan and Lake Johnston sites in Western Australia amid falling world nickel prices.

"Today's announcement is largely the result of the prevailing economic climate and its impact on the nickel price. These Western Australian assets are located in prime nickel producing regions and have the potential for further exploration; however market and other conditions have left the Australian business unsustainable given current metal prices," the metals giant said in a statement.

The Black Swan and Lake Johnston nickel enterprises are run by Norilsk Nickel International, a subsidiary of Norilsk Nickel. In 2008, they produced about 25,000 metric tons of nickel in concentrate, the statement said.

"The total workforce at these operations will be reduced by approximately 330 employees by March 2009. A small number of staff will be retained to manage the sites under care and maintenance," the statement said.

"The company is committed to providing full entitlements to those employees whose roles are now redundant and where possible, will assist in identifying alternative employment opportunities," Norilsk Nickel said.

Norilsk Nickel is Russia's largest diversified mining and metals company, the world's largest producer of nickel and palladium, and one of the world's largest producers of platinum, rhodium, copper and cobalt. (出典:Novosti

このノリリスク・ニッケル、記事の末尾にもある様に、ステンレス鋼の原料であるニッケル以外でも半導体原料の一つであるパラジウム生産で世界最大手であり、他に自動車の排ガス浄化用触媒として利用されるプラチナやロジウム、ベースメタルの銅、そしてリチウムイオン二次電池(要するに携帯電話やノートパソコンのバッテリー)の原料に欠かせないコバルトについても世界有数の生産企業で御座います。

そんな大手企業でありながら、一方 では他の金属企業との合併話が「浮かんでは消え、浮かんでは消え・・・・」しているのが気になる所と言えば気になる所・・・・。「神の見えざる手」ならぬ「政府のこれ見よがしの剛腕」が、世界の耳目を驚かせるような大規模業界再編を引き起こすのでありましょうや?

因みに、通貨ルーブルの急激な下落(結果論では御座いますが、これなら国際的な反発を受けながら自動車の輸入関税を引き上げなくとも(当ブログ第百七十段参照)、為替の動きが実質的な貿易障壁として機能してくれるように思えます)や原油価格の低迷で、さぞやロシア市民は切り詰めた生活をしているのだろうと考えるのが、公的年金も社会保障もあてにできない極東の貯蓄大国に生きる人間の思考。

しかし、意外にロシア市民はケセラセラ精神に富んでいるのかもしれません。そんなことを感じさせてくれたのが、以下の図です。


これはロシアの主要通信社の一つであるNovostiのHPにあったアンケートの投票結果(日本時間22時頃時点)。質問の大意は「金融危機の中であなたが節約するものは?」というもの。食費や娯楽、衣服や旅行といったスタンダードな選択肢に加え、節約対象は無い―――危機の影響がないから、という強気の選択肢が用意されております。日本だと食費や娯楽、衣服や旅行の4選択肢で全回答の9割以上を占めそうなものですが、ロシアでは「節約対象は無い―――危機の影響がないから」が27%以上の得票(因みに、点額法師は衣服に一票を投じました)。

91年のソ連邦崩壊や98年のロシア財政危機を経験した人々にとっては、今回の金融危機はそれほど身構えるほどのものではないってことなんでしょうかねぇ? (w ̄;)

そんなわけで(どんなわけだ?)、「情報源」欄に新たに以下のサイトを追加
Novosti

第二百十四段 そのイメージが勝負を決める

「民衆というものは、しばしば表面上の利益に幻惑されて、自分たちの破滅につながることさえ、望むものだ」
―――ニコロ・マキアヴェッリ 『政略論』

「巧言令色鮮(すく)なし仁」
―――孔子 『論語』

「尊敬は服の善し悪しで決まる」
―――アラブの俚諺 『アラブの格言』(曾野綾子 新潮新書)

一つは15世紀フィレンツェにおいて人間と政治の本質を深く凝視し続けた人物の言。一つは紀元前5世紀の中国大陸において道徳と政治の一致した理想世界を希求した人物の言。一つは欧州・アフリカ・中央アジアの結節点として様々な民族・王朝が興亡した中東アラブ世界に伝わる俚諺。背景にある文明・宗教、生まれた時代、それが全く異なるにも関わらず、これらの言葉が指摘する所は全く同じ。畢竟、「人間とは見た目・印象で判断する存在である」ということ(確か『人は見た目が9割』なぞという身も蓋もないタイトルの本もあったかと・・・・)。

