2009年3月29日日曜日

第二百四十二段 仲人ロシアの目的は?

ロシアがイランと米国に対して仲介の労を取ろうとしているらしい。ロシアの通信社Novostiは3月26日に以下のように伝えている。

Russia ready to help with U.S.-Iran

meeting at Moscow conference

MOSCOW, March 26 (RIA Novosti) - Russia is not aware of any plans for U.S. and Iranian diplomats to meet in Moscow on the sidelines of a conference on Afghanistan on Friday, but it is ready to help arrange such a meeting, the Foreign Ministry said.

"We have no such information, but if such an intention is announced, Russia as the host country is ready to provide any assistance that may be necessary," official ministry spokesman Andrei Nesterenko said on Thursday.

The international conference on Afghanistan is to focus on efforts to counter terrorism and drug trafficking in the war-ravaged Central Asian state.

The conference will be held under the aegis of the Shanghai Cooperation Organization (SCO), a security group that comprises Russia, China, Kazakhstan, Tajikistan, Kyrgyzstan and Uzbekistan.

Nesterenko said the U.S. delegation at the conference would be led by Patrick Moon, the principal deputy assistant secretary of state for South and Central Asian affairs, and the Iranian delegation would be led by Deputy Foreign Minister Mehdi Akhondzadeh.

He said talks between U.S. and Iranian officials would "help ease tension around Iran as well as the situation in the region as a whole."

The U.S. Embassy in Moscow said it had no information about a possible meeting between Iranian and American diplomats in Moscow.

Russia has welcomed Washington's moves toward engagement with Tehran under President Barack Obama, including a video message of congratulations on the Iranian New Year.

Deputy Foreign Minister Sergei Ryabkov said last Friday that it was "important for us that the new [U.S.] administration is making advances to Tehran."

The first direct talks between senior U.S. and Iranian officials in almost 30 years were held in Baghdad last May, when the two countries' ambassadors to Iraq held talks strictly limited to the situation in the country.(出典:Novosti

また、ロシアはアフガン・カブール政権に対する国際社会の支援拡充を訴えている。これもNovostiが同日に以下のように伝えている。

Russia hopes to boost international

effectiveness in Afghanistan

MOSCOW, March 26 (RIA Novosti) - Russia hopes to increase international effectiveness in assisting the Afghan government in the fight against terrorism and drug trafficking, Foreign Minister Sergei Lavrov said on Thursday.

Speaking ahead of Friday's Shanghai Cooperation Organization (SCO) conference on Afghanistan, Lavrov said there must be "more coordination" on combating terrorism and drug trafficking.

Russia's proposals "are directed, first of all, at increasing the efficiency of international cooperation in the work of supporting the efforts of the government of Afghanistan in the struggle against the threat of terrorism and illegal drugs," Lavrov said.

The SCO is a security group that comprises Russia, China, Kazakhstan, Tajikistan, Kyrgyzstan and Uzbekistan. The Moscow meeting will also be attended by officials from Afghanistan, neighboring Turkmenistan, Group of Eight leading industrial countries, the European Union, NATO and the post-Soviet Commonwealth of Independent States.

Russia took over the presidency of the SCO last August. Iran, India, Mongolia and Pakistan have observer status in the organization.

Another conference on Afghanistan is to be held next Tuesday in The Hague under the auspices of the UN.

A Russian foreign ministry spokesman, Andrei Nesterenko, said on Thursday that Russia hoped the participants of the forum in The Hague would "use the results of their work in the conference in Moscow" to increase further international efforts in the situation in regard to Afghanistan.(出典:Novosti

ロシアの米・イラン仲介工作とアフガン支援強化呼びかけ、一見すると別個の独立した行動だが、実はこの二つのロシアの行動は、「タリバン対策」という共通の根から発生した行動であり、密接に関係したものではないかというのが、点額法師の考えである。

さて、ここで最近のアフガン情勢を見れば、タリバンの勢力再拡大にNATOや米国、現カブール政権は苦戦を強いられている。この状況下、米国やNATO諸国ではタリバン穏健派を取り込んだ新政権樹立を求める声が着実に高まりつつある。

しかし、もしタリバンの一部も包摂した新政権樹立という話になれば、かつての北部同盟時代から現カブール政権を支えてきたロシアにとって、自国のアフガンにおける影響力後退を懸念せざるを得なくなる。

また、如何に穏健派とはいえタリバンが参加した新アフガン政権が成立すれば、彼らによって中央アジアのイスラム過激派組織のアフガン利用が黙認される可能性も十分に考えられる。

それは、ロシアがロマノフ朝以来中央アジアに対して有してきた諸権益にネガティブな影響を与えることになるだろうし、北コーカサスを中心に分布するロシア領内のイスラム教徒をも刺激することにもなろう。

だからこそ、ロシアは現カブール政権を支援する必要があり、そのためにイラン・米国間の仲介および国際社会に対する現カブール政権支援拡充の呼びかけを行ったと考えられる。

そもそもイランは微妙な国である。彼らは北部同盟時代からシーア派勢力ハザラ人勢力を支援することで、その北部同盟を母胎として成立した現カブール政権とのパイプを有するものの、現カブール政権が主に米国の支援によって成立した政権であることから、積極的な支援を打ち出しにくい状況下にある。
タリバンとの関係を見れば、イランとタリバンは対米闘争や難民、麻薬問題への 対処のために盛んに接触していると囁かれている一方で、厳格なスンニー派支配を掲げるタリバンはアフガンのシーア派に対して当初から過酷な弾圧を加え、1998年にはイランの外交官を殺害してイラン軍、タリバンが一触即発の事態となったこともあった。要するに、イランは現カブール政権とタリバンの両方にパイプを持ちながら、どちらに対しても積極的に味方になれない事情を抱えていると言える。

そのような事情を頭に入れて、ロシアのイラン・米国間仲介工作の動きを見れば、これは対米関係の改善によってイランが現カブール政権への積極的支援に動き易い状況を作り出そうとする狙いがあるものと考えられる。
仮にこの仲介工作が成功すれば、イランと米国は恩人ロシアのアセットである現カブール政権に消極的・懐疑的な態度は出せなくなるし、両国の現カブール政権支援協力もやり易くなる。そうなれば旧ソ連領中央アジアと接するアフガン北部国境に加えて、アフガン西部国境を通じたタリバンの補給を絶つことが可能となり、アフガンの戦略バランスは現カブール政権優位に傾くことになる。それは「タリバンの政権参加」という声をかき消すことにも繋がろう。
つまり、イラン・米国間仲介工作が成功すれば、ロシアにとって敵対的な勢力がアフガン政府に加わる可能性の低下を見込めるのだ。
(過去の類例を顧みれば、ヴェトナム戦争で米国が敗北したのは、北ヴェトナムの封鎖に失敗したことによる面が大きかった。いくら米国や南ヴェトナムが攻撃を仕掛けた所で、北ヴェトナムは北の中国国境、西のラオス国境からほぼ無障害で補給を受けることができたし、場合によっては国境の向こう側に退避することもできた。そして現在のアフガニスタンを見れば、北方の旧ソ連領中央アジアはそれなりに封鎖できているものの、南のパキスタン国境は親タリバン勢力によって押さえられ、西のイラン国境の封鎖も前述のイラン政府の姿勢のおかげで万全とは言い難いのが現状なのである)

無論、このロシアのイラン・米国間仲介工作が成功するとは限らない。寧ろ、第二次大戦終結以来のイランと米国との複雑な愛憎関係を見れば、ロシアの仲介工作が昨日、今日といったレベルで目覚ましい成功を収める可能性は低いと考えていいだろう。

そこでロシアが放った第二の矢が、「国際社会に対する現カブール政権支援の呼びかけ」だと考えられる。上記Novostiの記事を見てもらえれば分かるが、このロシアの呼びかけはSCO(上海協力機構)の会議(モスクワにて開催)においてなされたという(記事によれば、この会議にはSCO加盟国の他、アフガニスタン・現カブール政権やトルクメニスタン、EUやNATO、G8諸国、CIS諸国の高官も顔を出していたとか)。このSCOを通じて各国に現カブール政権支援を呼びかけたのが、ロシアの上手い所ではないか。

