2011年4月4日月曜日

第三百五十二段 北朝鮮マイニング

当ブログでも度々触れてきた北朝鮮の地下資源。しかし考えると、今まで何らかのニュースをとっかかりとして断片的に取り上げてきたばかりだったような気がする。

そんなわけで今回は、北朝鮮にとって地下資源が経済やエネルギー事情といった大枠の中で、どのような位置付けにあるのかについてまとめてみようと思う。
もっとも北朝鮮自体、各種統計データの殆どが非公開であり、そもそもそうした統計データの体系的収集を行っているのかさえよく分かってないという現状では、韓国政府や貿易相手国、各国際機関等の推計・調査に多くを依らざるを得ないのだが・・・・。

北朝鮮の外貨獲得手段
08年時点での北朝鮮の貿易額は69億ドルと見積もられており、内訳は輸入が輸出が28億ドル(前年比29%増)、41億ドル(前年比5%増)となっている。その中、鉱物性生産品の輸出額は約6.4億ドル(輸出全体の25%超)、輸入額は約12億ドル(輸入全体の34%強)を占めている。
一見すると鉱物性生産品の輸入が輸出を額、比率共に上回っており、「北朝鮮は地下資源が豊富なんじゃなかったのか?」と疑問を抱かれるかもしれないが、これは鉱物性生産品の中に「石油・瀝青油」が含まれているためである。北朝鮮は過去にも度々油田探査を行っているがこれに成功せず、供給を中国に依存している。その中国からの「石油・瀝青油」輸入額約4.1億ドル(量にして52.9万トン)が、輸入額全体の数字を大きく底上げしているのである(なお、09年になると中国の対北原油・瀝青油輸出は額約1.6億ドル、量38.5万トンと大きく目減りしているが、これは北朝鮮が同年行った核実験に対する制裁的措置と見られている)。
一方輸出品に目を転じれば、無煙炭や鉄鉱石、天然の砂、モリブデンやニッケル、ジルコニウム、タングステンといった鉱物資源がずらっと並んでおり、「北朝鮮の地下資源」が単なるハッタリにとどまらないものであること、北朝鮮の外貨獲得手段として無視できない存在であることが窺える。
主要な品目とその量、額を拾っていくと以下のようになる(数字は2008年時点のもの)。

          金額(1000USD)     数量(1000トン)
1.無煙炭    237,384          2,878
2.鉄鉱石    172,260          1,883
3.亜鉛の塊   77,644           38
4.砂       73,985           14,993
5.マグネシウム 25,796           136


上記の他、2008年にはシリコンの輸出が急増している点も興味深い所である
  
           2007年(1000USD)  2008年(1000USD)
シリコン輸出額  1,848           11,820
           
           2007年(1トン)      2008年(1トン)

シリコン輸出量  1,892            5,353

     
なお、こと中国への輸出価格については、中国が他国から鉱物資源を輸入する際の国際価格に比して著しく低く抑えられているという指摘もある。

北朝鮮のエネルギー源
北朝鮮のエネルギーとなると、日本では大抵の場合、中国から輸入される石油に注目が集まることが多い。確かにその産業面での汎用性や軍事面を考えると、それもある程度納得できる。
しかし、北朝鮮のエネルギー事情を支えているのは、自給可能な石炭である。2005年に大韓鉱業振興公社が発表した「鉱物資源埋蔵現況」によると、その埋蔵量は205億トン(無煙炭45億トン、有煙炭160億トン)。主要産地としては平安南道の徳川や順川等がある。
こうした豊富な石炭埋蔵量を背景として、北朝鮮のエネルギー構成は石炭:1140万TOE、水力:321.5万TOE、石油:123万TOE、その他78万TOEとなっており(2004年に韓国統計庁が推計値として出したデータによる)、大体電力の7割を石炭に依存する形となっている。
因みに、北朝鮮の火力発電所として最大の発電力を有するのは、平安南道にある火倉火力発電所(160万kw)だと言われている。また水力については、大日本帝国統治時代(1944年)に築かれた平安北道の水豊水力発電所が有名である(建設当時の発電能力は60万kw)。

北朝鮮重工業の原材料
北朝鮮で産出される各種鉱物資源が貴重な外貨獲得手段になっていることは前述したが、輸出に全てが回されているわけではなく、自国の重工業の原材料ともなっていることは贅言を要しない。ここでは特に一例として鉄鉱石を挙げることにする。
前述の「鉱物資源埋蔵現況」によると、北朝鮮における鉄鉱石の埋蔵量は30億トン。主要産地は咸鏡北道で、中でも茂山鉱山が埋蔵量13億トンでトップに立っている(同鉱山の開発は、戦前三菱鉱業によって始められた)。
自然、製鉄業もその周辺に集積しており、わけても清津の金策製鉄所は、製銑能力216.7万トン、製鋼能力240万トン、圧延鋼材生産能力147万トンと北朝鮮最大の製鉄能力を有している(因みにどうでもよい話、機械、電機・電子産業は慈江道煕川が主な集積地となっている)。
なお同製鉄所はコークスを使用しない製鉄法による「主体鉄」の生産でも知られるが、これが北朝鮮国内の産業にどの程度影響を与えているのかは、現状ではいまいち判然としない。

参考資料
・WTS 「朝鮮貿易年報2009」 2009年10月
・東アジア貿易研究会 「北朝鮮経済の現状と今後の展望」 2010年3月
・東アジア貿易研究会 「平成21年度北朝鮮の経済動向分析調査-北朝鮮経済総覧-」 2010年3月