2009年8月30日日曜日

第三百二十三段 箴言2

箴言

「ウィン・ウィン」とは何か?
不都合を結果的に第三者に押しつける取り決め。

「チーム・プレイ」とは何か?
失敗は押しつけられ、功績は他人に持っていかれる作業形態。

「幸せ」とは何か?
自分が獲得できなくとも我慢できるが、他人が獲得するのは我慢ならないもの。

「正義」と「不正」とを分つものは何か?
ある行為を強者が行うか弱者が行うかの違い。

「卑怯」とは何か?
敗者の別名。

「楽しみ」とは何か?
一冊の良書、一篇の佳曲、一杯の好茶、異境の陣太鼓。

2009年8月27日木曜日

第三百二十一段 新露仏同盟?

帝国主義華やかなりし19世紀後半~20世紀初頭の欧州、鉄血宰相ビスマルクの辣腕と第二次産業革命の波に乗って新興国ドイツが急速に存在感を高めつつあった。
それに対して普仏戦争でドイツに苦杯を喫したフランスとドイツの東方拡大に脅威を覚えるロマノフ朝ロシアは、露仏同盟締結によってドイツの脅威封じ込めを図った。
一方のドイツは敵対的なフランスとロシアによって東西から挟撃されることを恐れてロシアに接近し、ロシアの注意を欧州から極東アジアに向けさせようとした。
そして露仏同盟とドイツの対ロ接近によって西側の患いをなからしめたロシアは、マンチュリアや朝鮮半島での支配権確立に走り、同じ地域での勢力拡大を図る大日本帝国と熾烈な戦いを繰り広げることになるのである。

そんなかつての政治劇を思い出したのは、ロシアの国営通信社Novostiが報じた以下のニュースがきっかけであった。

ULAN BATOR, August 26 (RIA Novosti) - Russia is planning on signing by the end of 2009 a contractual agreement with France on the purchase of a Mistral class amphibious assault ship, the chief of the Russian General Staff said on Wednesday.

"We are planning to reach an agreement [with France] this year on the production and the purchase of a Mistral class vessel," Gen. Nikolai Makarov told a news conference in the Mongolian capital, Ulan Bator.

"We are negotiating the purchase of one ship at present, and later planning to acquire 3-4 ships [of the same class] to be jointly built in Russia," the general said.

A Mistral class ship is capable of transporting and deploying 16 helicopters, four landing barges, up to 70 vehicles including 13 main battle tanks, and 450 soldiers. The vessel is equipped with a 69-bed hospital and could be used as an amphibious command ship.

Makarov did not disclose the amount of the deal, but a high-ranking Russian source close to negotiations earlier said the ship could be worth between 300 and 400 million euros ($430-580 mln).

The purchase, if successful, would be the first large-scale arms import deal concluded by Russia since the collapse of the Soviet Union.

Russia first expressed an interest in bilateral cooperation with France in naval equipment and technology in 2008, when Navy chief Adm. Vladimir Vysotsky visited the Euronaval 2008 arms show in France.

The admiral said at the time that the Russian Navy was interested in "joint research and also direct purchases of French naval equipment."

According to other military sources, the possibility of buying a Mistral class amphibious assault ship was discussed at the naval show in St. Petersburg in June this year.

Russia's current weapons procurement program through 2015 does not envision construction or purchases of large combat ships, so the possible acquisition of a French Mistral class ship is most likely to happen under the new program for the years up to 2020, which is still in the development.(出典:Novosti


記事の概要は、以下の通りである。
・ロシアがフランスからミストラル級強襲揚陸艦を輸入するために交渉を行っている。
・Makarov将軍が言う所では「現在は1席の輸入を目指して交渉しているが、今後、3~4隻の
 同型艦について仏との共同生産を行うことも計画している」。
・艦の値段としては4.3億ドル~5.8億ドルが想定されている。
・もし交渉が交渉が成立すれば、ソ連崩壊後のロシアにおいて初の大規模兵器輸入となる。
・ロシアがフランスとの海軍装備・技術の2国間協力に興味を示したのは2008年に遡る。