SCOとはロシア、中国、カザフスタン、タジキスタン、ウズベキスタン、キルギスの6カ国を正規メンバーとし、インド、パキスタン、イラン、モンゴルの4カ国がオブザーバーとして参加する地域安全保障機構である。参加国を見てもらえれば一目瞭然のように、イランが核問題や対イスラエル政策で対立する西側諸国の影が非常に薄い。
そんな組織を通じた呼びかけであれば、イランも比較的応じ易かろう(少なくとも米国との関係改善よりは容易だと思われる)。仮にロシアの仲介工作がうまく進まず、西側とイランの溝が埋まらないままであったとしても、ロシアはSCOという組織を通じてイランを現カブール政権側に招き入れることが可能となるし、その場合はイランにとっても中露との関係強化による西側牽制という利点が望める。

賢人は常に複数の策を以って事に当たり、故に一つの策が潰れたとしても身を損なうことなく目的を果たしたと言うが、ロシアの今回の件はこの賢人の行いに通じるものがあろう。

2009年3月27日金曜日

第二百四十段 イラク、クルド人問題でトルコ支持を表明のこと

イラクがクルド人問題でトルコ支持を明確にしてきた。ロイターは以下のように伝えている。

イラク首相、クルド労働者党対策で

トルコに支援表明


[バグダッド 25日 ロイター] イラクのマリキ首相は、同国北部を拠点にトルコを攻撃しているクルド人独立派クルド労働者党(PKK)との戦闘でトルコを支援していくと約束した。

 国営テレビの録画インタビューが25日放映された。

 24日にはトルコのギュル大統領がイラクを訪問し、20年以上にわたるPKKの抵抗運動の終結に協力を要請した。米国と欧州連合(EU)はPKKをテロ集団とみなしており、トルコはイラクが鎮圧に尽力していないと批判していた。

 マリキ首相は「PKKはテロ組織であり、イラクとトルコの間に危機をもたらしてきた。この問題は終結させなければならない。われわれの意志は固い。(我が国に)テロ組織の居場所はない」と語った。

 23日には、自身もクルド人であるイラクのタラバニ大統領が、PKKに対し、武装解除するか、さもなければイラクを出国するよう通告。クルド人独立派に対するイラク指導者の発言としては、最も強い言葉のひとつとなった。(出典:ロイター

今回のイラク政府の発言の目的は二つあると思われる。一つは、PKKに厳しい態度を示すことで、彼らの聖域の存在を口実としたトルコのイラク北部地域に対する介入を防止すること。もう一つは、シーア派各勢力を通じて影響力を拡大させているイランに対し、中東の有力国たるトルコとの協力関係を強化することで戦略的なバランスをとること。以上の二点である。

そうなると、イランはイラク、トルコ両国から敵視されることになったPKKへの支援強化を通じて、イラクを巡るトルコとの代理戦争を活発化させるのだろうか?
個人的にはそうは考えていない。何故なら、現在のイラク政府もまたシーア派勢力主体で陰に陽にイランの影響下にあるからだ。そのような状況下、イラク政府がイランの意向を全く無視してトルコとの関係強化に動くとは考えにくいものがある。寧ろ、今回のマリキ・イラク首相発言に象徴されるイラク・トルコ関係の改善は、ある程度イランにとっても都合の良いものだと考える方が分かり易い。

ではマリキ首相発言の背後にある(かもしれない)イランの意図とは何だろうか?
ここで視点を湾岸地域に移して見ると、サウジやUAE等において今まで散々少数派の悲哀を味わされてきたシーア派の政治活動が活発化してきている()。また、UAEはトルコとの軍事協力強化で合意している(出典:Gulfnews)。

これらのニュースを傍証にイランの意図を推測すれば、イランは恐らくイラクにおいてはトルコとぶつかることはせず、寧ろ影響下のイラクにトルコとの友好関係をある程度深めさせてこれを緩衝地とし、自らのリソースをペルシャ湾・アラビア半島方面への勢力拡張に集中させようと考えているのではないだろうか?

つまり、イランは勢力拡大の尖兵として湾岸諸国で長年冷遇されてきたシーア派勢力に物心両面の支援を与え、これが湾岸諸国におけるシーア派勢力の活動活発化に繋がっている。
また、UAEがトルコとの軍事関係強化に動いたのも、イランの勢力拡大が進展しつつ現状を少しでも食い止めようとしての措置である(因みに、UAEは2008年に自国領において恒久的な海軍基地の設置フランスに認めている)。以上のように考えることができる。

では地域内での存在感を高めつつあるイランとトルコは、今後も上手く棲み分けていくことができるのだろうか? ムガル朝初代のバーブルは次のような言葉を残しているのだが・・・・。

神のしもべがパンの片方を食べれば、残りの半分をダルヴィーシュたちに与えるであろう。
しかし君主が一地帯の主権を握れば、彼が目指すのは別の地帯の征服のみである。

※この辺りの事情については、佐々木良昭氏のブログ「中東TODAY」が詳しい。

2009年3月26日木曜日

第二百三十九段 戦場の霧

1944年レイテ沖海戦、日米両艦隊が入り乱れての激戦となった当該開戦においては、敵と味方の現状位置を把握することすら困難を極め、アメリカ太平洋艦隊総司令官ニミッツ提督は、「第34任務部隊はどこか。全世界は知らんと欲す」と歴史的に有名な電文を打った。

1575年長篠合戦、織田信長は敵将武田勝頼の所在を掴むことに多大な労を割いた。

古来より、戦場においてターゲットの現在位置をリアルタイムで把握することは困難を極め、司令官は目隠しをされたような状況下で決断を下すことを度々強いられてきた。これをプロシアの軍人にして戦略論の大家としても知られるクラウゼヴィッツは「戦場の霧」と呼んだ。

2009年3月下旬、点額法師もまたこの「戦場の霧」に囚われていた。存在するはずのターゲットがどうしても捕捉できない。追いかけても追いかけても見つからない。そのターゲットは『あっちこっち ドラマCD』

ドラマCD あっちこっち
イメージ・アルバム
CD
Frontier Works Inc.(PLC)(M)
発売日 2009-03-25

アマゾン通販


3月25日。発売日当日。当初購入先として想定していたAmazonは、昼頃時点で既に「一時的に在庫切れですが、商品が入荷次第配送します」との無情宣告。直ちに新宿とらの○なを対象にサーチ&購入作戦を立案実行するも、ターゲットが店頭に存在しない現実が立ちはだかる。
止むを得ず会社帰りに索敵範囲を秋葉原とら○あな及びアニ○イトにまで広げる第二次作戦を決断するが、突発的残業の発生により第二次作戦の決行は中止。空しく帰宅後、再度Amazonをチェックするも在庫はまだ回復していない模様。3月25日は完全な空振りに終わる。

3月26日。発売後一日経過。Amazonの在庫は未だ回復せず。会社の昼休み、新宿とらの○なに対して二度目のサーチを行うが、やはり店頭に在庫は存在せず。不意に「発売延期?」との疑念が脳を過るが、ネットを見る限りではそんなことも無いようだ。萎えそうな気持をその事実で奮い立たせながら、そそくさと仕事を終わらせ、秋葉原とら○あな及びアニ○イトに対して索敵を実施。・・・・結果は失敗。両店舗においてターゲットの存在を確認できず。
心の中で「『あっちこっち ドラマCD』はどこか。全世界は知らんと欲す」と絶叫した所で事態が改善するわけではなく、突き付けられた選択肢は「諦めて撤退」か「索敵続行」。
点額法師は「索敵続行」を選択。ならば索敵地を何処にするか? 時間的にはぎりぎりで渋谷のHMVやタワーレコードの開店時間内に間に合う。しばし黙考してふと気付く。「ソ○マップをまだ覗いていない」と。「「エースコンバット」シリーズのサントラ購入で世話になったソ○マップなら或いは・・・」と藁にもすがる思いでサーチ開始。・・・・結果は成功

