2011年1月8日土曜日

第三百四十四段 年の初めのスーダン予測

今年1月9日、日本ではお屠蘇気分もすっかり抜けているであろうこの時、北アフリカとサブサハラ・アフリカの結節点たるスーダンでは、長年の南北内戦の帰結として「南スーダン独立投票」が行われることになっている。

そもそもこのスーダンという国、最近では「産油国」として、そしてとりわけ「中国への大口供給者」として取り上げられることの多い国である。実際、データを確認すると2006年時点での年間原油生産量は1655万トン。アフリカ諸国の中では若干見劣りは否めないものの、産油国として有名なアルジェリア(約6.4千万トン)やアンゴラ(約7千万トン)、リビア(約8.3千万トン)、ナイジェリア(約1.2億トン)に次ぐ位置につけている。
更に見ていくと、前述の上位産油国の殆どが、メジャーの参入が活発なのに対し、スーダンについてはメジャーよりも寧ろ中国国営石油企業による権益獲得が目立つ状態となっている。これはスーダンを長年引き裂いてきた南北内戦において、治安の悪化と幾多の残虐行為の発生が伝えられる中、とりわけ悪役となってきたハルツーム政権との関係構築なしには進まないスーダン油田開発を欧米を根城とするメジャーが見送り、その空隙を「油を売ってくれれば誰とでも交渉する」と猛烈な資源外交を展開する中国勢が埋めたことによるものである。
そして主に南部で採掘された石油は、パイプラインを通じて紅海沿岸ポートスーダン港に運ばれ、そこから各国に出荷されるわけだが、当然、中国国営企業は自分たちが掘った石油を自国に優先的に回すわけで、スーダン産石油の4~6割が中国向けに輸出されている(もっとも、日本もスーダン産石油の10~20%を輸入してたりする)。

そんなスーダンのドル箱とも言える南部地域で行われるのが、同地域の独立を問う住民投票。長年の内戦の果て、南部側の「宗教も民族も大きく異なる北側が押し付けてきた経済的搾取、不平等な政治的・社会的権利配分は辛抱ならん」という声が国際社会に届き、ひいては北部ハルツーム政権を動かして実現の運びとなったものである。

歴史の流れを振り返るならば、当該投票では「南部独立」が多数派を占める可能性が非常に高いと言えよう。しかし、繰り返すが南スーダンは北部にとっても極めて重要なドル箱。南が有する油田や水資源の権益配分如何では、再度流血の事態に陥る可能性が浮上してくる。

果たして南スーダンに平和はもたらされるのか否か? 乏しい知識は承知の上で、ちょっとした予想をしてみたい。

予想前提
1.外部(各国政府や国際機関)の干渉は想定しない
2.北部政権、南スーダン、採り得る選択肢は強硬か穏健のどちらか一方のみとする。
3.当該予想において強硬とは「相手の抵抗を排除し、自己の権益最大化のみを追求する」行動、
  穏健とは「相手の権益取り分を認めた上で、よりましな権益配分を追求する」行動とする。
4.南北共に、相手が強硬か穏健のどちらを選択するかを事前に知ることはできない。
5.権益は強硬と穏健の組合せで以下のように配分される。
  ・北:穏健 対 南:穏健 →5:5
  ・北:強硬 対 南:穏健 →10:0
  ・北:穏健 対 南:強硬 →0:10
  ・北:強硬 対 南:強硬 →2:2

上記4選択肢のうち、仮に南北双方が穏健政策を採った場合、両者共にそこそこ満足できるだけの石油や水資源権益を得ることができると考えられる。
ただし、自分が「穏健」カードを切ったからと言って、相手も「穏健」カードを出してくるかはわからない。最悪、相手が「強硬」カードを出してきて権益を総取りされてしまう危険性がある。
長年にわたって血で血を洗う抗争を繰り広げてきた南北間に、それほど相手への信頼感が醸成されてるとは考えにくい。恐らく南北共に、相手が「強硬」カードをきってくる場合に備えて自分自身も「強硬」カードをきるものと想定される。その結果、互いに互いを排除しながら、流血沙汰を伴った権益の分捕り合いが展開されることになるだろう。

以上のように考えると、南スーダン、平和への道のりについては悲観的とならざるを得ない…


余談
日本にとって米国は言わずと知れた同盟国。そして中国は重要な商売相手である。だから米中が仮に対立関係に陥った場合、日本外交は両者の間で股裂きとなってしまう危険性を有している。
そして前述したように、スーダンの現政権(北)は、石油権益を通じて中国と良好な関係にある。一方、南スーダンに対しては同じキリスト教徒ということもあってか、長年欧米が同情的な姿勢を示してきた。
仮に南北スーダン間で激しい対立が生じた場合、それが米中関係の悪化となって日本外交に望ましくない影響を及ぼしかねないことには注意が必要だろう。