普段は人権やら自由やらご大層なお題目を掲げてロシアを批判し、2008年のグルジア紛争ではロシアの大国主義に懸念を示していた欧米諸国だが、いざビジネスとなればそんなものは歯牙にもかけない所がある意味で清々しい(因みに、Novostiが8月7日に報じた所によれば、ロシアは2010年の軍備支出として150億ドルを予定しているそうなので(出典:Novosti)、上手く食い込めば結構なビジネスチャンスが期待できる)

閑話休題、今回のニュースに象徴されるように露仏の軍事協力が進展し、独露関係もまた天然ガス権益に梃子に強化方向にあることを考えれば、現状、EUの中核たるパリ-ベルリン枢軸とロシアとの関係は大筋で改善方向にあるといっても差支えないだろう。そして、このことはロシア極東部に隣接する中国、モンゴル、日本、韓国といった国々の外交に一定度の影を落とすものと考えられる。

というのも、冒頭で少し触れたように、ロシアという国は、ロマノフ朝の昔から、西との関係が安定すれば東に攻め入り、東と和睦すれば西に侵攻する行動パターンを示してきたからだ。
そのことを考えるならば、ロシアと欧州(西)との関係改善によって、中国、モンゴル、日本、韓国といった東の国々の中に、露欧関係強化のとばっちりを受ける国があると予想するのも突飛な話ではないだろう。そして、恐らく露欧関係強化のとばっちりを受ける可能性が最も高いのは、所謂「北方領土問題」をロシアとの間に抱える日本と予想される。

もし日本が一人ロシアからの寒風に晒される状態を予防しようと思うのならば、未だ反露感情の強い中東欧諸国をロシアに対してけしかけるか、最近の米中接近を梃にロシアの対中疑心を強めるなどの外交工作が必要となってくるものと考えられる(特に前者については付随効果としてEUの内部分裂を誘発できる可能性もあるので、EUの「環境問題」を錦の御旗にした経済・規制戦争を仕掛けられている日本としては試してみる価値がありそうである)。

2009年8月26日水曜日

第三百二十段 死亡確認!

『魁!!男塾』という漫画がある(全34巻 宮下あきら作 集英社)。一言で言えば並はずれた身体能力と武術の腕前を誇る登場人物たちが「デタラメ人間の万国ビックリショー」も真っ青な戦いを繰り広げる格闘漫画である。
そのあまりに(色んな意味で)壮絶な戦いの果てに死人が出ることも珍しくなく、特に味方の人物が斃れた時には医務担当の王大人(ワン・ターレン)という人物の口から「死亡確認!」という無情の宣告が下されることになる。

共同通信が報じた以下のニュースを目にして、そんな王大人の宣告を想起してしまったのは私だけであろうか(因みに記事の見出しは「メスード司令官の死亡確認 パキスタン武装勢力幹部」であった)。

【イスラマバード共同】パキスタンのイスラム武装勢力「パキス タンのタリバン運動」の新司令官に選出されたと伝えられるハキムラ・メスード氏ら複数の幹部は25日、米軍無人機の爆撃で殺害されたとみられているベイト ラ・メスード司令官の死亡を認めた。AP通信などに語った。

 ハキムラ氏は、2007年末のブット元首相暗殺の首謀者とされるベイトラ司令官について「米軍無人機の爆撃で今月5日に負傷し、2日前(23日)に死亡した」と説明した。

 パキスタン政府などはベイトラ司令官が5日に死亡したとみていたが、遺体は見つからず、武装勢力側は一貫して死亡説を否定。ハキムラ氏は22日に後継司令官選出が伝えられたが、内部対立で武装勢力内が混乱しているとの見方も出ていた。

 ハキムラ氏は28歳で、6月に起きた北西部ペシャワルの高級ホテルでの自爆テロにも関与したとされる。(出典:共同通信


そもそも事の発端は、記事が伝える様に、今年8月、パキスタンの部族地域に対して行われた米軍の無人攻撃機による空襲である。その犠牲者の中にTTPのベイト ラ・メスード司令官が含まれている可能性があるという米国の見解がまず伝えられ、時を擱かずしてパキスタン当局が早々に同司令官の死亡を宣言していた。
それに対してTTP側は一貫して「メスード司令官は負傷しただけ」と死亡説を否定してきたが、ここに至って遂に死亡説を認めたのである。

