2009年6月12日金曜日

第二百八十六段 音速の遅い読書『孤独のグルメ』

今回の音速の遅い読書で取り上げるのは、以下の作品。

孤独のグルメ 【新装版】
久住 昌之
コミック
扶桑社
総合評価 4.5
発売日 2008-04-22

アマゾン通販

この作品は、下戸の中年貿易商井之頭五郎の一人メシの様を描いたコミックである。
といっても、贅を凝らした山海の珍味や食通を唸らせる美食が出てくるわけでもなく、食品に対する大層な蘊蓄やご高説が披露されるわけでもなく、ましてや食べた料理に対して感動のあまり「うー・まー・いー・ぞぉぉぉぉっつ!!」と絶叫して巨大化したり口からビームを出したりするわけでは決してない。
出てくる料理は殆どが焼き肉や回転寿司、まめかんやコンビニ食品といったどこでも見かけるようなものである。

出てくる料理は馴染みのあるものばかり、派手なアクションも仰々しい蘊蓄も無い、そんな漫画なのだが読んで退屈することはない。寧ろ主人公井之頭五郎の少しとぼけた感じと微妙な空回り具合、そして印象的なセリフ・独白といった諸要素が渾然一体となって静謐なおかしみに満ちた飽きの来ない作品に仕上がっているのだ。

そんな井之頭語録の中でも点額法師の印象に残っているのが以下に列挙する言葉である。

なかなか適当な食事場所を見つけられない時の一言
焦るんじゃない。俺は腹が減っているだけなんだ。腹が減って死にそうなだけなんだ。

新幹線で苦難の果て(笑)に口に運んだジェット・シューマイに対する感想
うん・・・・・・うまい。確かにうまい。しかし・・・・・・これはどこまでいってもシューマイだな。

チェリオ(メロン味)を飲んでの独白
このワザとらしいメロン味!

一人メシに対する主人公の気構えが実によく窺える台詞
モノを食べる時はね、だれにも邪魔されず、自由で、なんというか救われてなきゃあダメなんだ。一人で静かで豊かで・・・・・・。

深夜、仕事での空腹に耐えかねて呟いた独り言
腹もペコちゃんだし、夜食でも食ってひと息つくか。

繰り返しになってしまうが、これら独特の雰囲気を持った台詞・独白が谷口ジロー氏の緻密で静かな作画と組み合わさった時、スルメのようにじわじわとくる魅力が発生するのである。

そしてこの作品、ドラマCDが2009年9月に発売予定だという。
是が非でも入手したいものである。