つまり、「人が見掛けや外見で判断を下す」のは時代や文化・文明を超えた普遍的な性質だと考えられる。だから風采や人当たりに恵まれた人物が実際の能力を超えた富貴栄耀を手にし、表面上の言葉や表現を取り繕っただけの政策・計画が賞賛・採用されることも別段嘆くにはあたらない。また、嘆いて文句・愚痴をこぼした所で何か良いことがあるわけでもない。

ただ、人間一般ひいては自己の性向として印象・外見に流され易い面があることを自覚すれば、判断を下すにあたってもより慎重になれるだろうし、逆に、この性向を利用することでこちらの附け込む隙を相手に生じさせることにも使えよう(教育の場でも、「他人を見た目で判断してはいけません」と空虚な教条を繰り返すよりも、「人は見た目・印象で判断するものなので、如何にそれを利用するか」を教えた方がよっぽど実用的かと思う)。

YouTube上に掲載されていた投資先企業や投資希望企業のPV・CMの類を見ながらそんなことを考えた有休の昼下がり(「非生産的な休暇の過ごし方だな」といったツッコミは黙殺させて頂きます)。

・・・・まぁそんなことは別として、ロッキード・マーチンとBAEシステムズの動画はカッコいいなぁ(ぇー

<点額法師が実際に投資している企業>
ロッキード・マーチン


ノースロップ・グラマン


ヴァーレ(不思議と流れる歌の歌詞が耳に残って仕方がない・・・・)


ペトロブラス


<点額法師が将来的には投資対象に加えたいと思っている企業>
BAEシステムズ


BHPビリトン

2009年2月15日日曜日

第二百十三段 中国、メッカにモノレール建設

「その場にとどまるためには、全力で走り続けなければならない」
―――赤の女王 『鏡の国のアリス』 ルイス・キャロル著

欧州による植民地支配という苦難の近代史を歩んできた中東諸国は、その裏返しとして非欧州文化圏ながらも独自のやり方で経済・政治制度の近代化に成功した日本に対して強い親近感を有していると言われる。そして日本が中東(特に湾岸地域)の原油を主要なエネルギー源としていること、プラントや建築、発電施設といった分野で日本のゼネコンやプラント企業、重機企業が活躍している等、経済的にも中東と日本の結び付きは意外に強い。こうした地域の親日感情と経済的な結び付きによって、日本は中東において独自の存在感を有している。

だが、これからはどうだろうか? 2008年末から2009年初にかけてのガザ紛争におけるサルコジ仏大統領直々の仲介工作、2008年11月のブラウン英首相の金融危機対策での協調体制作りを主要目的とした湾岸諸国歴訪、2009年1月のNATO事務総長のイスラエル・ヨルダン歴訪、2009年1月のNATO副事務総長のクウェート訪問、2009年1月の中東諸国に対する米国オバマ政権のミッチェル特使派遣、2009年2月の胡錦濤・中国国家主席の中東・アフリカ歴訪、最近の例を挙げてみても、各国が資源、ビジネス、安全保障の主要舞台として中東を重視していることが窺える。

そんな中で日本も各国の動きをただ漫然と傍観しているわけではなく、安倍元首相を特使としてイラクやサウジアラビアに派遣している(個人的に、思うに任せない政治状況に業を煮やして「突然の政権放り出し」なんてやってのけた人物が、国内外の諸勢力が複雑に交差する権謀術数の中で生きている中東各国の政治家の目にどう映っているのか、非常に気になる所ではある・・・・)。ただ、以下のようなニュースを見ると、どうしても中東における日本のプレゼンスが弱まってきているように感じられて仕方がない。

China to build Mecca rail system

The new railway will connect the city of Mecca with the pilgrim destinations of Mina, Arafat and Muzdalifah.

Saudi Arabia also plans to build a high-speed rail link to take pilgrims from Mecca to Medina, Islam's two holiest cities, in 30 minutes.

The journey time by road can take anywhere between four and five hours.

Millions of Islamic faithful descend on Mecca during the annual mass pilgrimage.

The new network in Saudi Arabia is expected to be ready within three years, with one section of the line due to be completed in time for the 2010 Hajj, officials said.

The contract, worth almost $1.8bn (£1.24bn), was awarded to the China Railway Company and a French firm.