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            ノ     Y  `--  "    ))  ノ ""i    ヽ
                 ノヽ、       ノノ  _/   i     \
                /ヽ ヽヽ、___,;//--'";;"  ,/ヽ、    ヾヽ

で、歓喜に震えながら家に着き、早速再生・・・・・

                /         丶
              /           ヽ
              l :.          :;. l   なんと・・・なんと言うツンデレ・・・
               l ::. `' ‐ --  --‐ '" :, l   一切の無駄が無く・・・
            /ヽ,' ,.ミ二、‐-‐_二彡、', レヽ 聞けば、ただ・・・・・・ただニヨニヨしてしまう・・・・・・
            l久lシ、'=ェ.ェぅ、 ,r'、ェ.ェ=ミッlヘi'l  実に心爽やかなる逸品。
            | f,l '"`゙  ゙'´l !`゙   ゙´"l(、,l 
            l J,l   ,rィリ l ミヽ   ,h }l  
             l'ーl   〃゙'^;-;^'ヾ',  ,lーリ  
          _, ィ`"l   i∠ニニヽ,}  ,ト:く  
        , ィ":./::::::::丶 l ヾ`二´ソl, ,イi::::::::丶、
    ,. ィ"´: : :ノ::::::::::::::l゙トゝ、    ノ‐'/リ:::::::::::ヽ`丶、
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友達以上恋人未満の微妙な距離感って最高だよね (〃∀〃)=3

2009年3月24日火曜日

第二百三十八段 MDに対する政府筋発言についての雑考

北朝鮮のミサイル実験(北朝鮮は「衛星打ち上げ」と主張)を巡って、朝鮮半島周辺国の様々な思惑が交差する今日この頃、日本とその同盟国アメリカが対北牽制のカードとしているMD(ミサイル防衛)について、他ならぬ日本の政府筋がMDの有効性を否定する発言を行ったという。

発言内容等を共同通信社は以下のように伝えている。

「ミサイル迎撃不可能」と政府筋

MDの実効性否定

 政府筋は23日、北朝鮮が弾道ミサイルを発射した場合の迎撃について「ピストルの弾をピストルで撃ち落とせるはずがない」と述べ、地対空誘導弾パトリオット(PAC3)などミサイル防衛(MD)による迎撃は不可能との認識を示した。

 政府がミサイル迎撃の準備を検討している中で、政府筋がMDの実効性を否定したことは波紋を広げる可能性もある。

 さらに政府筋は、これまでの海上自衛隊による海上配備型迎撃ミサイル(SM3)の発射試験にも触れ「成功したのは『今から撃ちますよ』と言ってくれるからだ」と疑問を呈した。(出典:共同通信)

MDにおいては、実際に相手の弾道ミサイルを撃墜できる能力と並んで、相手側に「自分たちのミサイルで相手を恫喝したり、被害を与えることは無理なんじゃないか?」という迷い・疑念を抱かせることが肝要である。従ってMDではテクノロジーや部隊の練度と同じくらいに宣伝工作・心理戦が重要となってくる。

で、北朝鮮が自国のミサイル技術を武器として米国(及びそのジュニア・パートナーたる日本)相手に瀬戸際外交を展開している状況下、他ならぬ日本政府の中枢部(因みに、報道で「政府筋」という場合は官房副長官か首相秘書官を指す)から「我が方の展開しているミサイル対抗策は張り子の虎なんだ」という発言が飛び出してきたのが、今この現状。

さて、件の「政府筋」氏の「MDは張り子の虎」発言を北朝鮮指導部が耳にした場合、彼らが「そうか、我々の瀬戸際外交は現状改善の役に立たないのか。ならばミサイルによる恫喝外交は封印して国際社会への復帰を目指そう」と考えるだろうか?
個人的にそれはまず無いと思う。寧ろ「米日のミサイル対抗策は張りぼてに過ぎないのか。ならばミサイルの脅威を前面に押し出して外交交渉を優位に進めよう」と北朝鮮指導部が考える可能性の方が高いだろう。そうなると、米国は対北朝鮮外交で同国にパイプを有する中国を益々重視せざるを得なくなるだろう。
いや、北朝鮮が単なる恫喝の範囲に止まり続ける保証は無い。最悪、「ミサイルの洗礼を相手に一発お見舞いしてからの方が、より対米(そして対日)交渉を有利に進められるのではないか」という誘惑にかられないとも限らない()。そうなった場合、イラクやアフガニスタンで大きく傷ついた(傷ついている)米国が北朝鮮に対抗するには、やはり中国を一層重視しなければならなくなってくる。

そうなると辛いのが日本。何故なら日米同盟が今日に至るまでそれなりに強固な存在としてあり続けたのは、一重に米国が中国やソ連・ロシアといった敵対的な大陸勢力の海洋進出を阻むために日本列島という地の利を必要としたからである。
しかし、今回の北朝鮮核・ミサイル問題を機に米国が対米協力の見返りとして中国の海洋進出を認めることになれば、当然、米国にとって長年ユーラシア東部の蓋として利用してきた日本列島(ひいてはそこに存在する日本国)の重要性も低下し、それに伴って米国から見た日米同盟の価値も小さくなるのが自然な流れだろう。
もし、中国がマラッカ以東の海洋に勢力を拡大してきた場合、米国の後ろ盾を持たない(若しくは後ろ盾の著しく弱体した)日本が、莞爾として対中独立を全うしていけるとは考えにくい。

※このように書くと「北朝鮮と米国の実力差を考えれば、北朝鮮が米国に手を出すなんて到底有り得ない」と思われるのが普通だろう。点額法師自身も基本的にはそのように考えている。
ただし歴史を振り返れば、かつて大日本帝国もまた、米国との間に絶望的なまでの国力差を抱えながら(いや、だからこそと言うべきか)、「我が方の力を集中した短期決戦で米国に痛撃を与えることができれば、大日本帝国に有利な形で米国との外交交渉に臨める」と判断して真珠湾に猛突していった。その大日本帝国の轍を北朝鮮が踏まないと断言することはできまい。
そういえば、ソ連が米国に肩を並べる世界大国として国際政治の舞台に浮上してきたのは、第二次大戦で最終的には米英側につき、戦後に旧枢軸国解体の分け前に与れたことに大きく依っていた。
ここで米国の立ち位置はそのままに、枢軸国と連合国を天秤にかけて最後は上手く勝ち馬に乗ったソ連の立ち位置に中国、結果的に破滅の引き金を自ら引くことになった大日本帝国の立ち位置に北朝鮮を置いてみると、ユーラシア極東部の情勢が、60年以上の時を隔てながら奇妙な程に似通っていることに気付かされる。
結果論として、第二次大戦はユーラシア東西における枢軸国(ナチス・ドイツと大日本帝国)の滅亡と世界大国ソ連の登場をもたらした。では、今回の北朝鮮核・ミサイル危機の顛末や如何?

2009年3月22日日曜日

第二百三十六段 日本列島という蓋

小沢民主党党首の「第七艦隊発言」が一時波紋を呼んだ。各マスコミの報じた発言の要旨としては「現在米国は日本国内に空陸海海兵の四軍を展開しているが、実際に日本周辺の紛争抑止力として機能しているのは第七艦隊の海軍力であり、他の三軍を日本国内に展開させておく必要はないのではないか?」というものだったかと思う。

その発言の当否はひとまず置くとして、考えると何故米国は陸海空・海兵の四軍を日本列島に展開させ、大日本帝国の残骸から急ごしらえで作り上げた日本国という国を代々守護してきたのだろう?

