2009年6月7日日曜日

第二百八十五段 I miss リチウム !!

最近、ガソリン車の後継者としてハイブリッド車や電気自動車への注目が高まっております。そんな事情を反映してか、6月7日の時事通信社で以下のようなニュースが報じられておりました。
 日立製作所など電機メーカーを中心に、自動車向けリチウムイオン電池事業の競争が加速している。3日には三菱重工業も同事業への参入を表明した。自動車産業は現在、米ゼネラル・モーターズ(GM)破綻(はたん)など苦境が続くが、復活に向けハイブリッド車(HV)をはじめ環境性能に優れた「エコカー」がけん引役となるのは確実。その性能を左右するリチウム電池も急成長が必至で、各社とも経営資源を集中する。
 日本自動車販売協会連合会によると、HVは既に5月の新車販売の8台に1台を占めており、エコカー市場は着実に拡大し始めている。しかし一段の普及には電池性能の向上が不可欠。リチウム電池は現在主流のニッケル水素電池に比べ小型・大容量化が可能で、エコカー電池の本命だ。
 日立は今秋にも次世代型電池のサンプル出荷を開始するほか、2010年からはGMに量産型電池を月間30万個供給する予定。GM破綻で計画の遅延も予想されるが、「GMも再生には(HVなど)環境対応が不可欠」(日立ビークルエナジー)とし、計画に大きな狂いはないと見る。
 新規参入を宣言した三菱重工は、12年に量産を開始する予定。当初は自社製フォークリフト向けに供給するが、将来は電気自動車(EV)向けに売り込む。
 リチウム電池で世界シェアの3割を握る三洋電機は、年内にも兵庫県に新工場を建設。10年度から国内2カ所で量産体制に入り、複数の自動車メーカーに供給する考えだ。東芝も新潟県に新型のリチウム電池工場建設を計画しており、エコカーへの供給を見据える。(2009/06/06-05:37)(出典:時事通信

要するに、「次世代自動車の動力源として有望視されているリチウム電池の開発に、日本の有名製造業企業が力を入れているよ」というのが上記記事の内容。

経済状況が大変に厳しい中でも次世代技術の研究・開発に積極的な日本のものづくり企業の姿を見ると、日本国民の一人として大変に心強いものがあります。(^-^)
・・・・なんて品行方正なことを当ブログで書く気は一切ありません。
そもそも「製造業が潤う → 日本全体が潤う」なんて図式はとうの昔に崩壊しており、非製造業部門で働く人間には日本の製造業が強くなろうが弱くなろうが知ったことではない話。その上、点額法師のポートフォリオには日本の製造業は組み込まれていないため、日本の製造業に対する個人的などうでもよさ感は更に強まることになります。

閑話休題。上記記事で注目したいのは「リチウム電池」というもの。どんなものかというと、読んで字の如くリチウムという物質を利用した二次電池です(「二次電池」とは充電することで繰り返し使える電池のこと。逆に一回使い果たしてしまえばそこで終わりの電池を「一次電池」という)。

そのリチウム電池を作る上で欠かせないのが、繰り返しになりますがリチウムという物質です。では、そのリチウムはどこで生産される物質なのか?
JOGMECのHPを利用して調べてみると、リチウムの埋蔵量は約2900万tで塩湖に水溶液の形で存在しているものが内3分の2、鉱石の形で存在しているものが3分の1という状態。
水溶液バージョンの主な生産地は南米(チリ37%、ボリビア29%、アルゼンチン14%)と中国(14%)、米国(6%)。特に中国の場合、リチウムを産出する塩湖はチベットと青海省(どちらもチベット人が多い地域)という実に剣呑な地域に御座います(水源地としての重要性に加え、次世代自動車の動力源材料までが眠っているのだから、中国がチベットや青海省の支配権維持にあらゆる手段を講じているのも実に納得のいくことではあります)。また、南米を見ても埋蔵量29%を占めるボリビアは外交面で強力な反米主義(裏返しとしての中国、ロシアへの接近)を掲げ、資源企業の国有化にも非常に積極的という、西側諸国にとってはなんとも厄介な相手。
では鉱石バージョンはどうかと見てみると、こちらの主要生産国は米国(47%)、コンゴ民主共和国(22%)、ロシア(10%)といった塩梅。

これら諸国と日本との関係を簡単に見てみると、中国は地政学的な対立面を多く抱える一方で経済面等で共通の利害もまた多い複雑な関係、米国は非常に重要な同盟国。されど米中両国とも、自動車産業の次世代の覇者の座を日本から奪取しようとする姿勢は共通しております(GMに対する米国政府の支援、中国でBYDがハイブリッドカー「F3DM」の販売を開始して奇瑞汽車や長城汽車が電気自動車の生産計画を発表しているのも、そうした文脈で捉えるべきものでしょう)。そんな米中両国が気前よくに日本にリチウムを売却してくれるとは少し考え難いものがあります。
ロシアもまた日本との間に領土問題を抱えている他、中国との外交関係、サハリンでの前例を考えるとリチウム供給を全面的に依存するのは少し危険な感じがします。
ボリビアについても「米国との同盟」という日本外交の基軸が逆に足枷になりかねませんし(少なくとも得することはない)、反米外交を掲げる同国に対する中国の接近を常に考慮に入れる必要があるでしょう。それに何より、同国には「リチウム生産が軌道に乗ったと思ったら国有化されていた」なんて危険性が十分にあるわけで、ここも全面的に依存できる供給先とは考えない方が安全かと思われます。

そうなってくると、日本としては比較的政情が安定して外交政策も穏健なチリ、アルゼンチンを主要なリチウム供給先として、他の国々を補完的な供給源とすることになりそうです。
ただ、これは誰でも考え付く話。よって日本の技術覇権を快く思わない国はチリやアルゼンチンへの働きかけを強め、リチウムの囲い込みに動くことが予想されます。

米国や中国の今後の動きが興味深い所です。( ̄w ̄)