The project was announced during a three-day visit by the Chinese President, Hu Jintao, to Saudi Arabia.

China is becoming a key contractor on infrastructure projects in the oil-rich kingdom.
(出典:BBC

要するに、上記2009年2月の胡錦濤主席のサウジ歴訪に伴ってメッカとメディナを繋ぐモノレール敷設案件を中国企業が受注したというのが、ニュースの肝。

ご存じメッカとメディナはイスラム教において極めて重要な聖地。特にメッカは信仰の根幹ともいえる「六信五行」において巡礼が義務付けられている特別な場所。従ってそこにはサウジのみならず、世界中のイスラム教徒が参集し、祈りを捧げている。そんな場所に設けられるモノレールなのだから、今後、中国の鉄道会社がイスラム諸国で事業を展開する上で大きな宣伝効果が期待できよう。

対して「ものづくり大国」を自認しながら、イスラム世界における技術力の最高のプレゼンの舞台を取れなかった(取らなかった?)日本とその企業は、今後も従来通りの存在感を中東において示していけるのだろうか? 今あるポジションを維持するための努力は十分と言えるのだろうか? 

2009年2月14日土曜日

第二百十一段 中国の原発増設計画

世界的に不況風吹きすさぶ今日この頃、各国中銀の手札が少なくなってくると同時に各国政府の財政政策、特にインフラ整備やエコロジー関連投資に注目が集まっております。特に注目と申しますか期待の目を集めているのが中国の財政政策。その理由としては、経済大国たる日本や米国の財政政策が議会野党との調整に手間取って遅々として進まない一方、一党独裁の中国は政府の一声でスピーディーな政策の決定・実施が可能であること(既に中国政府は4兆元(約53兆円)の景気刺激策を既に昨年11月に打ち出している)、そして今まで経済成長のボトルネックとなってきた脆弱な社会インフラが今回の大型財政出動によって整備されることで、内需を中心とした更なる経済成長が期待できること、以上の2点が挙げられようかと思います。

以下のニュースもまた、そんな中国の大型財政出動の一環として見ることができましょう。

中国、原発の発電能力を8倍に拡大 20年めど、08年末比

 中国政府は2020年をめどに原子力発電所の発電能力を08年末比8倍弱の7000万キロワットに拡大する。07年に公表した計画では4000万 キロワットとしており、大幅な上方修正となる。環境に与える負荷が大きいうえ、価格上昇の恐れもある石炭への依存を減らし安定的な電力供給を目指す。原発 を手掛ける重電メーカーの商機が拡大しそうだ。

 稼働中の原発は浙江、江蘇、広東省の6カ所11基で、発電能力は約900万キロワット。遼寧、山東、福建省などで建設工事を始めており、内陸部の湖北、湖南、江西省にも設置を認める方針。まず今後3年間で原発を8カ所16基新設する。 (19:07)(出典:日経ネット

一方で偏屈者の点額法師としては、上記のニュースが今になって出てきたのは、経済政策という一面のみならず、治安政策という側面もまた大きいのではないかと考えています。

まず鄧小平の「南巡講話」(1992年)以降の中国は、軍や警察の武威と併せ、高い経済成長による恩恵を均霑することで国内の不満を抑えることに成功してきました。しかし、2007年に発生した米国を起点とする世界的な金融危機によって経済成長が鈍化している現在、失業や就職難、倒産に賃下げが広まることで、「経済的豊かさ」という国民の不満を慰撫するための飴玉の効力は一時に比べて低減せざるを得ません。そして国内の不満が高まれば、それに伴って時に暴力行使を躊躇わない反体制派や少数民族の分離独立派が活発化してくるというのは古今東西を問わずに見出すことのできる現象です。

その対応策としては、縮小傾向の経済を拡大傾向に転じることで多くの人々が分け前に与れるようにしつつ、反体制派や分離独立派の取締強化とデモやテロの鎮圧を峻厳化するという方策が考えられます。しかし、北京オリンピックの前に発生したチベット騒乱事件に象徴されるように、軍や警察が反体制派や分離独立派に対して実力行使を行った場合、その映像がマスコミ等を通じて世界中に配信されることで、諸外国の世論で嫌中感情が高まり、それに押される形で諸外国政府が「人権」や「自由」、「正義」といったお題目を掲げて対中批判を繰り広げる可能性が十分に考えられます。それは各国企業の対中投資にも好ましくない影響を影響を与えるものとなるでしょう。かといって国際的な反発を恐れて軍や警察の取り締まりを緩めれば、反体制派や分離独立派を図に乗らせるだけ。