答えは、米国にとって日本列島はユーラシア東部の勢力が海洋に進出すること阻む格好の蓋であったからである。そこのことは、地図若しくは地球儀を見れば一層明確に浮かび上がってくる。

右に掲げたのが、グーグルアースより点額法師が作成した地図である。日本列島がユーラシア東部の蓋となっている様が窺えるかと思う。

また右記地図上、赤四角で示したのが在日米軍基地、黄色楕円で示したのが、現在日本が周辺国との間で所有権の係争を抱える地域となっている。
どれも綺麗にフィリピン・ルソン島からロシア・カムチャッカ半島を結ぶ線に沿って分布していることが確認できる。

これが示すことは唯一つ。現在日本国に所属している領域というのは、海上進出を図るユーラシア東部の勢力とそれを許さない勢力の角逐の舞台だということである。

繰り返しになってしまうが、日本列島というのはユーラシア東部の勢力にとって海上に備え付けられた巨大な「蓋」である。そして、米国は日本列島(およびその周辺)に巨大な軍事力を配備することによって、「蓋」を強力な「鉄蓋」としてユーラシア東部勢力の海洋進出を封殺してきたのだ。これが、米国が日本列島に陸海空・海兵の四軍を展開してきた根源的理由である。

一方、米軍の日本列島展開によって海洋進出を封殺されたユーラシア東部勢力、具体的にはソ連・ロシアや中国は、海上輸送の恩恵に与れないか、日本列島を支配下に置く勢力の認める範囲で海上輸送の恩恵に与るかの二択を突き付けられた格好となった。
別の言い方をすれば、海洋から隔離された広大な土地を持て余すか、相手に命綱を握られた状態で経済成長に邁進するかの二択を突き付けられたのだ。
結果、ソ連極東部は豊富な天然資源を有しながら海上からのアクセスがほぼ見込めなくなったことにより、演習場や核実験場、核兵器や強制収容所の配置場所以上の意義を持ち得ず、ソ連邦は極東部領土のポテンシャルを十分に生かせないまま、1991年に崩壊することとなった。
中国は毛沢東時代に大陸に引きこもる道を選んだが、それも「大躍進」や文化大革命の失敗によって頓挫し、鄧小平時代になって当面は米国海軍力の顔色を窺いながら海上輸送路にアクセスして経済発展を目指す道を選択して現在に至っている。

では、今後のユーラシア東部の蓋である日本列島に対する各国の姿勢はどうなるだろうか?

米国は、中国とロシアの少なくともどちらか一方が信用できる同盟国(若しくはそれに準じる存在)にならない限り、日本列島にまとまった軍事力を展開させ続けざるを得ないだろう。
ロシアは、オホーツク海に展開するSLBM原潜の安全を確保するため、日本海自や米海軍のオホーツク海展開に繋がりかねない北方四島(特に国後、択捉)の返還は頑なに拒み続けるだろう。一方で米国との決定的な対立を避け、シベリアの豊富な天然資源と海上輸送路を結合させることで自国の経済発展を目指すことになろう。
中国は、その目指す方向によって二つの道が考えられる。一つは自国の経済成長に専心し、東アジアにおいては米国主導の秩序を容認する場合である。この場合、中国の行動は現状維持的なものとなり、東アジア情勢は比較的安定的なものとなろう。もう一つが東アジアにおいて米国中心の秩序を中国中心の秩序に塗り替えようとする場合である。この場合、中国は自国の海軍力増強に加え、日本列島に対しては地政学的重要性が高く且つ反日反米感情の高い沖縄を狙って楔を打ち込み、南シナ海を押さえることによって朝鮮半島や台湾、日本列島に何時でも兵糧攻めを仕掛けられる態勢の構築を図ることになるだろう。それは周辺国との緊張・軋轢をもたらす可能性が高いと考えられる。

折しも、南シナ海では調査船問題で米中が睨み合う神経質な展開が続いている。この波は早晩東シナ海にも及んでくることが予想される。

2009年3月21日土曜日

第二百三十五段 マダガスカル政変

インド洋西部の島嶼国家マダガスカルで政変劇が起きた。

当ブログ第二百十段でも触れたが、今回の政変劇をざっとまとめると以下のようになる。

ラジョエリナ氏、アンタナナリボ市の市長(2007年就任)として広く人気を博す。

ラジョエリナ氏、政権入りの意欲を示すとともに、2008年末からラベロマナナ大統領への批判を強める。

ラベロマナナ大統領、ラジョエリナ氏を市長から解任。


国内ではラベロマナナ派とラジョエリナ派の抗争が発生する。

3月15日、軍部がラジョエリナ氏支持を打ち出して大統領府占領。

ラジョエリナ氏、自身の暫定大統領就任を宣言(現憲法における大統領職の年齢規定に抵触するため)


因みに、今回の政変劇で大統領職を逐われたラベロマナナ氏の大統領までの道程が以下の通り。

ラベロマナナ氏、アンタナナリボ市の市長として広く人気を博す。

ラベロマナナ氏、2001年大統領選に出馬。

大統領選において、当時のラ ツィラカ大統領とラベロマナナ氏、双方が勝利宣言


国内ではラベロマナナ派とラツィラカ派の抗争が発生する。

2002年、ラベロマナナ氏、軍部、最高裁判所と国連の支持によって正式な大統領として認められる。

同年、ラツィラカ氏はフランスに国外退去。

要は、首都の市長が現職大統領に喧嘩を売って、国民が分裂し、最後に軍部が市長側支持に回って政権交代完了・・・・。
・・・・これが「てんどん」というやつかッ!

さて、今回の政変劇で打倒された旧政権は、インドとの関係強化に熱心で、2007年にはマダガスカル島北部にインド海軍の通信傍受施設を設置させている。
そんな政権が打倒されたのだから、インド政府も何かしらの声明を出しているのだろうと思ってネットでインドの新聞や通信社をチェックしてみたが、特に今回の政変劇でインド政府は声明は確認できなかった(チェック対象が英文表記やってるところだけに偏っているせいもあるかも)。
下手に声明出してマダガスカル新政権やそれにつれない態度をとった米国との間で無用の波紋を起こしたくないというのがあるのかしらん。

もう一つ気になるのが中国の動きだよなぁ・・・。既にセーシェルに対して影響力を強めるべく経済援助なんかに動いているらしいし、このまま欧米諸国がマダガスカル新政権に冷淡な態度を取り続ければ、マダガスカルもまた中国の影響圏に入るかも・・・・?

2009年3月17日火曜日

第二百三十三段 南シナ海の火の粉、西に波及?

2009年3月17日、米国がボーイング社製の最新対潜哨戒機P-8をインドに対して売却するとの報道があった。

米、インドに最新鋭哨戒機売却へ

過去最大規模の兵器取引

  【ワシントン16日共同】16日のロイター通信によると、米政府はボーイング社製P8I哨戒機8機のインド政府への売却を認可する方針を固め、同日までに 米議会に通告した。整備費なども含めた取引総額は約21億ドル(約2000億円)に上り、米国からインドへの兵器輸出としては過去最大規模になるという。

 今回の取引には、エネルギー確保のためインド洋沿岸諸国への影響力拡大を図る中国を、米印両国がけん制する狙いもあるとみられる。

 P8Iは民生用のボーイング737を改造した最新鋭機。長距離用途に適しているとされ、インド洋の広範囲の海域で対潜哨戒のほか海上での監視や偵察、捜索救助を行うことが可能となる。

 国務省が議会に通告した内容によると、早ければ2013年にも1号機が配備され、15年までに8機全部がインド側に届く予定。

 インド海軍は同機の初の海外ユーザーとなる見通し。(出典:共同通信)

今回の対潜哨戒機売却について、米国の狙いは二つあると思われる。

一つは新たな兵器ユーザの獲得であろう。特にインドは経済発展が目覚ましい上に、市場経済のみならず民主主義という理念も米国を始めとした西側と共有していることから、米国にとってインドは、国内外の目を比較的気にせず兵器を売り込める優良顧客として期待が大きいものと推測される。
しかし、兵器というものは売買契約を交わして、基地に現物を納入して全て完了というものでは決してない。いざ有事に万全の働きをしてもらうには日頃のメンテナンスは欠かせないし、特に対潜哨戒機のように情報収集を行うものについては、収集した情報を瞬時に基地や司令部、そして味方の艦船や戦闘機等と共有できる状態にしておくことが必要である。

