2009年5月5日火曜日

第二百六十七段 中国、続く資源権益獲得の動き

2008年にアフリカを席巻した中国の資源外交。その勢いは金融危機によって止む所か、寧ろ危機によって現出した資源権益のバーゲンセール状態を前に更に加速しているように見える。

<2009年の主な中国資源権益獲得行動>
2月20日、中国、ロシア政府系の石油会社ロスネフチと石油輸送網の独占会社トランスネフチ
への
250億ドルの融資と引き換えに、20年にわたる対中石油輸出の長期契約でロシア政府と合意。
2月21日、ブラジル国営石油企業ペトロブラス、深海油田開発資金(最大100億ドル)を中国国家開発銀行から調達へ。
同日、ペトロブラス、中国石油化工集団(以下「シノペック」と表記)と中国石油天然気集団 (以下「CNPC」と表記)に対する重油供給契約締結。
3月25日、中国非鉄大手チャイナルコ(国営)、豪州政府より資源大手リオ・ティントへの出資(195億ドル)認可を獲得。
4月25日、中国の中国五鉱集団(国営)、豪州の鉱山会社OZミネラルズ買収

そして、5月に入ってからも中国の資源獲得行動は止まないようである。

一つ目は日経ネットが伝えるニュース。

中国国有の非鉄大手、豪希土類大手に51%出資で合意

【北京=多部田俊輔】中国の国有非鉄大手、中国有色鉱業集団は4日までに、オーストラリアのレアアース(希土類)大手ライナスに51.66%出資すること でライナスと合意したことを明らかにした。出資額は2億5200万豪ドル(約180億円)。ライナスは資金繰りのため、中国の銀行から100億円規模の融 資も受ける。両社は中豪政府の承認を求める。中国メディアによると、中国企業による豪資源会社の買収は今年4件目。(04日 23:01) (出典:日経ネット

ただでさえ、ハイテク製品の原材料として不可欠のレアアースは、その産出地が中国に偏在している。そこへきて豪州のレアアースも中国が押さえることになれば、ハイテク立国だの、「ものづくり」大国だの、製造業ありきの経済だのといった言葉には、全て「中国が許す範囲での」という枕詞が付きかねない(代替材なんて一朝一夕に作れるもんでもないし・・・・)。
最近、日本でも中国が発表した電子機器の強制認証制度(要は、電子機器のプログラムのソースコード開示を義務付け、逆らえば中国での製品販売を認めない制度)への反発が強まっているが、その交渉の場で中国側に「ほう、ソースコードの開示はしない? 中国での当該機器販売も見合わせる? なるほど・・・でも製品の原材料が入手できなくなれば、ソースコードとか販売計画とか以前の問題ですよね?」と言われたらどうするんだろうか?

二つ目は、Business News Americasに掲載されていたニュース。

Talisman to sell local

assets to Sinoc-Sinopec

- Trinidad & Tobago


Canadian company Talisman Energy (NYSE: TLM) will sell its Trinidad assets to Chinese consortium Sinoc-Sinopec for roughly Cdn$380mn (US$323mn), Talisman CFO Scott Thomson announced.

Talisman last year announced it planned to offload its Trinidad assets as part of a strategy to focus on its core business.

In the Caribbean country, the company holds a 25% non-operating interest in the Angostura development area of block 2(c), a 36% interest in the block 2(c) Howler assessment area, a 26% interest in the Greater Ruby-Delaware appraisal area of block 3(a) and a 40% interest in the exploration area of block 3(a).

Talisman also holds a 65% operating interest in the onshore Eastern block.

The sale is due to close this quarter, Thomson said in a webcast.

The Canadian company's net total proved reserves in Trinidad & Tobago reach 220Bf3 (6.23Bm3) of natural gas and 4.3Mb of oil and NGLs.(出典:Business News Americas

要は、Talisman Energyというカナダのエネルギー会社が、トリニダード・トバゴに有していた権益をシノペックに対して約3.2億ドルで売却するというもの。

トリニダード・トバゴ、何処にあって何が有名な国なのか、あまりピンとこない国だが、右記地図に示したように、位置としてはベネズエラの北岸、西インド諸島の南端という位置にある。
産油国ベネズエラに近接していることからも想像がつくように、トリニダード・トバゴもまた石油・天然ガスを産出し、2006年時点の総輸出額142億ドルのうち、天然ガスが約31%、石油製品が約27%、原油が約15%を占める構成となっている。
人口は約134万人で、約40%がインド系、約38%がアフリカ系という構成になっている。そして議会もまた、インド系が支持基盤の統一民族会議とアフリカ系が支持基盤の人民国家運動が二大勢力を形成しており、現在は人民国家運動が与党となっている。外交姿勢としては親米英姿勢を基調としている。(以上は『データブックオブザワールド 2009』を参考とした)

さて今回のシノペックのトリニダード・トバゴ進出だが、反米国家(と同時に産油国家)ベネズエラに近接する親米国家に、米国との対抗も辞さない新興大国の国営企業が札束を靡かせてやってきたとも言えるわけで、米国にとっては、主に安全保障の観点から気が気ではないニュースと言えるのかもしれない。