2009年3月22日日曜日

第二百三十六段 日本列島という蓋

小沢民主党党首の「第七艦隊発言」が一時波紋を呼んだ。各マスコミの報じた発言の要旨としては「現在米国は日本国内に空陸海海兵の四軍を展開しているが、実際に日本周辺の紛争抑止力として機能しているのは第七艦隊の海軍力であり、他の三軍を日本国内に展開させておく必要はないのではないか?」というものだったかと思う。

その発言の当否はひとまず置くとして、考えると何故米国は陸海空・海兵の四軍を日本列島に展開させ、大日本帝国の残骸から急ごしらえで作り上げた日本国という国を代々守護してきたのだろう?

答えは、米国にとって日本列島はユーラシア東部の勢力が海洋に進出すること阻む格好の蓋であったからである。そこのことは、地図若しくは地球儀を見れば一層明確に浮かび上がってくる。

右に掲げたのが、グーグルアースより点額法師が作成した地図である。日本列島がユーラシア東部の蓋となっている様が窺えるかと思う。

また右記地図上、赤四角で示したのが在日米軍基地、黄色楕円で示したのが、現在日本が周辺国との間で所有権の係争を抱える地域となっている。
どれも綺麗にフィリピン・ルソン島からロシア・カムチャッカ半島を結ぶ線に沿って分布していることが確認できる。

これが示すことは唯一つ。現在日本国に所属している領域というのは、海上進出を図るユーラシア東部の勢力とそれを許さない勢力の角逐の舞台だということである。

繰り返しになってしまうが、日本列島というのはユーラシア東部の勢力にとって海上に備え付けられた巨大な「蓋」である。そして、米国は日本列島(およびその周辺)に巨大な軍事力を配備することによって、「蓋」を強力な「鉄蓋」としてユーラシア東部勢力の海洋進出を封殺してきたのだ。これが、米国が日本列島に陸海空・海兵の四軍を展開してきた根源的理由である。

一方、米軍の日本列島展開によって海洋進出を封殺されたユーラシア東部勢力、具体的にはソ連・ロシアや中国は、海上輸送の恩恵に与れないか、日本列島を支配下に置く勢力の認める範囲で海上輸送の恩恵に与るかの二択を突き付けられた格好となった。
別の言い方をすれば、海洋から隔離された広大な土地を持て余すか、相手に命綱を握られた状態で経済成長に邁進するかの二択を突き付けられたのだ。
結果、ソ連極東部は豊富な天然資源を有しながら海上からのアクセスがほぼ見込めなくなったことにより、演習場や核実験場、核兵器や強制収容所の配置場所以上の意義を持ち得ず、ソ連邦は極東部領土のポテンシャルを十分に生かせないまま、1991年に崩壊することとなった。
中国は毛沢東時代に大陸に引きこもる道を選んだが、それも「大躍進」や文化大革命の失敗によって頓挫し、鄧小平時代になって当面は米国海軍力の顔色を窺いながら海上輸送路にアクセスして経済発展を目指す道を選択して現在に至っている。

では、今後のユーラシア東部の蓋である日本列島に対する各国の姿勢はどうなるだろうか?

米国は、中国とロシアの少なくともどちらか一方が信用できる同盟国(若しくはそれに準じる存在)にならない限り、日本列島にまとまった軍事力を展開させ続けざるを得ないだろう。
ロシアは、オホーツク海に展開するSLBM原潜の安全を確保するため、日本海自や米海軍のオホーツク海展開に繋がりかねない北方四島(特に国後、択捉)の返還は頑なに拒み続けるだろう。一方で米国との決定的な対立を避け、シベリアの豊富な天然資源と海上輸送路を結合させることで自国の経済発展を目指すことになろう。
中国は、その目指す方向によって二つの道が考えられる。一つは自国の経済成長に専心し、東アジアにおいては米国主導の秩序を容認する場合である。この場合、中国の行動は現状維持的なものとなり、東アジア情勢は比較的安定的なものとなろう。もう一つが東アジアにおいて米国中心の秩序を中国中心の秩序に塗り替えようとする場合である。この場合、中国は自国の海軍力増強に加え、日本列島に対しては地政学的重要性が高く且つ反日反米感情の高い沖縄を狙って楔を打ち込み、南シナ海を押さえることによって朝鮮半島や台湾、日本列島に何時でも兵糧攻めを仕掛けられる態勢の構築を図ることになるだろう。それは周辺国との緊張・軋轢をもたらす可能性が高いと考えられる。

折しも、南シナ海では調査船問題で米中が睨み合う神経質な展開が続いている。この波は早晩東シナ海にも及んでくることが予想される。