この観点からすると、現状のインド海軍は国産兵器、ロシア製兵器、英国製兵器等が混在した状態にある。しかも、防衛費が比較的潤沢な米国と違い、各兵器、各部隊のIT化具合もまちまちである。そこに米国産の最新鋭哨戒機が加わったとしても、件の哨戒機が掴んだ情報を十全に生かせる態勢が自然と立ち上がるとは考えにくい。もし件の哨戒機を十全に活用しようとすれば、今後、恐らくは情報システムの更新や新規構築を含んだ大きな案件が発生する筈である。
今回の取引金額はそこまで含んだものなのかどうか、気になる所ではある。

もう一つの狙いは、上記記事にもある様に対中牽制であろう。そもそもインド洋周辺国には、インドが最新鋭の対潜哨戒機で対抗しなければならないような戦力を展開している国は殆ど無い。
まずインドと抜き差しならない対立を抱えるパキスタンは、フランスから技術供与を受けて潜水艦戦力の整備を行っているが、同国は伝統的に陸軍の発言力が大きく、資源は陸軍最優先で配分されがちなことから、海洋戦力の拡充は質・量の両面で緩やかなペースに止まっている。
イランを見れば、ロシアからキロ級潜水艦を導入したり魚雷や機雷の研究開発に努める等、同国も海洋戦力の充実に動いてはいるが、それは主にペルシャ湾・ホルムズ海峡の支配・守備に重きを置いたものであり、現状では海洋戦力をインド洋に広く展開させようという意図は薄いと考えられる。
スリランカやミャンマー、バングラデシュ、セーシェル、マダガスカルといった国々は、資金面や政治的な不安定、人材の不足といった問題を抱えており、近い将来に強力な外洋艦隊を擁するようになるとは考えにくい。
ただ中国のみは、中東ペルシャ湾から自国沿海部に至るオイルルートの安全をあまり米国に依存することなく自力で確保したいと考えており、イランやパキスタン、そしてミャンマー等のインド洋周辺国との関係強化や軍事施設の設置を着々と行っている。

この中国の動きは、インド洋の盟主を自認し、同時に自身もまたペルシャ湾の石油を必要とするインドにとって、自国の地域的な影響力やオイルルートの安全を脅かされかねない懸念材料である。
また、米国は日本や韓国、台湾に対して中東からの石油航路の安全を独占的に提供することで、これら経済的に有力な東アジア諸国をジュニア・パートナーとして従えることに成功しているが、中東からインド洋を経て東アジアに至るオイルルートで中国の存在感が高まることは、米国による安全供給の独占崩壊、ひいてはジュニア・パートナーたちの米国離れ(それはほぼ中国接近とイコールである)を招きかねないものである。
従って、インド洋における中国の影響力拡大防止で利害の一致した米印は、最新鋭対潜哨戒機の売買契約締結という軍事関係の強化を表に出すことで、中国に強い牽制のメッセージを送ったのだろう。
そして、ここ数日の南シナ海における米中の悶着が、今回の米印間の契約成立の背中を強く押したであろうことは想像に難くない。

同日、台湾が米国にF-22やF-35といった新鋭ステルス戦闘機売却を求める意向を示したが(出典:共同通信)、これも南シナ海や東シナ海、日本列島近海で活動を活発させる中国に対し、南シナ海での米中間悶着にことよせて投げた牽制球とみてよいだろう(恐らく、台湾政府自身も米国が本気でステルス戦闘機を売ってくれるとは考えていないだろう。米中間で波乱が生じたことに乗じて対米接近・軍備拡充の姿勢を示すことで、勢いに乗る(図に乗る)中国を牽制できればよいというのが台湾政府の考えではないか)。

米国債の消化等、金融市場ではにこやかに握手して協力関係を強調しながら、安全保障の分野では互いに鉄拳や手札の多さを露骨に或いは隠微に誇示して牽制し合う、そんな米中両国の関係は実にスリリングで興味深い。
( ̄w ̄)

2009年3月16日月曜日

第二百三十二段 南シナ海を制する者はアジアを制す

最近、南シナ海に不穏な空気が漂い始めている。直接的な発端は、去りし3月10日に海南島から南120kmの海上にて米海軍所属の海洋調査船が中国の艦船5隻に取り囲まれ、異常接近等の航行妨害を受けたことである(出典:日経ネット)。そこから本日3月16日に至るまでの出来事を以下にまとめてみた。

<南シナ海を巡る各国の動向>
・3月8日 :中国艦船、南シナ海で米海軍の海洋調査船「インペッカブル」に妨害行為。
(出典:日経ネット)
※一説に件の海洋調査船は、艦船(潜水艦含む)のスクリュー音採取を行っていたという。
 中国艦船の態度を見ると、よほど聞かれたくないものがあったように見えて仕方がない。

・3月9日 :米国大統領報道官、中国の南シナ海における行為を非難。
(出典:日経ネット)
・3月10日:中国外務部報道官、米海軍調査船は「中国の排他的経済水域を侵犯」していたと非難。
(出典:日経ネット)
・3月11日:アロヨ・フィリピン大統領、南シナ海上の南沙諸島の一部を自国領とする法律に署名。
(出典:
日経ネット)
※正直、フィリピンのこの行動は、アメリカの尻馬に乗った行動にしか見えない。

・同日  :米海軍調査船「インペッカブル」、護衛に派遣されたイージス駆逐艦と合流。

(出典:
日経ネット
・3月15日:中国、最大の漁業監視船「中国漁政311号」を南シナ海上の西沙諸島海域に展開。

(出典:
日経ネット
※「漁業監視船」とは言うが、当該船舶は軍艦を改造したものであると
のこと。
 また、旧ソ連が冷戦時代に世界の海で大型トロール漁船に偽装した情報収集船を展開
 させていたことを考えると、多分この「中国漁政311号」も「漁業監視」に止まらない、それなり
 に高度な情報収集能力を有し
ていると考えられる。

そもそもこの南シナ海という海域は二つの重要性から、各国が権益を主張して睨み合いを続けるアジアの隠された火薬庫なのだ。

では南シナ海の有する二つの重要性とは何か? 

まず一つ目の重要性は海洋資源である。漁業資源は言うに及ばず、南シナ海域に浮かぶ二つの諸島、西沙諸島、南沙諸島(共に掲載地図上に赤破線で囲った一帯)の地下には、商業ベースに乗るだけのまとまった石油・天然ガス埋蔵量の存在が有望視もしくは確認されており、それを狙って中国、台湾、ヴェトナム、フィリピン、マレーシア等が、西沙諸島、南沙諸島について領有権を主張するなどして睨み合いを続けている(たまに小規模な実力行使が行われたりもする)。

しかし、それ以上に重要なのが海路としての重要性である。掲載地図でオリーブ色の実線で囲んだ部分が大体「南シナ海」と呼ばれる海域に該当するのだが、この南シナ海域には、世界でも有数規模の経済力を有する日本、韓国、台湾、中国沿海部といった東アジア経済圏が中東から石油や天然ガスを輸入するための海路、そして東アジア経済圏で生産された製品を欧州等に輸出するための海路が通っている。
従って、当該海域が単一の勢力の支配下に置かれた場合、東アジア諸国は石油を買うにしても物を売るにしても、南シナ海の支配者の顔色を窺いながら生活することになる。もし仮に、日本なり韓国なりがその支配者の逆鱗に触れて南シナ海封鎖の憂き目にあった場合、石油・天然ガスは入荷せず、製品も売りに行けなくなるという悲惨な状態を覚悟せねばならなくなるのだ(かなり極端な例ではあるが・・・・)。

そんな海域で発生したのが、今回の米国と中国の一悶着である。米国は国債消化やイラン、北朝鮮問題で中国の協力を必要としている。
しかし、もしそれに気を取られて南シナ海を中国に譲り渡すようなことになれば、東南アジア諸国は挙って中国を新たな主として仰ぐことになるだろう。
東南アジアが中国に靡けば、北方、西方の大陸側と南方海域の3方向から圧力を受けることになる台湾が中国に降ることになるだろう。
そして台湾が中国に降れば、中国海軍の潜水艦は西太平洋における行動の自由を大きく拡大することになる。その結果、海上輸送に多くを依存すると共に”緩衝地帯”北朝鮮を挟んで陸上からも中国の存在を意識せざるを得ない韓国もまた中国に降るだろう。
日本では、まず最初に拡大中国との最前線となる沖縄に動揺が見られることになるだろう。もし沖縄を日米同盟の支配下に置き続けられれば日本は中国に対する独立を維持しようが、そうでなければ沖縄、日本の順に中国に呑み込まれることになるだろう。

2009年3月9日月曜日

第二百三十段 イランはミサイルを撃ち、リビアは米国と武器商談のこと

3月9日、中東地域で注目すべきニュースが二つあった。一つは「イラン、新型ミサイル実験に成功」というニュース(出典:日経ネット)、もう一つは「米国、リビアへの防衛機器輸出を検討中」というニュースである(出典:ロイター

まずイランのミサイル実験だが、オバマ政権成立後の米国では対イラン姿勢が軟化しつつあり、それに歩調を合わせるようにイラン側もアフガン情勢等で米国に協力する素振りを見せるといった具合に、両国関係に比較的穏和な空気が流れ始めた矢先の出来事である。
何故イランは、今このタイミングで米国やその中東におけるパートナーたるイスラエルを挑発するような挙に出たのだろう?

