2009年8月27日木曜日

第三百二十一段 新露仏同盟?

帝国主義華やかなりし19世紀後半~20世紀初頭の欧州、鉄血宰相ビスマルクの辣腕と第二次産業革命の波に乗って新興国ドイツが急速に存在感を高めつつあった。
それに対して普仏戦争でドイツに苦杯を喫したフランスとドイツの東方拡大に脅威を覚えるロマノフ朝ロシアは、露仏同盟締結によってドイツの脅威封じ込めを図った。
一方のドイツは敵対的なフランスとロシアによって東西から挟撃されることを恐れてロシアに接近し、ロシアの注意を欧州から極東アジアに向けさせようとした。
そして露仏同盟とドイツの対ロ接近によって西側の患いをなからしめたロシアは、マンチュリアや朝鮮半島での支配権確立に走り、同じ地域での勢力拡大を図る大日本帝国と熾烈な戦いを繰り広げることになるのである。

そんなかつての政治劇を思い出したのは、ロシアの国営通信社Novostiが報じた以下のニュースがきっかけであった。

ULAN BATOR, August 26 (RIA Novosti) - Russia is planning on signing by the end of 2009 a contractual agreement with France on the purchase of a Mistral class amphibious assault ship, the chief of the Russian General Staff said on Wednesday.

"We are planning to reach an agreement [with France] this year on the production and the purchase of a Mistral class vessel," Gen. Nikolai Makarov told a news conference in the Mongolian capital, Ulan Bator.

"We are negotiating the purchase of one ship at present, and later planning to acquire 3-4 ships [of the same class] to be jointly built in Russia," the general said.

A Mistral class ship is capable of transporting and deploying 16 helicopters, four landing barges, up to 70 vehicles including 13 main battle tanks, and 450 soldiers. The vessel is equipped with a 69-bed hospital and could be used as an amphibious command ship.

Makarov did not disclose the amount of the deal, but a high-ranking Russian source close to negotiations earlier said the ship could be worth between 300 and 400 million euros ($430-580 mln).

The purchase, if successful, would be the first large-scale arms import deal concluded by Russia since the collapse of the Soviet Union.

Russia first expressed an interest in bilateral cooperation with France in naval equipment and technology in 2008, when Navy chief Adm. Vladimir Vysotsky visited the Euronaval 2008 arms show in France.

The admiral said at the time that the Russian Navy was interested in "joint research and also direct purchases of French naval equipment."

According to other military sources, the possibility of buying a Mistral class amphibious assault ship was discussed at the naval show in St. Petersburg in June this year.

Russia's current weapons procurement program through 2015 does not envision construction or purchases of large combat ships, so the possible acquisition of a French Mistral class ship is most likely to happen under the new program for the years up to 2020, which is still in the development.(出典:Novosti


記事の概要は、以下の通りである。
・ロシアがフランスからミストラル級強襲揚陸艦を輸入するために交渉を行っている。
・Makarov将軍が言う所では「現在は1席の輸入を目指して交渉しているが、今後、3~4隻の
 同型艦について仏との共同生産を行うことも計画している」。
・艦の値段としては4.3億ドル~5.8億ドルが想定されている。
・もし交渉が交渉が成立すれば、ソ連崩壊後のロシアにおいて初の大規模兵器輸入となる。
・ロシアがフランスとの海軍装備・技術の2国間協力に興味を示したのは2008年に遡る。

普段は人権やら自由やらご大層なお題目を掲げてロシアを批判し、2008年のグルジア紛争ではロシアの大国主義に懸念を示していた欧米諸国だが、いざビジネスとなればそんなものは歯牙にもかけない所がある意味で清々しい(因みに、Novostiが8月7日に報じた所によれば、ロシアは2010年の軍備支出として150億ドルを予定しているそうなので(出典:Novosti)、上手く食い込めば結構なビジネスチャンスが期待できる)

閑話休題、今回のニュースに象徴されるように露仏の軍事協力が進展し、独露関係もまた天然ガス権益に梃子に強化方向にあることを考えれば、現状、EUの中核たるパリ-ベルリン枢軸とロシアとの関係は大筋で改善方向にあるといっても差支えないだろう。そして、このことはロシア極東部に隣接する中国、モンゴル、日本、韓国といった国々の外交に一定度の影を落とすものと考えられる。

というのも、冒頭で少し触れたように、ロシアという国は、ロマノフ朝の昔から、西との関係が安定すれば東に攻め入り、東と和睦すれば西に侵攻する行動パターンを示してきたからだ。
そのことを考えるならば、ロシアと欧州(西)との関係改善によって、中国、モンゴル、日本、韓国といった東の国々の中に、露欧関係強化のとばっちりを受ける国があると予想するのも突飛な話ではないだろう。そして、恐らく露欧関係強化のとばっちりを受ける可能性が最も高いのは、所謂「北方領土問題」をロシアとの間に抱える日本と予想される。

もし日本が一人ロシアからの寒風に晒される状態を予防しようと思うのならば、未だ反露感情の強い中東欧諸国をロシアに対してけしかけるか、最近の米中接近を梃にロシアの対中疑心を強めるなどの外交工作が必要となってくるものと考えられる(特に前者については付随効果としてEUの内部分裂を誘発できる可能性もあるので、EUの「環境問題」を錦の御旗にした経済・規制戦争を仕掛けられている日本としては試してみる価値がありそうである)。