このベイト ラ・メスードという人物は、2007年のブット元パキスタン首相の暗殺を始めとした数々のテロ活動の黒幕とされており、その首に対して米国は500万ドルの賞金をかけてその行方を追っていた。それほどの「危険人物」の死を味方のTTPすら認めたということは、アフガン・パキスタン地域で苦闘にのたうち回る米国・NATOにとっては数少ない朗報と言えるだろう。

しかし、ここで気になるのがパキスタン政府が早々に「メスード死亡説」を盛んに触れまわっていたことである。
パキスタンにおける最大の政治勢力でもあるパキスタン軍が、米国の対テロ戦争に協力する一方で、アフガン・パキスタン地域に巣食うイスラム過激派諸勢力との強いコネクションを維持し続けていることは公然の秘密とされている。
そんな軍の意向を決して無視するわけにはいかない現パキスタン政府がいち早くメスード死亡を高らかに宣言したのだから、様々な邪推が浮かんでくるのも致し方ないと言えば致し方ない所があろう。

そう言えば、『魁!!男塾』で王大人に死亡宣告されたキャラは、大抵実は生きており、パワーアップしての再登場を果たしていた。

アフガン・パキスタン情勢、もう暫く血腥い展開が続きそうである。

2009年8月23日日曜日

第三百十九段 インドは今日も旱干照り

以前のブログでもふれましたが(第三百十五段参照)、現在インドは少雨乾燥天候に祟られております。その結果、粗糖相場がインドと並ぶ大生産地のブラジルの天候不順と相まって高騰していることはブルームバーグ等の諸経済系メディアに報じられている通りに御座います。

しかし、何も少雨乾燥に弱いのは粗糖の原料たるサトウキビに限った話では御座いません。コメだってコムギだって雑穀類だって乾燥には弱いのです。よって「他の農産物にも粗糖高騰をもたらした悪天候の影響が及び、それが農作物価格高騰に繋がるのでは?」という推測を当ブログ第三百十五段で述べましたが、どうやらその予測実現に向けて力強い支援要素が現れたようです。8月21日のBBCは以下のように伝えております。

India will import food to make up for shortages caused by a drought thought to be affecting 700 million people, the finance minister has said.

The minister, Pranab Mukherjee, did not specify what would be imported and when, saying he wanted to avoid speculation on prices.

The drought is affecting almost half of India's districts.

Food prices have risen by 10% after poor monsoon rains hit sowing. Monsoon rains are critical to India's farmers.

'Grim situation'

Mr Mukherjee said any commodity that was in short supply would be imported to boost domestic stocks.

He said details of the imports were not being revealed, though reports said lentils, edible oils and other staples might be among the foods to be brought in.

The summer rains are crucial to crops such as rice, soybean, sugarcane and cotton.

Concern is also growing in India that international prices of many items such as sugar are increasing in anticipation of its need to import, the BBC's Sanjoy Majumder reports from the capital, Delhi.

The farm minister, Sharad Pawar, said the government would take action to ensure prices remained stable.

He added: "[The] situation is grim, not just for the crop sowing and the crop health but also for sustaining animal health, providing drinking water, livelihood and food, particularly for the small and marginal farmers and landless labourers."

Up to 70% of Indians are dependent on farm incomes, and about 60% of India's farms depend on rains.

Irrigation networks are dismissed by critics as inadequate.(出典:BBC

記事の概容は以下の通りです。
・インドの財務大臣が「旱魃による食料不足は7億人に影響を及ぼしかねず、その不足を補うため、
 インドは食料を輸入する意向である」と述べた。
・財務大臣は何をいつ輸入すべきかについては明らかにせず、供給が不十分なものが対象になる
 ということしか言わなかった。
・食料不足はインドのほぼ半数の地域に影響を与えている。

・食料価格は貧弱なモンスーンが播種期を直撃した後、10%も上昇した。

・モンスーン(夏の雨)は重要な意味を持つ作物としてはコメ、ダイズ、粗糖、コットン等がある。
・インド人の70%以上が農業収入に依存しており、インドの農家の60%程度が雨水頼りの経営である。