このように、ある程度の不安定化が予測される中国内治安の安定維持とそれに伴って予想される国際的な反発、このジレンマを解決するために北京政府が打ち上げたのが、上記の「原発増設ニュース」なのではないかと思われます。

と申しますのも、中国が強権的な治安維持策を実施した場合に主要勢力の中で明確な批判に回ると考えられるのは、人権重視外交を掲げるEU、そして「人権問題」を兎角重視しがちな民主党政権の米国、この2勢力。一方で民生用原子力について他国に商業展開できるほどの高い技術力を持っている国を列挙すれば、フランス(EU議長国)、日本、アメリカ、ロシアの4カ国。

ならば、金融危機の中で自国産業の保護ということも考えねばならない現状に置かれた米仏2カ国を今回のビッグな原発ビジネスの話で眩惑することに成功すれば、その間、中国は「国際的な反発」による実害を気にすることなく、今まで通りのやり方で国内の不穏分子取締・鎮圧をすることが可能となります。

以上が、極東の草人が「中国の原発増設ニュースには、単なる経済政策以外の意味がある」と考える所以です(で、中国政府には是非にウランをカメコ社から購入して頂きたいと思う今日この頃)。

2009年2月9日月曜日

第二百十段 今マダガスカルにある危機

マダガスカル
・アフリカ大陸東南部、インド洋と喜望峰航路の結節点を扼す地点にある島とそこを支配する政府。
・少し北へ足を延ばすと「海賊」で有名なアデン湾がある(下地図の黄色枠内がアデン湾)。
・金属資源開発の新たなフロンティアとして、日本やカナダ、中国等諸外国が開発を進めている。

グーグルアースより 点額法師加工

そんな、資源や地政学的な面で注目されるマダガスカルは、現在政治的に不安定な状況下にある。というのも、現職大統領支持派と野党指導者支持派との間で抗争が発生しているからだ。状況としては2月7日に数千人規模のデモ隊が警察と衝突し、多数の死傷者が発生している模様だ(出典:ロイター)。

そもそも現職の大統領たるラベロマナナ氏は、アンタナナリボ市の市長として市の近代化に成功する等の成功を重ねた上で、2001年の大統領選に出馬。その大統領選においてラベロマナナ氏と当時のラツィラカ大統領の両方が勝利宣言を出すという異常事態の中、マダガスカル国内ではラベロマナナ派とラツィラカ派の抗争が発生する。
最終的には、2002年、軍部の支持を得たラベロマナナ氏が同国最高裁判所と国連から正式なマダガスカル共和国大統領として認められ、ラツィラカ氏はフランスに国外退去ということになる。
(その裏では英仏米の激しい鍔迫り合いがあったらしい・・・(出典:BBC))

そして2009年2月、野党指導者にしてアンタナナリボ市長のラジョエリナ氏を中心とする勢力が大統領批判を強めると、ラベロマナナ大統領は市長を解任する。それが現政権に批判的な人々の怒りを更に煽り立てる結果となり、件の状態になっている。

・・・・何やら2002年の再放送を見ているように気がしてくるが、ここで気になるのが今回のマダガスカル騒擾が、インド洋を巡るインドと中国の角逐に与える影響である。

インド洋が石油の一大産地であるペルシャ湾と一大消費地である東アジアをつなぐ重要な幹線であることは論を待たない。そこの安全に最も影響力を保有しているのが、米国第七艦隊である。しかし、金融危機で大きく傷ついた米国が、何時までもインド洋の警察官であり続けるのは難しいだろう。だからこそ米国は「ソマリア沖の海賊」という分かり易い脅威を持ち出して、欧州やロシア、インド、中国といった有力諸国に協力を要請したし、将来的には海賊退治のために構築した国際協調体制にインド洋の安全保障を委ねていこうとしてるのではないか。

では、米国のプレゼンスが減退したインド洋で勢力を拡大するのはどの国か? 欧州やロシア、日本については物理的な距離の問題に加え、少子高齢化と低成長経済がインド洋でのプレゼンス拡大を阻む要因となろう(日本においては当面は「憲法」も抑止要因として働くものと考えられる)。中東諸国はどうか? こちらについても、基本的に中東諸国の少ない人口と外洋海軍としての経験の少なさが、彼らのインド洋における勢力拡大を阻む要因となるだろう。

