2009年8月20日木曜日

第三百十六段 ヴェトナム? ヴェトナム!

ヴェトナムとロシア、地理的には対極と言ってもよい位置にある両国だが、近現代史を遡れば、その結び付きが意外に強いことに気付かされる。1960年代から1975年のサイゴン陥落まで戦われたヴェトナム戦争におけるハノイ政権へのソ連の物心両面の支援は言うに及ばず、他にも、1900年代に勃発した日露戦争ではバルチック艦隊がカムラン湾で物資補給等を行い、1970年代から1980年代の所謂「新冷戦」期にはソ連とヴェトナムの連携が日米中の連携に対峙する構図が浮上した。

そんな両国の歴史的繋がりがそうさせるのか、今も尚ヴェトナムはロシア製兵器のお得意さんの一つである。最近では以下のニュースを8月19日にロシア国営通信社Novostiが報じている。

ZHUKOVSKY (Moscow Region), August 19 (RIA Novosti) - Russia will fulfill a contract on the delivery of eight Su-30MK2 fighters to Vietnam in 2010, state arms exporter Rosoboronexport said on Wednesday.

Russia and Vietnam signed a of $500 million agreement on the sale of eight Su-30MK2 fighters in January 2009.

"The contract was signed in January, and we will fulfill it in 2009-2010," Alexander Mikheyev, deputy general director of Rosoboronexport said at the MAKS-2009 air show near Moscow.

Mikheyev said Vietnam had already made several advanced payments under the contract and the deliveries would be made in two batches of four aircraft each.

Su-30MK2 is an advanced two-seat version of the Su-27 Flanker multirole fighter with upgraded electronics and capability to launch anti-ship missiles.

Russia's Federal Service for Military Cooperation said in June that Vietnam had expressed interest in buying additional Su-30MK2 fighters and talks on a new contract could start in the near future.

Military aircraft continue to dominate Russia's arms exports, and are expected to total about $2.6 billion in 2009 sales.(出典:Novosti


記事の概要は以下のようになる。
・ロシアからヴェトナムに対して2010年中にSu-30MK2戦闘機8機の引き渡しに目途がついた。
・戦闘機引渡は、2009年1月にロシア-ヴェトナム間で締結された5億ドルの契約に基づく。
・引渡は2回に分けて4機ずつ行われる。
・Su-30MK2には対艦ミサイルの搭載能力が備わっている。
・ヴェトナムは更なるSu-30MK2の追加購入に興味を示しており、ロシア-ヴェトナム間で近
 い将来に新たな契約合意が成立する見込みである。

注目すべきは、ヴェトナムの同機に対する強い購入意欲に対してロシアが乗り気であることである。

というのも、巷間知られているように、ヴェトナムは南シナ海に浮かぶ西沙諸島や南沙諸島の領有権を巡って中国と対立している。最近では中国の国営通信社新華社通信が以下のような記事・論説を掲載し、ヴェトナムへの牽制を図っている。
南海诸岛自古以来就是中国的领土,这是不容争辩的事实。而越南《青年人报》却对此提出质疑,在18日头条中称,从古至今,国际法及现实实践都从未承认所谓南海诸岛是中国领土的“历史名义”。

该报称,在联合国海洋法公约第3次会议上,各国没有就将历史海域的概念写入1982年《联合国海洋法公约》达成 一致。参照现行及古典国际法,中国对南海广阔海洋提出这样的要求是不合法的。文章还表示,本地区的国家从不承认中国的历史权利,相反,他们都制定了在本海 域的规定,并不理会中国方面的反对。

广西社科院研究员孙小迎18日表示,《联合国海洋法公约》1972年才开始讨论,在此之前,中国政 府就对南海有完整的主张和管辖。越南只是到了南北统一以后,才提出对南海的主权要求。孙小迎说,上世纪50年代,中国政府发表南海声明,时任越南总理随后 也发表声明承认中国的声明——东沙、南沙、西沙、中沙群岛属于中国。另外,国际法中还有时际法原则,即《联合国海洋法公约》出现在中国政府主张和管辖南海 之后,这个公约不能超越时际法原则。(出典:新華社通信


記事の概要としては、西沙諸島・南沙諸島等の南シナ海諸群島に対する中国の領有権主張に対してヴェトナムが「国連海洋法条約」を引きながら疑義を表明したことについて、中国国内の専門家が批判を加えるというものである(記事中でわざわざ「越南只是到了南北统一以后,才提出对南海的主权要求。」と言っている辺り、「ハノイがサイゴンを併呑できたのは誰のおかけだと思ってんだ!?」という北京政府の強い憤りが感じられる・・・・ような気がする)。
こうした状況を考えれば、中国の海軍力増強に対抗するため、ヴェトナムが対艦ミサイルも装備可能なSu-30MK2戦闘機の購入に積極的になるのは当然と言えば当然の話である。

一方、戦闘機を売りつける側のロシアの視点に立てば、売却先のヴェトナムが獲得した剣を突き付ける相手は、米国等の西側諸国にロシアが対抗する上で不可欠の盟友(と周辺諸国がみなしている)中国となる。しかもその中国自体が、ロシア製兵器の一大お得意様なのである。要するにロシアは紛争の当事者に対して両建てで武器を売却しているわけで、えげつないと言えばえげつないやり方ではある(もっとも、ヴェトナムなり中国なりにロシアが兵器を売らなければ、米国や欧州、その他どこか別の国がセールスに乗り出してくるだけのことで、関係に火種を抱えた中越両国に兵器が流れ込む構図自体は変わらないであろうが・・・)。

考えると、先年のグルジア紛争において、中国は盟友(と周りに思われている)ロシアの頼みを蹴って南オセチア等の独立を認めることはしなかった。

中露連携、それは丁寧に探せば意外に楔の打ち所に満ちた関係なのかもしれない。そして、もし中国やロシアとの間に安全保障上の懸念を抱える国々が首尾よく中露関係に楔を上手く打ち込むことができれば、その国は暫く面白いゲームを楽しむことができるだろう。