以前、中国でも大規模旱魃が発生し、穀物相場急騰ひいてはモンサントやポタッシュ社の株価高騰に儚い希望を抱いたことがありましたが(当ブログ第二百七段)、それはあくまで儚い陽炎に終わりました。というのも、旱魃の悪影響は中国内の農産物在庫放出で相殺されたか、国際的な農産物市場が上昇に向けて動くことはなかったからです。

しかし、今回はインドの財務大臣直々に食料輸入の必要性に言及している辺り、農産物市場の需給逼迫に向けての蓋然性が高まったと言えるでしょう。

怖いのは、経済の多くを農業に依存する人口大国インドで旱魃が発生したことにより、インド経済が冷え込むことでエネルギーや鉱物資源価格に負の影響が出てくることです。しかし、もとよりエネルギーや鉱物資源価格はインドよりも中国を向いて決まることが多い、その上、インド経済の失速が中国経済に甚大な悪影響を及ぼす可能性も低い、これらの要素を考えれば、インドの旱魃悪化が我がポートフォリオに与える影響としては、資源セクター銘柄への悪影響よりは農業セクターに対する追い風としての側面が強いと考えられます。

果たしてインドの旱魃が点額法師ポートフォリオに福音をもたらしてくれるのか否か、今後の展開が興味深い所です。

2009年8月21日金曜日

第三百十七段 中国冶金科工集団、株式上場のこと

数多の衝撃、幾多の屍を乗り越えてきた末、今年2009年に入ってからの株式市場は、世界的にも堅調な状態が続いております。それに伴って徐々に賑わいを取り戻しつつあるのがIPO。最近の主だったものを挙げていけば、ビザネット(ブラジル 調達額:37億ドル)、中国建築工程(中国A株、調達額:73.4億ドル)、光大証券(中国A株 調達額:16.1億ドル)、スターウッド・プロパティー(NY(REIT) 調達額:9.5億ドル)等がありますが、ここにきて中国の国営資源・エンジニアリング大手中国冶金科工集団もまた、上海と香港で株式を上場させるとのニュースが報じられておりました。
[上海 21日 ロイター] 中国証券監督管理委員会(CSRC)は21日、中国冶金科工集団(MCC)の新規株式公開(IPO)申請を26日に審 査すると発表した。中国冶金科工は、上海市場でA株(人民元建て株式)を公開し、約168億5000万元(25億ドル)調達する計画。

 CSRCのホームページに公開された中国冶金科工の目論見書(案)によると、A株を35億株を上限に発行するほか、香港でもH株を最大26億1000万株発行する計画。

 中国冶金は、CITICパシフィック(0267.HK: 株価, 企業情報, レポート)とオーストラリアで鉄鉱石合弁事業を行っている。(出典:ロイター


今回の上場、市場から調達した資金を以って更なる資源権益獲得に邁進しようという、中国冶金科工集団(とその背後にあるであろう北京政府)の意図が背景にあることは想像に難くありません(因みに最近の中国冶金科工集団の資源権益獲得に動きについては、当ブログ第三百段参照のこと)。

そしてこの中国冶金科工集団という企業をパッと見するに、中国という巨大市場へのアクセスを有し、そして国営という立場からは中央政府とのコネクションの存在も当然に想像され、しかもその事業領域は資源開発。点額法師の投資意欲をくすぐる要素に満ち満ちた企業です。

というわけで、早速中国証券監督管理委員会のHPに掲載されている(筈の)目論見書(案)を取得し、詳細に投資対象に加えるべきか検討することにしました。

問題無く目論見書があったので、早速右クリックしてダウンロード・・・・

↓↓↓
↓↓↓

・・・Bフレッツで7MBの文書を落とすだけなのに随分と酷い仕打ち。(△ ̄;)
しかも、最初6分だったものが7分、8分とどんどん遅くなっていくしょんぼり状態。

いいや、明日あたりから直接中国冶金科工集団のHPで直接情報を漁ることにしよう。幸いに英語版もあるようだし・・・・。(´・ω・`)

2009年8月20日木曜日

第三百十六段 ヴェトナム? ヴェトナム!