そうなると残るのが、伝統的にインド洋世界の盟主を自認するインド、そして中東・アフリカの石油を必要とし海軍増強にも余念がない中国となる。以下のニュースはそんな両国のインド洋における角逐を象徴するものと言えよう。

中国艦、追跡受け攻撃態勢 ソマリア沖、

印潜水艦か

 【北京4日共同】海賊対策のため、アフリカ東部ソマリア沖に派遣されている中国海軍の駆逐艦が「国籍不明」の潜水艦に追跡され、対潜ヘリコプターなどで攻撃態勢を敷いていたことが分かった。一部中国メディアが4日までに伝えた。

 報道は潜水艦の国籍などを特定していないが、インド海軍が配備するロシア製のキロ級潜水艦だったことを示唆している。

 ソマリア沖に派遣された中国の艦艇はミサイル駆逐艦2隻と総合補給艦1隻で、昨年12月下旬に中国南部の海南省三亜を出発。潜水艦は、3隻がインド洋を通過した時から追跡を続けていたという。

 ソマリア沖到着後の1月半ば、3隻が3度目の護衛任務を控えて待機していた際、潜水艦が接近。駆逐艦が捜索を始めると妨害電波などを出してきたため、対潜ヘリを出動させたところ、潜水艦は最後に水面に浮上して“逃走”したという。(出典:共同通信

既に中国はソマリア沖への艦艇派遣以前から、米軍が「真珠の糸」と呼んでいる海洋戦略を実行している。要は、ペルシャ湾~インド洋~マラッカ海峡~南シナ海というシーレーンの安全を確保するために、各沿岸諸国に経済援助と引き換えに港湾利用権や通信傍受施設、軍事基地等の設置を認めさせるというものだ。具体例としては、パキスタンのグワダルにおける通信傍受施設の設置と大規模港湾の建設、バングラディッシュに対するチッタゴンの港湾利用申し入れ、ミャンマーのココ諸島におけるレーダー基地・通信傍受施設の設置、同じくミャンマーのシットウェにおける港湾機能拡張、スリランカに対する軍事援助等の拡大、セーシェルへの経済協力等の拡大等がある。

対するインドは、モザンビークや自国のムンバイ、コチンに通信傍受施設を設置した他、モーリシャス・アガレガ諸島の長期借用、オマーンでの港湾利用権獲得を実施し、そしてマダガスカルでは2007年7月にインド海軍が通信傍受施設を稼働させている(因みに、大陸側ではタジキスタン、カザフスタンに空軍基地を置き、モンゴルには「宇宙観測基地(実際には中国の弾道ミサイル監視基地)」を設けている)。

そんな印中の水面下の攻防が続くインド洋の要地で起きた騒擾事件。事の果てにほくそ笑むのは中国かインドか、非常に興味深い。

<参考文献>
・フォーサイト 2005年9月号 「中国「真珠の糸」戦略の狙いとは何か」 
黒瀬悦成
フォーサイト 2007年4月号 「中国が軍事化を目論む「インド洋の宝石」
フォーサイト 2007年7月号 「インドがタジキスタンに進出 その背後にもロシア 」 
フォーサイト 2007年9月号 「マダガスカルにも拠点 インド洋“包囲網”の思惑 」
フォーサイト 2007年10月号 「中国のミサイル開発をインドがモンゴルから監視 」
フォーサイト 2008年8月号「スリランカ取り込みを図る中国に、神経を尖らせるインド 」
※フォーサイト誌は新潮社より出版の月刊誌です(公式HP

2009年2月8日日曜日

第二百九段 心に浮かぶ由無し事

心に浮かぶ由無し事をただ何とはなしに書き綴ろうかと思う次第。

・今年の風邪
いつだって性質が悪い。(類義語「今年の花粉」)

