2009年5月3日日曜日

第二百六十五段 アルメニア外相、訪米のこと

南コーカサス諸国の中で唯一親露路線を明確にしている国アルメニアの外相が、5月3日~5日の予定で訪米するとの由。

ロシアの通信社Novostiは以下の様に伝えている。

Armenia foreign minister

to visit U.S. May 3-5

YEREVAN, May 2 (RIA Novosti) - Armenian Foreign Minister Eduard Nalbandyan is due to visit Washington on May 3-5 at the invitation of U.S. Secretary of State Hillary Clinton, Armenia's foreign ministry said on Saturday.

Clinton will hold talks with her Armenian counterpart on Monday to try and find a settlement to the long-running Nagorny Karabakh conflict and following a Swiss-mediated agreement on a "roadmap" between Yerevan and Turkey.

Armenia and Turkey reached an agreement April 23 on a "roadmap" aimed at normalizing bilateral relations, which have been virtually non-existent following a bitter row over the massacre of ethnic Armenians in Turkey in the early 20th century.

Clinton will also meet with Azerbaijani Foreign Minister Elmar Mammadyarov on Tuesday prior to talks between the Armenian and Azerbaijani leaders in Prague on May 7.

Earlier U.S. Deputy Assistant Secretary of State for European and Eurasian Affairs Mathew Bryza said that a resolution on Nagorny Karabakh was "possible in the next few months."

The border between Armenia and Turkey was closed in 1993 on Ankara's initiative following fighting between Armenia and Turkey's ally, Azerbaijan, over Nagorny Karabakh.

The disputed region has a majority Armenian population, but which is within Azerbaijan's borders, declared its independence form Azerbaijan in late 1991 and has been a source of conflict ever since.

Turkey has said it wants talks with Armenia to take place in parallel to Armenian-Azerbaijani discussions on the future status of the region.(出典:Novosti


記事で注目すべき点は、以下の通り。
・アルメニアのEduard Nalbandyan外相が5月3日~5日の予定で訪米する。
・月曜予定のクリントン米国務長官とアルメニア外相との会談では、ナゴルノ・カラバフ紛争  
 やトルコとの国境画定問題が主な議題となる見込みである。
・アルメニア・アゼルバイジャン両国首脳の会談が5月7日にプラハで行われる。
・クリントン米国務長官は、上記首脳会談に先立って火曜日にアゼルバイジャンの
 Elmar Mammadyarov外相とも会談する見込みである。
・米国務省の欧州・ユーラシア担当副次官補は、アゼルバイジャン・アルメニア間の長年の
 懸念材料であった「ナゴルノ・カラバフ紛争」で解決に向けた合意が今後数カ月のうちに
 成立するとの見通しを示した。

そもそもアルメニアが親露路線を採っているのは、長年対立してきたアゼルバイジャンやトルコが親欧米外交を採ってきたことへの対抗策(アゼルバイジャンとは所謂「ナゴルノ・カラバフ紛争」を戦い、トルコとは国境問題に加えて所謂「アルメニア人虐殺問題」で対立)。アルメニアは対立するアゼルバイジャンと違って自国内にエネルギー資源を産出しないことから、電気や化石燃料の供給をロシアに依存しているため。以上の二点による面が大きい。
またアルメニアは、親欧米外交を展開するトルコやアゼルバイジャンと対立してきたイランやシリアとの間に良好な外交関係を構築している(だから、ナゴルノ・カラバフ紛争においてアルメニアはロシアに加えてイランからも援助を受けてアゼルバイジャンに対抗した)。

また、ロシアやイランへの対抗上、米国がアゼルバイジャンに経済援助・軍事援助を拡大させようにも、その動きは米国内のアルメニア・ロビーの妨害によって多くの困難に直面してきた。

従って、仮に米国が「ナゴルノ・カラバフ紛争」解決でアルメニアに恩を売ることができれば、米国のアゼルバイジャン援助に対する支障は大部分が氷解するし、それはイランに対する有効な圧力となるだろうことは想像に難くない。

そして、ここで地図を見てもらえば一目瞭然だが、アルメニアの位置(赤楕円部分)はトルコの後背。もっと言えば、最近徐々に西側に距離を取り始めた外交が目立つトルコの後背(当ブログ第二百六十二段参照)。同時に親欧米外交を鮮明にしてロシアとの軋轢も辞さないサアカシュヴィリ・グルジアの後背でもある。
そんなアルメニアの外交軸が米国寄りに振れた場合、そのインパクトは周辺国にとって無視できないものとなろう。

イラク・フセイン政権の倒壊によるイラクの弱体化とイランの強大化、トルコの外交姿勢の変化、イスラエルの軍事力神話の陰り、いつ最高権力者が「万歳」を迎えてもおかしくないエジプトとサウジ、そして米国の息切れとロシアの影響力拡大、そういった諸要素が渾然一体となって、周辺地域を巻き込みながら新たな中東秩序を巡る合従連衡が繰り広げられているのが現在の状況といった所なのだろう。