ヴェトナムとロシア、地理的には対極と言ってもよい位置にある両国だが、近現代史を遡れば、その結び付きが意外に強いことに気付かされる。1960年代から1975年のサイゴン陥落まで戦われたヴェトナム戦争におけるハノイ政権へのソ連の物心両面の支援は言うに及ばず、他にも、1900年代に勃発した日露戦争ではバルチック艦隊がカムラン湾で物資補給等を行い、1970年代から1980年代の所謂「新冷戦」期にはソ連とヴェトナムの連携が日米中の連携に対峙する構図が浮上した。

そんな両国の歴史的繋がりがそうさせるのか、今も尚ヴェトナムはロシア製兵器のお得意さんの一つである。最近では以下のニュースを8月19日にロシア国営通信社Novostiが報じている。

ZHUKOVSKY (Moscow Region), August 19 (RIA Novosti) - Russia will fulfill a contract on the delivery of eight Su-30MK2 fighters to Vietnam in 2010, state arms exporter Rosoboronexport said on Wednesday.

Russia and Vietnam signed a of $500 million agreement on the sale of eight Su-30MK2 fighters in January 2009.

"The contract was signed in January, and we will fulfill it in 2009-2010," Alexander Mikheyev, deputy general director of Rosoboronexport said at the MAKS-2009 air show near Moscow.

Mikheyev said Vietnam had already made several advanced payments under the contract and the deliveries would be made in two batches of four aircraft each.

Su-30MK2 is an advanced two-seat version of the Su-27 Flanker multirole fighter with upgraded electronics and capability to launch anti-ship missiles.

Russia's Federal Service for Military Cooperation said in June that Vietnam had expressed interest in buying additional Su-30MK2 fighters and talks on a new contract could start in the near future.

Military aircraft continue to dominate Russia's arms exports, and are expected to total about $2.6 billion in 2009 sales.(出典:Novosti


記事の概要は以下のようになる。
・ロシアからヴェトナムに対して2010年中にSu-30MK2戦闘機8機の引き渡しに目途がついた。
・戦闘機引渡は、2009年1月にロシア-ヴェトナム間で締結された5億ドルの契約に基づく。
・引渡は2回に分けて4機ずつ行われる。
・Su-30MK2には対艦ミサイルの搭載能力が備わっている。
・ヴェトナムは更なるSu-30MK2の追加購入に興味を示しており、ロシア-ヴェトナム間で近
 い将来に新たな契約合意が成立する見込みである。

注目すべきは、ヴェトナムの同機に対する強い購入意欲に対してロシアが乗り気であることである。

というのも、巷間知られているように、ヴェトナムは南シナ海に浮かぶ西沙諸島や南沙諸島の領有権を巡って中国と対立している。最近では中国の国営通信社新華社通信が以下のような記事・論説を掲載し、ヴェトナムへの牽制を図っている。
南海诸岛自古以来就是中国的领土,这是不容争辩的事实。而越南《青年人报》却对此提出质疑,在18日头条中称,从古至今,国际法及现实实践都从未承认所谓南海诸岛是中国领土的“历史名义”。

该报称,在联合国海洋法公约第3次会议上,各国没有就将历史海域的概念写入1982年《联合国海洋法公约》达成 一致。参照现行及古典国际法,中国对南海广阔海洋提出这样的要求是不合法的。文章还表示,本地区的国家从不承认中国的历史权利,相反,他们都制定了在本海 域的规定,并不理会中国方面的反对。

广西社科院研究员孙小迎18日表示,《联合国海洋法公约》1972年才开始讨论,在此之前,中国政 府就对南海有完整的主张和管辖。越南只是到了南北统一以后,才提出对南海的主权要求。孙小迎说,上世纪50年代,中国政府发表南海声明,时任越南总理随后 也发表声明承认中国的声明——东沙、南沙、西沙、中沙群岛属于中国。另外,国际法中还有时际法原则,即《联合国海洋法公约》出现在中国政府主张和管辖南海 之后,这个公约不能超越时际法原则。(出典:新華社通信