・100年に一度の出来事
けっこう発生する。

・格付け
言った者勝ち

・政治家の資質
諸外国では「玉石混淆」、日本では「・・・・」

・言うに事欠いて
麻生首相

・民主主義
日本:ワイドショーの、ワイドショーによる、ワイドショーのための政治体制。
諸外国:投票結果が暴動やデモで覆される政治体制

・医師不足
誰だって訴えられるのは嫌だ

・経済危機
万能免罪符。

以上(ぇー

2009年2月6日金曜日

第二百七段 忙中旱あり

個人、法人、政府、人界に存在するあらゆるものが景気後退の恐怖に揺れ、必死の対応で慌ただしく日々を過ごしている中、中国で大規模な旱魃が発生した模様です。
中国:干ばつ警戒水準を最高レベルに引き上げ、史上初-農作物に影響

  2月6日(ブルームバーグ):世界最大の小麦生産国である中国は、干ばつの緊急警戒水準を史上初めて最高水準に引き上げた。乾燥気候により、農産物 や家畜、地方の収入が脅かされている。

同国政府当局によると、冬小麦畑は全体の4割超に当たる約950万ヘクタ ールが干ばつの被害を受けており、うち約3分の1が「深刻な」状態にある。 約430万人の市民と210万頭の大型家畜の飲用水に支障が出ているという。

干ばつは穀物生産や輸出の減少につながり、農家の所得てこ入れに向けた 政府の取り組みに水を差す可能性がある。国営新華社通信によると、胡錦濤国家主席と温家宝首相は、干ばつ対策に「徹底して取り組む」よう指示した。

5日の小麦価格は中国産小麦への悪影響を材料にほぼ2週間ぶりの大幅高 となった。シンガポール時間6日午後零時54分(日本時間同2時54分)現在、 シカゴ商品取引所(CBOT)の時間外取引で、小麦先物価格(3月限)は0.2% 高の1ブッシェル=5.63ドル。(出典:ブルームバーグ

欧州と米国の経済がヨレヨレの今、中国(特に経済発展の遅れた内陸部)の成長・発展に期待を懸ける声もちらほら目に致します。そんな中に降って湧いた今回の災厄。北京政府と中国農民、そして彼らの財布に望みをつなぐ人や企業にとってはまさに凶報と言えましょう。
一方で点額法師個人としては、この旱魃がきっかけとなって

農産物需給の逼迫

農産物価格の下落基調反転

北米やカナダ、豪州の農家所得増大と生産意欲の拡大

イールド(単収)の高い品種や肥料に対する需要の高まり 

モンサントやポタッシュ社の利益増加

点額法師ポートフォリオの運用成績改善

という流れが発生してくれれば万々歳なんですがねぇ。どうなることやら・・・・? ( ̄w ̄)
(なかなかそう上手くはいかないのが人の世の常ではありますが・・・・・)

また穀物関連で他に気になったニュースとしては、「ヴェトナム(コメ輸出量世界2位)とタイ(コメ輸出量世界1位)がコメ取引の合弁会社設立で合意」というものが御座います(出典:日経ネット)。

冷戦時代を振り返れば、一方は東南アジアにおける米国の一大拠点、もう一方は密林に巨人米国を沈めた反米闘争の輝ける星。それが今や互いに手を結んで経済的利益の拡大を図るというのですから、つくづく「冷戦は遠くなりにけり」と言った所。

閑話休題、このコメ取引会社、将来的には他のコメ輸出国にも参加を呼びかけていく方針だとか(因みに主要なコメ輸出国としては前述の両国の他に、インド、米国(!)、パキスタン、中国、エジプト等が挙げられる。逆に輸入国としてはナイジェリア、サウジアラビア、フィリピン等がある)。
古くは石油がOPECによって囲い込まれ、最近では天然ガスで輸出国機構が結成され(参加国の同床異夢が甚だしいらしいですが・・・・)、そして今度はコメについても輸出国が発言力を強めようと動き出しました。
将来的に金融危機の影響がある程度おさまり、世界的に購買力が回復に向かった時のことを考えれば、今後のヴェトナムとタイ、そして合弁会社の動きが非常に興味深い所ではあります。

第二百六段 音速の遅い読書『東方見聞録1、2』

今回の音速の遅い読書で取り上げるのは以下の書物。

東方見聞録 (1) (東洋文庫 (158))
マルコ・ポーロ
新書
平凡社
発売日 1970-03

アマゾン通販

東方見聞録 (2) (東洋文庫 (183))
マルコ・ポーロ
新書
平凡社
発売日 1971-01

アマゾン通販

本書について書誌的な情報を言えば、モンゴル帝国による支配がユーラシアを覆った13世紀後半のヴェネツィア商人マルコ・ポーロが、ジェノヴァでの捕虜生活時に同じ牢獄のルスティケロに語った中東、中央アジア、中国、東南アジア、インド洋沿岸部といった各地域の情報をまとめた書物である(もっとも、モンゴル側史料にマルコ・ポーロに該当する人物が見当たらないことや各写本の異同の大きさ等から、『東方見聞録』の作者としてのマルコ・ポーロという人物は実在せず、複数人の体験談や見聞を「マルコ・ポーロ」という一人の商人に仮託して『東方見聞録』という書物が編纂されたという説もある)。