点額法師の拙い脳みそで考え付く可能性は三つ。

イラン周辺地図(GoogleMapsより)
一つ目の可能性は、イラン政府の国内対米強硬派に対する配慮である。前述したように最近は米国・イラン関係は比較的落ち着いた状態にある。かといってイラン政府が単純に米国・イラン関係正常化に舵を切った場合、国内の対米強硬派から強い抵抗に遭う可能性がある。そこで米国・イラン関係が比較的安定しているこの時期に敢えてミサイル実験を行うことで、イラン内部の対米強硬派に対し、現政権が単純に米国にすり寄っているわけではないことを示したと考えられる。もしこの推論が正しければ、今回のミサイル実験でイラン現政権が対米強硬派にそれなりの義理を示した形となるため、逆説的ではあるがイラン側としては対米関係の改善に向けて動き出し易くなったと言えるのではないか。
二つ目の可能性は、有事における米軍の即応体制の実地検分である。視線をユーラシア極東部まで延ばすと、この地域では北朝鮮がポスト金正日体制に向けて動揺を見せ、それと関連してか「衛星の打ち上げ」宣言や定例的な米韓合同軍事演習に対して軍を臨戦態勢下に置くといった具合に緊迫した情勢が続いている。イラン政府はそんな状況下でミサイル実験を通じて中東の地に小波を起こすことで、朝鮮半島と中東で同時に有事が発生した場合の米軍の動きを探ろうとしているのではないか。
三つ目の可能性としては、周辺勢力への牽制である。最近米国がシリアとの関係改善に動き、英国がレバノン・シーア派組織ヒズボラと接触を始め、トルコ仲介でイスラエルとシリアとの間で和平交渉が再開されようとしている(出典:Novosti)。これらの動きがイランの目に「イラン孤立化と包囲網の形成」を目指した動きと映っても不思議はない(当ブログ二百二十六段参照)。そこでミサイル実験を通じてイランの軍事力を誇示することで、米英等に対しては「うちのシマに手を出すな」というメッセージを、シリアやヒズボラに対しては「我が国を裏切ったら、どうなるかわかるよな?」というメッセージを送ったのではないか。
点額法師としてはイランの狙いは第一の可能性3割、第二の可能性4割、第三の可能性3割といった所ではないかと考えているのだが、果たして・・・・・?

次に「米国が対リビア武器輸出を検討」というニュースだが、かつてのカダフィ大佐の反米スタンスとパンナム機爆破事件に代表される各種テロ事件との繋がり、そしてそれに対する米国レーガン政権のカダフィ大佐殺害を目的としたトリポリ空爆(因みに、この時の空爆ではカダフィ大佐の養女が死亡している)を知る人間にとっては、真に隔世の念を禁じえないニュースである。

しかし、何故この時期になって米国はリビアとの防衛協力関係構築に動き出したのだろう?

リビア周辺地図(GoogleMapsより)
ここで目をリビア周辺に転じれば、リビアの東、エジプトは高齢の強権的支配者ムバラク大統領がいつ「御万歳」を迎えてもおかしくない一方で、その後継者として確たる人物が見えてこない。そしてインフレや長年のムバラク大統領の強権支配の下で国民の間の反政府感情はかなり高まっていると言われる。
リビアの南東、スーダンを見てみれば、欧州をバックとする国際刑事裁判所がバーシル・スーダン大統領に対してダルフール紛争等における「人道上の罪」等で逮捕状を発布し、反バーシル派が動くにあたって格好の大義名分を提供してしまった。現状で国際刑事裁判所の悪乗り(さもなくば一流のブラックジョーク)に追随して行動を起こす勢力は現れていないようだが、それもいつまでのことか分からない。
つまり、リビアに隣接する北アフリカの主要国二つが、いつ動乱が発生してもおかしくない状況下に追い詰められているのだ。

このことを踏まえて米国の対リビア武器輸出の狙いを推察するに、エジプトやスーダンで動乱が発生した場合、リビアを地域のパートナーとすることで事態の速やかな打開を狙うと共に、仮にエジプトやスーダンで強硬な反米政権が成立した場合は、リビアにその牽制役になってもらう、そのための一里塚としての意味合いがあるのではないか。

2009年3月8日日曜日

第二百二十九段 音速の遅い読書『迎撃のスホーイ』上下

今回の音速の遅い読書で取り上げるのは、以下の作品。

迎撃のスホーイ〈上〉 (文春文庫)
リシャール ケルラン
文庫
文藝春秋
発売日 1990-01

アマゾン通販


迎撃のスホーイ〈下〉 (文春文庫)
リシャール ケルラン
文庫
文藝春秋
発売日 1990-01

アマゾン通販



要はこの本、米ソ冷戦時代を舞台としたスパイ小説である。

あらすじは以下の通り。
1983年8月のある日、米国バージニア州ラングレーのCIA本部に、ソ連邦首都モスクワの協力者から「最新鋭原潜の設計責任者が米国への亡命を望んでいる」という機密情報がもたらされる。
CIAは、件の設計責任者の亡命を成功させるために直ちに対応チームを発足させる。一方のソ連側では、亡命工作の存在に気づいた軍情報部GRUが密かに動き出す一方、何も知らされないKBGはGRUの行動に不信を募らせ、GRUの監視に動き出す。
そして、一人の技術者を巡ってソ連の大地を舞台に展開されるCIA、GRU、KGBの三つ巴の諜報戦は、最終的にある一つの事件へと結び付いて世界を震撼させることになる。
果たして技術者の亡命は成功するのか? そしてCIA、GRU、KGBの三つ巴の諜報戦の末に発生した事件とは何か?

この本の著者はリシャール・ケルランという人物なのだが、フランス人で国際機関勤務であるということ以外の情報はすべて伏されている(もっと言えば、「リシャール・ケルラン」という名称自体、ペンネームや偽名なのか、それとも本名なのかすら定かではない)。

そんな実にミステリアスな人物が上梓した当作品の読み所は三点。
まず一点目は、亡命しようとする技術者(とその支援者たち)と逃すまいとするGRUとが、ソ連邦という舞台で演じる息詰まる追跡劇。
二点目は、ソ連を遠く離れたCIA本部で、関係者たちが入手した情報のピースを組み合わせながら、亡命作戦を成功に導くためのビッグ・ピクチャー構築に脳髄をフル回転させて挑む様子。
三点目は、作戦とは全く関係ない二組のカップルの「日常」が、原潜技術者の亡命作戦といういわば「非日常」と徐々に、徐々に距離を縮めていき、やがて重なり合うまでの過程である。

特に三点目については、何処までも穏やかな風景が広がる中、ふと足元を見れは底の知れない深淵が口を開けているが、それに呑み込まれるまでは誰もその存在には気付くことができない。そんな怖さというかスリル感を感じさせてくれる。

個人的には勧善懲悪臭を多少なりとも感じてしまうトム・クランシーの著作よりも、当作品の雰囲気というか味わいの方が好みであったりする(いや、ジャック・ライアンシリーズも大好きではあるけれど・・・・)

第二百二十八段 妙に可愛らしい題字にて候

当ブログ二百十四段でも触れましたが、人間というものは、万事の判断において外見や文字面に極めて左右され易い生物に御座います。ですから、古来より天下国家のことについては改まった言葉と四角ばった堅い印象を与える活字や書体を用いて読む者の気を引き締め、私事を記述する際は俗語を取り入れ、丸みを帯びた文字を使用して読む者に余計な緊張感を与えないようにしてきたものに御座います。

では、以下の題目は読む者に如何なる印象を抱かせるので御座いましょうや?