記事の概要としては、西沙諸島・南沙諸島等の南シナ海諸群島に対する中国の領有権主張に対してヴェトナムが「国連海洋法条約」を引きながら疑義を表明したことについて、中国国内の専門家が批判を加えるというものである(記事中でわざわざ「越南只是到了南北统一以后,才提出对南海的主权要求。」と言っている辺り、「ハノイがサイゴンを併呑できたのは誰のおかけだと思ってんだ!?」という北京政府の強い憤りが感じられる・・・・ような気がする)。
こうした状況を考えれば、中国の海軍力増強に対抗するため、ヴェトナムが対艦ミサイルも装備可能なSu-30MK2戦闘機の購入に積極的になるのは当然と言えば当然の話である。

一方、戦闘機を売りつける側のロシアの視点に立てば、売却先のヴェトナムが獲得した剣を突き付ける相手は、米国等の西側諸国にロシアが対抗する上で不可欠の盟友(と周辺諸国がみなしている)中国となる。しかもその中国自体が、ロシア製兵器の一大お得意様なのである。要するにロシアは紛争の当事者に対して両建てで武器を売却しているわけで、えげつないと言えばえげつないやり方ではある(もっとも、ヴェトナムなり中国なりにロシアが兵器を売らなければ、米国や欧州、その他どこか別の国がセールスに乗り出してくるだけのことで、関係に火種を抱えた中越両国に兵器が流れ込む構図自体は変わらないであろうが・・・)。

考えると、先年のグルジア紛争において、中国は盟友(と周りに思われている)ロシアの頼みを蹴って南オセチア等の独立を認めることはしなかった。

中露連携、それは丁寧に探せば意外に楔の打ち所に満ちた関係なのかもしれない。そして、もし中国やロシアとの間に安全保障上の懸念を抱える国々が首尾よく中露関係に楔を上手く打ち込むことができれば、その国は暫く面白いゲームを楽しむことができるだろう。

2009年8月2日日曜日

第三百十段 中国の北東と南西で進む核開発疑惑

「民主化弾圧への反対」を掲げた西側諸国の各種制裁措置を中国やロシア、北朝鮮といった国々への接近でほぼ無効化(少なくとも軍事政権が倒れない程度には無効化)してきた東南アジアの一国ミャンマーで核開発疑惑が浮上した。2009年8月1日の日経ネットは以下のように伝えている。
ミャンマーの軍事政権が核兵器開発を進めていると1日付の豪紙シドニー・モーニング・ヘラルドが伝えた。軍事政権は北朝鮮の協力で北部の地下に核開 発設備を整備し、国内産のウランを原子炉で燃焼させ、そこからプルトニウムを抽出し2014年にも核兵器の配備を目指しているという。

 同紙によると、豪国立大学の教授と豪州人ジャーナリストが、タイに亡命した元軍人と軍に近い企業の簿記係の2人から2年間にわたり聞き 取った証言から、ミャンマー軍事政権の核兵器開発が浮き彫りになった。お互いの存在を知らない2人の亡命者はほぼ同じ内容の証言をしたという。

 ミャンマーにはロシアから導入した実験用原子炉があるが、国際原子力機関(IAEA)の査察を受けており、軍事転用はしにくい。軍事政 権は地下にこの原子炉とほぼ同じ大きさの別の原子炉などを整備。ロシアの技術者が操作方法などを教えているという。(シドニー=高佐知宏) (22:02)(出典:日経ネット


このニュースが報じる所が事実だとすると、中国の北東たる北朝鮮と南西たるミャンマーという地理的に対照的な地域で核開発が連動して進んでいることになる。そこで気になるのが中国の両国の核開発に対するスタンスである。北朝鮮の核開発については中国は基本的に(抑制的ではあるものの)反対の姿勢を表明している。ミャンマーについてはまだニュースが報じられて日も浅いことから、中国の姿勢が報じられるには至っていないが、恐らくは北朝鮮同様に抑制された反対表明に止まるものと思われる。

しかし、ここで一つの疑問が浮かぶ「中国がそれを知らないなんてあり得るのか?」と。そもそも北朝鮮とミャンマーの現政権が厳しい国際情勢下で何とか存続しているのは、中国の陰に陽にわたる支援による面が大きい。そんな北朝鮮とミャンマーで核開発が進行しているにもかかわらず、その両国の最大の庇護者たる中国がそれを全く知らないということは、個人的な独断ではあるが些か腑に落ちない。寧ろ北朝鮮の核開発も(報道が事実だとした場合の)ミャンマーの核開発についても、「戦略上は損にならないから」と中国が黙認していると考えた方が座りは良い。

ならば北朝鮮とミャンマーの核開発進展で、中国が黙認の見返りに受けると考えられる利点は何か?

