2009年5月25日月曜日

第二百七十七段 北朝鮮の核実験にて思うこと

2009年5月25日、北朝鮮が2006年10月以来となる2度目の核実験を行ったという(出典:日経ネット)。
これに関して心に浮かぶ雑念をただ気分の赴くままに書き綴ってみたい。

自民党、敵基地攻撃能力の保有要求との由(出典:共同通信
要は、今年末に予定されている新「防衛計画の大綱」の閣議決定に向けて、自民党国防部会の防衛政策検討小委員会が政府に対し、敵基地攻撃能力の保有や、ミサイル発射を探知する早期警戒衛星の研究、開発を要求したというもの。
この要求、正確には4月5日に強行された北朝鮮の長距離ミサイル実験を受けてのものなのだが、恐らく今回の北朝鮮の核実験を受けて、自民党や国内世論において
防衛政策検討小委員会の提案に対する支持が高まりそうである。だが一介の天邪鬼として、ここで敢えて同提案に対して疑問点を指摘してみたい。
1.何処から攻撃能力を入手するのか?
  日本国の防衛政策は「専守防衛」である。従って自衛隊の装備は基本的に敵国の基地に対して
  直接精密誘導攻撃を仕掛けられるような状態にはなっていない(そこを補完するのが在日米軍)。
  そこで敵基地攻撃のための巡航ミサイルなり精密誘導爆弾なりを何処からか入手する必要がある。
  では入手先は何処か?
  常識的に考えれば同盟国アメリカということになろうが、アメリカがそう簡単に日本に対して敵地
  攻撃力を提供してくれるだろうか? 寧ろ日本の攻撃力拡充に対しては、中国や韓国を刺激して
  極東アジア地域の軍拡競争を煽りかねないとして、抑止の姿勢を示すのではないか?
  他に入手先として考えられるのは欧州やロシアだが、彼らは日本よりも中国の方に武器市場として
  の魅力を感じている。そんな彼らが中国の機嫌を損ねてまで日本に敵地攻撃力を提供してくれる
  とは少し考えにくい。
  残るは自主開発という道だが、そもそも1945年以来戦争というものを経験していない日本国に、
  必要なノウハウが揃っているとは考えにくいし、何より作られたミサイルなり爆弾が実際に想定
  通り機能してくれるかは知れたものではない(欧米露の兵器なら実戦経験豊富なので、それなり
  に機能してくれることが見込めようが・・・・)
2.どうやって狙いを定めるのか?
  仮に首尾よく敵基地を攻撃するための手段を手に入れたとしよう。ならばそのミサイルなり爆弾
  なりの攻撃目標をどの様に定めるかが問題となる。
  たとえば人工衛星による衛星写真を利用するにしても、衛星写真に写っているものが攻撃目標
  なのか否かを判断するには経験を積んだ分析者の検討がいるだろうし、何より人工衛星自体、
  ある一点を常に監視し続けることはできない(赤道上に目標があるのなら、静止衛星という手段
  も無いわけではないが・・・)。だから敵側のカモフラージュや移設によって攻撃目標をロストして
  しまう危険性は十分にある。
  それを補うには、敵の交信記録や電子情報、更には敵国の人間から直接情報を取得する人材、
  集めた情報を分析する人材、そしてそれらをマネジメントするための組織が必要となってくる。
  現在の日本にそういった組織があり、そこで分析された情報が攻撃を決断する部署(多分官邸)
  や実際に攻撃を実施する部署(多分自衛隊)との間で速やかに共有される体制が構築されてい
  るなら、的確な外科手術的攻撃によって脅威を除去することもできようが、そうでなければ敵の
  カモフラージュに騙されたり、最悪、予期せぬ誤爆でいつの間にか日本が悪役にされていると
  いった事態もあり得ないわけではない。

このように考えると、現在の日本国が敵基地攻撃能力を備えるということは、勇ましい掛け声とは裏腹に、一朝一夕には済まない難事であると考えられる。果たして首尾よく日本国が
敵基地攻撃能力を獲得した時、北朝鮮という国家は存在しているのだろうか?

核実験は将軍様の人生の花道か?
北朝鮮の初代指導者金日成総書記は、「大日本帝国の支配から朝鮮民衆を解放した」という功績を掲げて北朝鮮を統治してきた。一方、二代目の金正日総書記にはこれといった仰々しい功績は見当たらない。寧ろ経済破綻や食料危機というロクでもない実績しか現時点では存在しない(冷戦崩壊という不可抗力があるにせよ)。加えて彼には健康問題が浮上してきている。
もし金正日総書記がこれといった功績も無いまま、彼岸の向こう側に旅立ったとしたら、金正日一門による権力継承に政権・軍内部から疑問の声が上がってくる可能性は十分にある。
そう考えると、最近立て続けに発生した北朝鮮の長距離ミサイル実験や核実験は、「ミサイルと核兵器の保有によって、共和国を超大国米国と対等の位置に押し上げたという功績を作ってから、あの世に行きたい(そして金正日一門による権力継承を円滑に進めたい)」という金正日総書記の意向(焦り)を示すものと言えるかもしれない。
また、老い先短い金正日政権が徹底的に国際社会に強硬な姿勢を示した後、ポスト金正日政権が多少でも国際社会に対して柔軟な姿勢を示せば、
ポスト金正日政権に対して実態以上に好意的な国際的評価が集まる効果も狙える(悪人がちょっとした善行で一気に人格者扱いされるのと同じ効果)
その意味で、金正日政権の瀬戸際外交は次期政権への贈り物としての一面も有しているのかもしれない。

以上、閑人の妄言妄説を気の向くままに書きなぐるものである。