A:「厳重注意☆2」をみてくれ。こいつをどう思う?
B:・・・すごく・・・キャピキャピしいです・・・・

点額法師には、「厳重注意」という言葉の重みを☆マークが心地よいほどに粉砕しているように感じられます。いや、単純に破壊しているのではない! 言葉の重々しさを取り払った上に新たに「らき☆すた」にも一脈通ずる軽やかさと愛らしさを建立しているとも申せましょうぞ!!∑o(□ ̄)

字面だけで申さば、「厳重注意」というしかめっ面の60歳代男性からくどくどしくお小言を頂戴するという何があっても全力でNO THANK YOUな出来事が、☆マーク一つ加わって「厳重注意☆2」となることで、フラグを建てた者のみに許される青春の甘酸っぱいイベントを期待させてくれるものへと変貌を遂げているので御座います。 (〃∀〃)=3

そもそもフラ(以下、規制により削除)

それにしても、何故このような題字表示になったものか? 点額法師がサイト閲覧に使ってるブラウザの文字コード設定がおかしいのか、それとも掲載者が何らかの意図ありて☆マークを使用したものか、原因はとんと分かりませんが、妙に心に残る題字であったため、ここに取り上げるものです。

それにしても、本当にギャルゲー、エロゲーのタイトルで「厳重注意☆2」ってありそうだな。

2009年3月6日金曜日

第二百二十六段 英国、ヒズボラとの関係改善に動く

唐突ではあるが、英国という国を鑑みれば、覇権国米国の同盟国、EUに於いては独仏と共に大きな影響力を振るい、かつて七つの海に君臨した大英帝国の衣鉢を継いで世界各国の政治・経済情報を豊富に保有し、首都ロンドンは米国のニューヨークと並ぶ金融市場の中枢、そして英国内に住むイスラム教徒の多さは欧州でも有数・・・・といった具合に実に複雑多面な表情を有しており、それら各要素が外交政策に(比較的)上手く反映されていることに気付かされる。

そんな外交巧者の英国が、ヒズボラとの関係改善に動いているらしい。BBCは以下のように伝えている。

UK restores links with Hezbollah

The move follows "positive political developments" in Lebanon, officials from the UK Foreign Office said.

It comes about 10 months after Hezbollah signed a unity accord in Lebanon and joined the government.

Only last year, the government put Hezbollah's military wing on a list of proscribed organisations over its alleged training of insurgents in Iraq.

"We are exploring certain contacts at an official level with Hezbollah's political wing, including MPs," said a spokesperson for the Foreign Office.

The spokesperson said the UK was doing "all it can" to support Lebanon's unity government, of which Hezbollah's political wing is a part.

"Our objective with Hezbollah remains to encourage them to move away from violence and play a constructive, democratic and peaceful role in Lebanese politics, in line with a range of UN Security Council Resolutions."

The spokesperson said Britain would continue to have no contact with Hezbollah's military wing. (出典:BBC


このヒズボラという組織には二つの顔がある。一つは反米・反イスラエルを旗印に掲げてテロや武力闘争を行う武装組織・テロ組織としての顔(やることがマスコミの注目を浴び易いので、一般的な認識としてはこちらの顔が一般的)、もう一つはレバノンに住むイスラム教シーア派住民の利益代表団体としての顔である。
従って、アル・カイーダのような地域住民との直接的な利害関係を有しない国際的なテロ組織とは些か異なり、ヒズボラに対しては、レバノンにおけるヒズボラ(そしてその背後にいるシーア派住民)の政治的・経済的利益を取引材料として、より穏健な行動を採るように働きかけることが可能である(多くの困難を伴うにせよ)。
また、ヒズボラに対するイランの影響力の強さが広く認められているが、一方で、レバノン南部に拠点を置くヒズボラとテヘランに鎮座するイラン政府との間で戦略的利益が必ずしも一致するとは限らない(極端な話、レバノン全体が無人の荒野と化すようなシナリオについて、イランはそれがイランの利益に結びつくなら反対はしないだろうが、ヒズボラとしてはそんなイランの意向に従う訳にはいかないだろう)。

それを踏まえた上で、最近、米国がシリアとの関係改善に向けて積極的に動いていることと関連させて今回の英国の動きを考えるなら、その狙いは二つあると考えられよう。
一つ目は、テヘランからバグダッドとダマスカスを経てベイルートに至るシーア派地域に楔を打ち込むことで、同地域において一方的にイランのリーダシップが確立されることを防ぐ狙い。
二つ目は、ハマスと米英との関係改善である。PLO主流派のファタハを凌ぐパレスチナ住民の支持を背景にガザ地区を実効支配するハマスを徒に無視・敵視しては、所謂「中東和平」が安定したものとして成立するとは思えない。そこで、事前に長年ハマスのパトロンであったシリアやハマス同様に反米・反イスラエル闘争を展開してきたヒズボラに対する米英の関係改善の意向を示すことで、米英はハマスが交渉に応じやすい雰囲気を醸成しようとしているのではないか(仮にハマスが米英の呼びかけを無視すれば、最悪シリアやヒズボラとの関係も難しくなろうし、イスラエルの攻撃についてもより大義名分が立ち易くなろう)。

最近の中東情勢を見れば、イランと湾岸諸国やトルコとの関係改善、湾岸諸国の反イスラエル姿勢の顕在化、トルコとイスラエルの関係悪化、ロシアのシリアや イエメンにおける軍事基地設置の動きといった具合に、従来の米国及び親米アラブ諸国とイランとの対立を主軸としたものとは違う、新たな地域情勢が姿を現しつつある。
その中で、従来の文脈では考えにくかった諸国・諸勢力間の連携や決裂が今後も進んでくることが予想される。今回の英国が投じた一石は、そんな中東合従連衡を更に加速させる働きがあろう。

実際、そんな動きがすでに顕れている。3月6日、地中海の入口に位置する北アフリカのモロッコが、2月にイランのナテクヌーリ元国会議長が「バーレーンはかつてイランの14番目の州だった」と発言したことに抗議し、イランとの国交断絶を宣言したのだ(出典:共同通信)。
当のバーレーンは件の発言についてイランに抗議こそしているものの、2月27日には両国が友好関係強化を宣言している(出典:Gulfnews)。当事者間でそれなりに落着した問題を第三者が騒ぎたてる時、その第三者の目的は件の問題の解決とは全く別の所にあることが多い。
モロッコの今回の動きは、米国の対シリア関係改善や英国の対ヒズボラ関係改善といった動きが持つイラン牽制という側面に呼応し、よって米英との関係を強化しようという考えに起因するものと考えられる。

さて、次はどの国の動きが表沙汰になるのだろうか? 個人的には、ポスト・ムバラクの時代が迫りつつあるエジプト、域外国ではあるものの、中東で存在感を高めるトルコとの対立を抱えるギリシャやキプロスの動きに注目しているのだが・・・・・。

2009年3月5日木曜日

第二百二十五段 スーダンを指して中国を罵る?