まず北朝鮮核開発については、米日牽制の効用と中国の極東アジア地域における影響力拡大が挙げられる。
仮に台湾有事が不幸にも勃発した場合、反中国陣営に回ると考えられるのが米国と日本である。そこでもし北朝鮮が核開発を進めている、若しくは核兵器保有に成功した場合、日米は戦略資産の一部を北朝鮮への監視・対処に割いた上で中国に対峙しなければならなくなる。どうせ衝突する相手ならば、100%全力の相手よりは90%、80%の力しか出せない相手と衝突する方がマシなことは言うまでもないだろう。
その上、北朝鮮周辺国は北朝鮮の核開発を押し止めるために中国の対北影響力に期待せざるを得なくなり、自然とあらゆる分野において中国の意向に全面的に逆らった行動をとることが難しくなってくる。
以上の二点が中国が北朝鮮の核開発から受けると思われる恩恵である。

次に今回報じられたミャンマーの核開発はどうか? 中国の軍事力や経済力を考えれば、付庸国同然のミャンマーに核を持たせてまで牽制するような(日本や米国のような)強力な潜在的敵対勢力は、東南アジアには存在しないと思われる。
だがここで地図上段を見てみると、ミャンマーの西には中国にとって油断ならぬ大国インドが控えていることに気付かされる。折しもインドは、今年7月26日に2011年の実戦配備を睨んで初の国産原潜を進水させ(出典:日経ネット)、今後十年間で軍艦100隻を建造する計画を発表しており(出典:FT紙)、その軍拡の背景にはインド洋への影響力拡大を望む中国への牽制があるといわれている。
それを頭に入れて地図下段を見てみると、中国にとって今最も油断ならない国の一つであるインドが、親中国で度々インドと矛を交えてきた核兵器保有国パキスタンと、西側制裁無効化のために対中依存を進めてきたミャンマーによって挟み込まれる形になっていることに気付かされる。

その上、最近、政府軍の勝利で一旦終結したスリランカ内戦についても、スリランカ政府に中国が多大な有形無形の援助を与えていたという話が広く語られている他、チベットについても中国政府はダライ・ラマ14世入寂後の亡命チベット人勢力分裂を見越しながら漢人の入植や交通インフラの整備による内地化を促進している。

これらを踏まえれば、インドは北のチベット、南のスリランカ、西のパキスタン、東のミャンマーから発せられる中国の圧力を感じずにはおれない状況下にあるといえる。

そんな状況下で出てきたのが、今回の「ミャンマー核開発疑惑」というニュースである。もしニュースが伝える様に、将来的にミャンマーも核兵器を保有することに成功すれば、インドは親中国の核兵器保有国に東西から挟み込まれる形となる。しかも北方には中国の核が鎮座しており、それも加えれば三方向から核の脅威を突き付けられる形である。安全保障関係者にとって国土を三方から核兵器保有国に包囲されるというのはこれ以上ない悪夢である。

その意味で、今回出てきた「ミャンマー核開発疑惑」は、海空軍を中心に軍の近代化を大々的に打ち出しているインドに対し、中国が牽制のために発した鮮やかなカウンター・パンチだと考えることができる。

その一方で、核兵器を保有した、或いは核兵器保有に一定度の目途をつけた北朝鮮やミャンマーが、これまで通り中国にとって都合のよい手駒として振舞ってくれるかは疑問の余地がある(これは最近の北朝鮮の動きを見れば一目瞭然であろう)。中国の一方的な勢力拡大を喜ばない日本や米国、インドにとっては、そこが附け込む隙になるだろう。