2009年6月18日木曜日

第二百八十八段 紅の楼で見る夢は・・・・

中国の有名な古典小説に『紅楼夢』という作品が御座います。
皇帝の寵を笠にきた賈一族の栄華と没落を背景に、主人公の少年賈宝玉と様々な魅力にあふれた少女たちとの交流・恋愛模様を綴った大河小説です(中国では『三国志』や『西遊記』、『水滸伝』と並んで『四大奇書』と称されているとか・・・・)
そんな本作品の最大の見せ場は、史湘雲の登場シーン三角関係とその主人公に不本意な決着、それが巻き起こす悲劇にあるわけですが、それを頭に入れた上で以下のニュース。6月15日の時事通信社が報じたものに御座います。
【北京15日時事】平壌発の新華社電によると、北朝鮮の労働党機関紙・労働新聞は15日、金正日総書記が最近、中国清代の古典小説「紅楼夢」の歌劇を鑑 賞したと報じた。今回の報道には、中国が国連安保理の対北制裁決議に賛成しても、中朝友好を重視する姿勢に変わりがないと伝える狙いがありそうだ。
観劇したのは咸鏡南道の咸興大劇場で行われた「血海(ピバダ)歌劇団」の公演で、日時は不明。3月には、今年の中朝国交樹立60周年を記念して「紅楼夢」 を上演するため、金総書記が同歌劇団に対し創作を直接指導したと報じられていた。(2009/06/15-19:15)(出典:時事通信

記事では「金正日総書記の『紅楼夢』観劇は北朝鮮の中朝友好重視を示すもの」と書いております。
しかし、繰り返しになりますが、『紅楼夢』の最大の見せ場は史湘雲の登場シーン「三角関係の悲劇的決着」「三角関係の悲劇的決着」にあるわけです。( ・`ω・´)+

で、現在の北朝鮮問題を中国視点で見てみると、一方に旧来の友好国かつ米国(直截的に言えば「在韓米軍」)との便利な緩衝役たる北朝鮮があり、もう一方に中国が今後も発展を続けていく上で欠かせないマネーや技術を有する米国が御座います。
中国が北朝鮮と米国のどちらかに肩入れすれば先にあるのは剣山刀樹(北朝鮮難民の流入、在韓米軍との直接対峙、西側からの孤立、等等等)。
かといって北朝鮮と米国の両方に矛を収めて共存するように仕向けるのも至難の業。今後、中国が「北朝鮮か米国か」という選択を突き付けられる可能性は極めて高いかと思われます。

「選択はしたくない、でもしなければならない」。まさに中国は北朝鮮と米国を睨んでの三角関係に呻吟しているわけですが、そんな所へ流れてきたのが「金正日総書記、中朝友好の証に『紅楼夢』観劇」というニュース。友好の証どころか強烈な当て擦りにしか見えないような気がするのは、点額法師一人だけでしょうか?(今日になって流れた中国発の「北朝鮮後継者、三男で決定か」というニュースは、中国側の意趣返しだったりして)

『紅楼夢』では、三角関係の果てに賈宝玉と結ばれなかった方のヒロインが悲嘆のあまり俄に病没してしまいます。そんな『紅楼夢』の情緒纏綿たる世界とは対極にある21世紀東アジアの国際政治、そこの物騒極まりない三角関係はどのような決着を見せるのでしょうか? 
個人的には、北朝鮮に不本意な状況となった場合、かの国が大人しく悲嘆に暮れるだけとは到底思えませんが・・・・(寧ろ、生霊となり亡霊ともなって光源氏を苦しめた六条御息所の方がしっくりきそう)。