2009年3月16日月曜日

第二百三十二段 南シナ海を制する者はアジアを制す

最近、南シナ海に不穏な空気が漂い始めている。直接的な発端は、去りし3月10日に海南島から南120kmの海上にて米海軍所属の海洋調査船が中国の艦船5隻に取り囲まれ、異常接近等の航行妨害を受けたことである(出典:日経ネット)。そこから本日3月16日に至るまでの出来事を以下にまとめてみた。

<南シナ海を巡る各国の動向>
・3月8日 :中国艦船、南シナ海で米海軍の海洋調査船「インペッカブル」に妨害行為。
(出典:日経ネット)
※一説に件の海洋調査船は、艦船(潜水艦含む)のスクリュー音採取を行っていたという。
 中国艦船の態度を見ると、よほど聞かれたくないものがあったように見えて仕方がない。

・3月9日 :米国大統領報道官、中国の南シナ海における行為を非難。
(出典:日経ネット)
・3月10日:中国外務部報道官、米海軍調査船は「中国の排他的経済水域を侵犯」していたと非難。
(出典:日経ネット)
・3月11日:アロヨ・フィリピン大統領、南シナ海上の南沙諸島の一部を自国領とする法律に署名。
(出典:
日経ネット)
※正直、フィリピンのこの行動は、アメリカの尻馬に乗った行動にしか見えない。

・同日  :米海軍調査船「インペッカブル」、護衛に派遣されたイージス駆逐艦と合流。

(出典:
日経ネット
・3月15日:中国、最大の漁業監視船「中国漁政311号」を南シナ海上の西沙諸島海域に展開。

(出典:
日経ネット
※「漁業監視船」とは言うが、当該船舶は軍艦を改造したものであると
のこと。
 また、旧ソ連が冷戦時代に世界の海で大型トロール漁船に偽装した情報収集船を展開
 させていたことを考えると、多分この「中国漁政311号」も「漁業監視」に止まらない、それなり
 に高度な情報収集能力を有し
ていると考えられる。

そもそもこの南シナ海という海域は二つの重要性から、各国が権益を主張して睨み合いを続けるアジアの隠された火薬庫なのだ。

では南シナ海の有する二つの重要性とは何か? 

まず一つ目の重要性は海洋資源である。漁業資源は言うに及ばず、南シナ海域に浮かぶ二つの諸島、西沙諸島、南沙諸島(共に掲載地図上に赤破線で囲った一帯)の地下には、商業ベースに乗るだけのまとまった石油・天然ガス埋蔵量の存在が有望視もしくは確認されており、それを狙って中国、台湾、ヴェトナム、フィリピン、マレーシア等が、西沙諸島、南沙諸島について領有権を主張するなどして睨み合いを続けている(たまに小規模な実力行使が行われたりもする)。

しかし、それ以上に重要なのが海路としての重要性である。掲載地図でオリーブ色の実線で囲んだ部分が大体「南シナ海」と呼ばれる海域に該当するのだが、この南シナ海域には、世界でも有数規模の経済力を有する日本、韓国、台湾、中国沿海部といった東アジア経済圏が中東から石油や天然ガスを輸入するための海路、そして東アジア経済圏で生産された製品を欧州等に輸出するための海路が通っている。
従って、当該海域が単一の勢力の支配下に置かれた場合、東アジア諸国は石油を買うにしても物を売るにしても、南シナ海の支配者の顔色を窺いながら生活することになる。もし仮に、日本なり韓国なりがその支配者の逆鱗に触れて南シナ海封鎖の憂き目にあった場合、石油・天然ガスは入荷せず、製品も売りに行けなくなるという悲惨な状態を覚悟せねばならなくなるのだ(かなり極端な例ではあるが・・・・)。

そんな海域で発生したのが、今回の米国と中国の一悶着である。米国は国債消化やイラン、北朝鮮問題で中国の協力を必要としている。
しかし、もしそれに気を取られて南シナ海を中国に譲り渡すようなことになれば、東南アジア諸国は挙って中国を新たな主として仰ぐことになるだろう。
東南アジアが中国に靡けば、北方、西方の大陸側と南方海域の3方向から圧力を受けることになる台湾が中国に降ることになるだろう。
そして台湾が中国に降れば、中国海軍の潜水艦は西太平洋における行動の自由を大きく拡大することになる。その結果、海上輸送に多くを依存すると共に”緩衝地帯”北朝鮮を挟んで陸上からも中国の存在を意識せざるを得ない韓国もまた中国に降るだろう。
日本では、まず最初に拡大中国との最前線となる沖縄に動揺が見られることになるだろう。もし沖縄を日米同盟の支配下に置き続けられれば日本は中国に対する独立を維持しようが、そうでなければ沖縄、日本の順に中国に呑み込まれることになるだろう。