2009年3月27日金曜日

第二百四十段 イラク、クルド人問題でトルコ支持を表明のこと

イラクがクルド人問題でトルコ支持を明確にしてきた。ロイターは以下のように伝えている。

イラク首相、クルド労働者党対策で

トルコに支援表明


[バグダッド 25日 ロイター] イラクのマリキ首相は、同国北部を拠点にトルコを攻撃しているクルド人独立派クルド労働者党(PKK)との戦闘でトルコを支援していくと約束した。

 国営テレビの録画インタビューが25日放映された。

 24日にはトルコのギュル大統領がイラクを訪問し、20年以上にわたるPKKの抵抗運動の終結に協力を要請した。米国と欧州連合(EU)はPKKをテロ集団とみなしており、トルコはイラクが鎮圧に尽力していないと批判していた。

 マリキ首相は「PKKはテロ組織であり、イラクとトルコの間に危機をもたらしてきた。この問題は終結させなければならない。われわれの意志は固い。(我が国に)テロ組織の居場所はない」と語った。

 23日には、自身もクルド人であるイラクのタラバニ大統領が、PKKに対し、武装解除するか、さもなければイラクを出国するよう通告。クルド人独立派に対するイラク指導者の発言としては、最も強い言葉のひとつとなった。(出典:ロイター

今回のイラク政府の発言の目的は二つあると思われる。一つは、PKKに厳しい態度を示すことで、彼らの聖域の存在を口実としたトルコのイラク北部地域に対する介入を防止すること。もう一つは、シーア派各勢力を通じて影響力を拡大させているイランに対し、中東の有力国たるトルコとの協力関係を強化することで戦略的なバランスをとること。以上の二点である。

そうなると、イランはイラク、トルコ両国から敵視されることになったPKKへの支援強化を通じて、イラクを巡るトルコとの代理戦争を活発化させるのだろうか?
個人的にはそうは考えていない。何故なら、現在のイラク政府もまたシーア派勢力主体で陰に陽にイランの影響下にあるからだ。そのような状況下、イラク政府がイランの意向を全く無視してトルコとの関係強化に動くとは考えにくいものがある。寧ろ、今回のマリキ・イラク首相発言に象徴されるイラク・トルコ関係の改善は、ある程度イランにとっても都合の良いものだと考える方が分かり易い。

ではマリキ首相発言の背後にある(かもしれない)イランの意図とは何だろうか?
ここで視点を湾岸地域に移して見ると、サウジやUAE等において今まで散々少数派の悲哀を味わされてきたシーア派の政治活動が活発化してきている()。また、UAEはトルコとの軍事協力強化で合意している(出典:Gulfnews)。

これらのニュースを傍証にイランの意図を推測すれば、イランは恐らくイラクにおいてはトルコとぶつかることはせず、寧ろ影響下のイラクにトルコとの友好関係をある程度深めさせてこれを緩衝地とし、自らのリソースをペルシャ湾・アラビア半島方面への勢力拡張に集中させようと考えているのではないだろうか?

つまり、イランは勢力拡大の尖兵として湾岸諸国で長年冷遇されてきたシーア派勢力に物心両面の支援を与え、これが湾岸諸国におけるシーア派勢力の活動活発化に繋がっている。
また、UAEがトルコとの軍事関係強化に動いたのも、イランの勢力拡大が進展しつつ現状を少しでも食い止めようとしての措置である(因みに、UAEは2008年に自国領において恒久的な海軍基地の設置フランスに認めている)。以上のように考えることができる。

では地域内での存在感を高めつつあるイランとトルコは、今後も上手く棲み分けていくことができるのだろうか? ムガル朝初代のバーブルは次のような言葉を残しているのだが・・・・。

神のしもべがパンの片方を食べれば、残りの半分をダルヴィーシュたちに与えるであろう。
しかし君主が一地帯の主権を握れば、彼が目指すのは別の地帯の征服のみである。

※この辺りの事情については、佐々木良昭氏のブログ「中東TODAY」が詳しい。