東洋文庫版では大雑把にいって1巻が中東、中央アジア、中国の事情、2巻で東南アジア、インド洋沿岸部の事情といった構成になっている。本書の中で特に点額法師個人の印象に残っているのが、第1巻で述べられるクビライ・カーンと有力諸侯ナヤン(書中では「ナイアン」と表記)との対決。主義主張の異なる相手には暗殺も辞さなかったイスラム教イスマーイル派の在り方、財貨に心奪われたアッバース朝カリフに対するモンゴル征西軍総大将フレグ(書中「アラウ」と表記)の痛烈極まりない皮肉。以上の3点である。これらは、ある時代の一エピソードに止まらない、リーダーとしての資質、過激派の本質等、いつの時代にも通じる話なのではないかと思う。

また、著者のマルコは各都市・地域の情勢を語る際、まず主要な産業と住民の宗教について述べている。要するにカネと心。地域情勢の把握のために外してはならない要素は、13世紀だろうが21世紀だろうがそう変わらないものらしい。
次いで土地の風俗や伝説について言及していくのだが、そこには現在でも見られる光景が(例えばインドのサティーや中東における完全な敵対でも融和でもない異教徒間の複雑な緊張関係)が客観的に描写されている。その一方で、時として怪しげな伝聞や荒唐無稽な謬説が紛れ込むのはご愛嬌といった所だろうか(寧ろそこが面白かったりもする)。

なお、モンゴル帝国を中心とした当時のユーラシア世界では、ペルシャ商人たちの活発な活動を反映してペルシャ語が一種の共通言語として機能していたらしい(現在の英語みたいなものか)。だから欧州人でも東方交易に携わる人間は大方ペルシャ語に通じていたようだし、逆にペルシャ語ができれば、遥か東方の中国で取引を行うことが可能でもあった。マルコ・ポーロもペルシャ語は勿論、他にギリシャ語やトルコ語、モンゴル語を自在に操れたとの由。

現代日本に置き換えれば、日本語のみならず英語と中国語+αの人材。
・・・マルコ氏の爪の垢でも煎じて飲みたいものである。

2009年2月3日火曜日

第二百四段 世界史スゲー!!

「歴史に親しむ」なぞと言うと、NHKの番組を見るか各種文献を紐解くか、といった所が世間一般の認識かと思われます(他に、歴史に題材をとった各種ゲームやコミック、小説を手に取るという方法も御座いますが・・・)。

そんな中、動画の宝庫Youtubeにて歴史のドラマチック性を存分に感じさせてくれる動画が幾つか挙げられておりましたので、ご紹介させて頂こうかと思います。

どれも「全米震撼」という煽り文句がしっくりくるような珠玉の逸品にて御座います。


第一次中東戦争

世界の注目を浴びたイスラエルの対ガザ地区軍事作戦の淵源ともいうべき出来事がこれ。
そして今やパレスチナ情勢は、従来のアラブ・イスラエル間の対立に加え、ハマスやヒズボラに影響力を振るうイラン、パレスチナ問題を武装闘争の象徴に掲げるアル・カイーダ等の国際テロ組織、キプロスやシリア、イランやギリシアへの影響力を背景に東地中海に勢力を拡大させつつあるロシア、尚も貪欲に石油資源獲得を狙う中国、ヨルダン川流域の水資源を巡る各国の思惑、その他様々なファクターが幾重にも折り重なった超絶多重連立方程式と化しております。今年は、この厄介至極な方程式の解決に向けた曙光が見られるのでありましょうや?

