2011年3月31日木曜日

第三百五十一段 緬甸デベロップメント

長らく剥き出しの軍部独裁政権が続いてきたミャンマーだが、今年4月1日より、テインセイン首相を大統領とする「文民政権」という衣をまとった政府が発足する運びとなった。

そんなミャンマーについて、二つほど興味深いインフラ開発の動きがある。一つは、ミャンマー-中国パイプライン計画。もう一つは、ミャンマー南部ダウェイでの港湾開発計画である。

まず一つ目のミャンマー-中国パイプライン計画だが、これはベンガル湾に面したミャンマー・チャウッピュー港と中国雲南省昆明を結んで石油及び天然ガスを輸送しようというもので、総距離約1100km、見積り総コスト約20億ドル、完成予定2013年、その原油輸送能力は年間2200万トンでと見られている。
中国がこの計画を実行に移した背景には「米国の影響力の強いマラッカ海峡を迂回して、石油・ガスの宝庫たる中東湾岸地域へのアクセスを確保する」という戦略目標があるとされている。
そんなミャンマー-中国パイプラインについて、PIPELINES INTERNATIONALは、3月15日を以てイラワジ川越えの工事が開始されたことを報じている。単純な距離にしてこれでほぼ3分の1の敷設が終わった形である。完成予定年を考えると、現在順調に工事が進捗しているようだが、当該パイプラインの完成によって、マラッカ海峡から南・東シナ海にかけてのシーレーンへの依存を低減した中国が、同じ海域における自己抑制をどの程度緩めてくるのか、気懸りな所ではある。

次はダウェイ港開発である。これもまた、マラッカ海峡を経ずして直接東南アジア工業地帯とインド洋航路を繋げようという試みであり、現在タイが音頭を取って進めようとしている(もっとも、米国と良好な関係を維持しているタイがマラッ カ海峡をスルーしようとするのは、米海軍の脅威というよりも、海賊対策や商業上のコスト・タイムロス削減という面が大きいと考えられる)。
このダウェイ港開発には、日本の経団連も関心を示しているという報道がある。確かに、東南アジア大陸部で進む南北回廊や東西回廊、第二東西回廊といった高速道整備とダウェイ港開発をリンクさせることで、東南アジアに進出している日本企業が物流面で受ける恩恵も大きいと予想される。
しかし一方で、日本政府が「自由・人権・民主主義」を旗印に掲げてミャンマー制裁を実施している欧米諸国と歩調を合わせる姿勢を現時点で崩していないこと、更には3月11日に東日本大震災が発生したこともあり、ダウェイ港開発計画に日本政府・企業群がコミットしてくる可能性は低いだろう(なお3月24日にミャンマーで強い地震の発生が報じられたが、震源が東北部シャン州ということもあり、ミャンマー-中国パイプライン敷設工事及びダウェイ港開発計画に目立った影響は出ていないようだ)。

東南アジア大陸部や中国南奥部とインド洋の結節点という地理的ポテンシャルの高さ、制裁側に回る先進諸国と投資を活発化させる新興国との対比、その投資を活発化させる新興国内でのミャンマーに対する影響力を巡る競争(主な参加者:中国、インド、タイ)といった要素を織り込みながら、ミャンマーのインフラ開発が今後どのように展開していくか、今後も要注目である。


参考資料
・郭四志 「中国エネルギー事情」 2011年1月 岩波書店
・PIPELINES INTERNATIONAL 「Myanmar – China Pipeline commences Irrawaddy River crossing」 2011年3月15日
・JETRO 「深海港ダウェイ開発が始動(ミャンマー、タイ)」 2010年12月1日
・Bangkok Post 「Japanese keen on Dawei work」 2011年2月18日