国際刑事裁判所(ICC)は、同国のダルフール紛争における「戦争犯罪」等で、スーダンのバーシル大統領に対して現役の国家元首に対するものとしては初めての逮捕状を出した。欧米と激しく対立してきたリビアのカダフィ大佐とバーシル大統領のあまりの明暗の分かれ方、「中東民主化ドミノ」という手前勝手な理想論を掲げてイラクの独裁政権を葬った米国と今回の決定を下したICCとの思考回路の強い親和性、その他色々な考えや思いが頭に浮かぶが、ここで注目したいのが「バーシル大統領への逮捕状発布」と欧州・中国関係、そして日本への影響である。

そもそもアフリカの政治経済を見てみれば、アフリカ諸国は1960年代に欧州から独立して以後も旧宗主国たる欧州諸国が強い影響力を及ぼしてきた。特に1991年にアフリカにおける欧州のライバルであったソ連が崩壊したことで、アフリカにおける欧州の影響力は盤石のものになったと思われた。しかしその欧州のアフリカにおける新たなライバルとして台頭してきたのが、改革・開放によって経済力を増大させた中国である。

バーシル大統領下のスーダンは豊かな農地や原油等の地下資源を保有していたものの、同国西部ダルフール地方や南部地域における内乱で政府軍やそれを支援する民兵組織によって虐殺やその他多くの非人道的行為が行われたと欧米のマスコミが大々的に報じたことによって、人権や民主主義を外交の旗印に掲げる欧州諸国からの投資が絶望的な状況となっていた。
その間隙を衝いて、スーダンに接近して多大な投資を行ってきたのが中国である。中国は、外交にあたって人権や民主主義といったお題目を気にしなくとも良い利点と経済発展上の必要性から、スーダンにおいて最大規模の資源権益保有国となることに成功した。そしてスーダン以外のアフリカ諸国も、民主化や統治改善にうるさい欧州よりも資源権益さえ提供すれば政治に口出しすることなく支援してくれる中国にすり寄るようになっていった。

以上を踏まえて考えるならば、今回の逮捕状発布は、巨大な富と「内政不干渉」でアフリカ諸国に影響力を強める中国に対し、アフリカ諸国の旧宗主国たる欧州が投げた強めの牽制球と言えなくもない。ただし、この牽制球がバーシル政権崩壊の引き金になりかねない曲球であることは論を俟たない。そして仮にバーシル政権が崩壊した場合、「次」の政権で各地域紛争等の問題が改善される保証が全くないことには注意が必要だろう。最悪、タリバン政権崩壊後のアフガニスタンやアイディード将軍勢力排除後のソマリアのように、スーダンもまた中央政府不在の群雄割拠状態に陥り、周辺国への更なる難民の流出、スエズ運河を通じて地中海とインド洋を結ぶ水路となっている紅海の治安悪化といった様々の害悪を生じかねないことも考えられる。

また、資源という要素を除いて考えたとしても、バーシル政権が各紛争地域でとった行動について「戦争犯罪」や「人道上の罪」が適用されるというICCの考え方は、(スーダンほどではないにしろ)国内に少数民族問題を抱える中国にとって決して好ましいものとは言えないだろう。何といっても現在の国家主席は、チベットの大規模デモ(1989年)を剛腕でねじ伏せたことで出世の糸口を掴んだ人物なのだ。

従って、中国から見れば、今回のICCの決定は「欧州が本丸・中国を攻める前に、中国と関係の深いスーダンを血祭りに上げて外堀を埋めとしてようとしている」と映っても不思議はない。そしてチベット問題や人権問題等で最近ギクシャクしがちな欧州・中国関係が、今回の一件で更に悪化する可能性が考えられる。そのような事態は日本にとって好悪両面が存在しよう。

<好影響>
1.欧州と中国の対立が激化することで欧州の対中武器禁輸解除が遅延。
2.欧州と中国の対立が激化することで両勢力における日本の存在感が向上。

<悪影響>
1.スーダンを始めとしたアフリカの資源権益から締め出された中国の活動方向が東シナ海や尖閣諸島に向けられる可能性。
2.欧州への対抗を主目的とした米中連携の成立とそれに伴う米中にとっての日本の存在感の低下。

3.ポスト・バーシル政権の統治失敗やバーシル派勢力の反発といった地政学リスクの原油市場への反映。


折しも、2月末から3月6日にかけて、尖閣諸島を巡る日米の政策当局者間の認識の相違を窺わせるニュースがマスコミで報じられているが、それは「バーシル大統領への逮捕状発布」を号砲として欧州によるアフリカからの押出しを喰らった中国が東シナ海や尖閣諸島に向かう可能性、そして対欧州戦略における中国との連携といった点について、日米間で温度差があることを示しているのかもしれない。

2009年3月2日月曜日

第二百二十四段 ペルシャ湾のペルシャ化?

・自然は真空を嫌う。
―――アリストテレス

冒頭の言は、不思議なことに自然科学の分野のみならず、人間社会の権力政治についても疑問の余地なく当てはまる言葉である。即ち、何らかの事情で生じた権力の空白は、必ずそれを埋め合わせる新たな勢力の勃興を誘発する(それが単一勢力の独占か、複数勢力の分割によるかは別として)。

そして、中東の地理的中心にして世界第二位の原油埋蔵量を誇るイラクにおいて、フセイン政権崩壊に続く2度目の権力の空白が生じようとしている。それはオバマ大統領が2月27日に発表した「2010年8月までの米軍大規模撤退」である。そもそも民族や宗教、産油地域と非産油地域といった幾重もの断層が走るイラクが、1932年のイギリスからの独立以来、曲がりなりにも統一国家としての態をなしてこれたのは、一重に王制、そしてバース党独裁政権の軍と秘密警察を駆使した強権支配によるものであった。

その統一イラクの存在に多大な「貢献」をしてきたバース党独裁政権を弊履の如く投げ捨てた米国は、イラクの地に強固な政治勢力を育成することに成功しないまま、手を引こうとしている。その結果生じる弱く不安定なままで放置されたイラクの新たな後見人として有力視されているのが、イラク領内人口の過半と宗派を同じくするイスラム教シーア派の大国イランである。

ここで中東域内におけるシーア派の分布を見れば、その分布は、イランが手中におさめつつあるイラク(特に南部)以外にオマーンやバーレーン、クウェート、サウジ東部といった所謂「湾岸地域」にも広がっている。もしイラクに対するイランの宗主権が明確なものとなれば、ドミノ倒しのように、これら湾岸諸国において親イラン政策が採用され、或いは長年スンニー派政権下で冷遇されてきたシーア派の分離独立運動が活発化し、結果として米国を中心とした西側諸国はカタールやオマーン、バーレーンの軍事基地に代表されるペルシャ湾の拠点を失い、ペルシャ湾が文字通りペルシャ(イラン)の湾となる事態も想定されよう。

既に先頃のガザ紛争で対米・対イスラエル批判を強めてきたバーレーンは、以下のGulfnewsの記事に見られるように、イランとの関係改善に乗り出して来ている。

Iran, Bahrain declare 'good'

neighbourly relations

Tehran: The foreign ministers of Iran and Bahrain said on Friday they have sorted out a diplomatic row caused by a senior Iranian cleric's remarks, official news agency Irna reported.

Iranian President Mahmoud Ahmadinejad, who met with visiting Bahraini Foreign Minister Shaikh Khaled Bin Ahmad Al Khalifa, called for "more closeness and cooperation between the two nations," state television reported.

"This friendship and closeness will not leave any opportunity for the mischief of evil people," Ahmadinejad said.

Delivering a message of "friendship and brotherhood" from King Hamad to Ahmadinejad, Al Khlaifa stressed the "importance of expansion of relations with Iran for Bahrain's government and nation."

The row had been sparked off by Ali Akbar Nateq-Nouri, one of the advisers of Iran's Supreme Leader Ayatollah Ali Khamenei, who reportedly said that Iran still had sovereignty over Bahrain.

Iran's foreign ministry said Nateq-Nouri's remarks were misinterpreted.(出典:Gulfnews


このように、遠くない将来、地域構造に大きな変化が発生する可能性のあるペルシャ湾岸地域だが、そこに原油の多くを依存する日本は、今後、どのような対ペルシャ湾岸政策を採っていくのだろう? 将来の勝ち馬に乗るべくイランとの関係改善を急ぐのか? それとも米国やイランの一方的な勢力拡大を望まないトルコ、サウジ、パキスタン等と連携しながらペルシャ湾のペルシャ化を防止する側に回るのか? そして日本同様にペルシャ湾の石油を必要とする中国はどう動いてくるのか?
色々と興味は尽きない。