朝鮮戦争(国連軍ソウル回復まで)

この戦争による軍需の高まりの恩恵をフルに享受したのが日本。そして、その日本でスターリン重病により朝鮮戦争停戦の予想が高まった時に発生したのが、俗に「スターリンショック」と呼ばれる株価急落。戦乱で夥しい血が流される一方、流れる血でタービンなり歯車を回して富を作り出す者も消して絶えることがないのもまた人の世の習い。全ての出来事に善悪は無く、ただ、苦痛を強いられる者と富貴を手にする者がいるだけ。
それにしても「韓国にダンケルクは無い!」というセリフはカッコいいなぁ・・・。
※因みに、後編はこちらで視聴できるようです。

アヘン戦争

グラッドストーンの言葉がただただ熱い。そして冷厳なる英国海軍と清国海軍の力の差。問題のすり替えと正論を圧する激情。勝者の傲慢と敗者の悲哀。実に魅せる動画となっております。

考えると上3つの動画のうち、2つは20世紀中の出来事。他にも二つの世界大戦、キューバ危機、湾岸戦争、ヴェトナム戦争、ソ連のアフガン侵攻、911テロ、台湾海峡危機、冷戦崩壊、二つの石油危機、様々な出来事が20世紀から21世紀初頭にかけて御座いました。・・・・・何だか最近の世を騒がせている「100年に1度の危機」が霞んで見えてしまうのは、点額法師の視点が政治学・歴史学に偏したものだからでしょうか?

2009年2月1日日曜日

第二百三段 ここに睦月果て、如月が始まる

日々の暗澹、惨憺、阿鼻叫喚な世界経済状況を前に、少しも目出度さを感じられないまま、気づけば2009年1月が終了。「光陰矢の如し」とはよく言ったもので御座います。
そして本日から如月、2009年2月が開始。今月予定のイベントで、点額法師が個人的に注目しているのが以下のイベントです。

・2月4日
 ・イングランド銀行金融政策委員会(於英・ロンドン)
・2月5日  
 ・ECB理事会(於独・フランクフルト)

・2月10日
 ・イスラエル総選挙
 ・イラン、イスラム革命30周年
・2月14日

 ・G7財務相・中銀総裁会議(於伊・ローマ)
・2月17日
 ・コソヴォ、独立宣言から1年経過
・2月18日
 ・日銀金融政策決定会合(於日・東京)
・2月19日
 ・ロシア・サハリン2からのLNG対日輸出開始
 ・ECB理事会(於独・フランクフルト)

・2月27日
 ・ASEAN首脳会議(於タイ・ホアヒン)

上記の中で特に興味津々なのが2月10日。

この日はイスラエルの総選挙が予定されている日であると同時に、イラン・イスラム革命30周年の日でもあります。ガザへの徹底的な軍事力行使によって、従来は親イスラエル国であったトルコが急速に反イスラエルに舵を切りつつある中(もっとも、イスラム主義を掲げる政党が政権を取った時点で、トルコの反イスラエル化は予期された事態ではありましたが・・・・)、ハマスとヒズボラ、そしてその背後にいるイランがイスラエルの国際的な孤立に乗じ、2月10日という象徴的な日にテロやロケット弾攻撃等々を仕掛けてくる可能性は十分にあります。また、イランについては革命30周年の記念日に核開発について何らかの声明を発表してくるやもしれず・・・・。金融危機でのたうつ世界経済に、また新たに地政学リスクという重石が加わってくるのか、2月10日は要注目ですな。( ̄w ̄)

それと、2月27日のASEAN首脳会議。相変わらず開催地をタイにしておりますが、できるんですかねぇ・・・・? 
どうでもいいですけど


その他、当ブログの「情報源」欄や詳細プロフィールに於いて、新たな参照先として以下のサイト、ブログを追加しました。

<ブログ:こちらは詳細プロフィールにリンクがあります>
ポール・クルーグマン教授のブログ
ヌリエル・ルービニ教授のブログ

<サイト>
大連商品交易所
上海期貨交易所
ICE(Intercontinental Exchange )
FIA(Futures Industry Association 全米先物業協会)

FIAのサイトを見て思いました。トウモロコシやダイズ、コムギといった農産物先物の取引高、シカゴに次ぐのは大連や鄭州といった中国の先物市場。ブルームバーグでも銅の先物価格として取り上げるのはロンドンと上海。日本の各取引所がぐだぐだやっている間に、モノの値段は米中で決まる、そんな時代になりつつあるのですなぁ・・・・。

まあ、風濤厳しき時代を生き抜くには、個々人の知識武装の他に少しばかりのユーモアも必要かと思われ・・・