2011年4月5日火曜日

第三百五十三段 北朝鮮トランスポート

前段に続いて北朝鮮についてのデータまとめ。今度は前段でも触れた北朝鮮の鉱物資源やその他輸出品を外に送り出すための交通インフラが対象。

鉄道
総延長は約5200km。北朝鮮における全輸送量を交通手段別に分けると9割が鉄道、1割が道路によると見られており、文字通り北朝鮮交通インフラにおける花形的存在である。2002年の韓国建設交通部調査を参照すると、以下に示すように、ある数字だけなら韓国にも引けを取っていないことが分かる。

            北朝鮮         韓国
貨物輸送量     91.37億トン      103.72億トン
機関車        1,119両        2,869両
客車         1,132両         1,636両
貨車         18,119両        15,328両

ただし、上記のような数字の裏で、線路の軌道が統一されておらず、1,520mm広軌の部分が156km、1,435mm標準軌道の部分が4,557km、762mm狭軌の部分が523kmといった具合に混在している、殆どが単線路線で平均時速が30~40kmに抑えられている、電力供給が不安定なために時刻通りの運行に支障をきたしいてる、といった問題点もまた数多い。
主要路線としては以下の路線が挙げられる。

・平義線(平壌~新義州 241km)
平壌と新義州を繋ぐ路線で、更に新義州からは中国・北京、天津まで至る。北朝鮮国内旅客輸送の6割、同貨物輸送の9割を占めるといわれる、北朝鮮の動脈的存在である。

・平南線(平壌~南浦~平南温泉 89km)
平壌と北朝鮮最大の貿易港たる南浦港を結ぶ路線。

・咸北線(羅先~南陽~清津 316km)
「国際貿易港としてのポテンシャルは高い」と評される羅先と大型港清津を繋ぐ路線。途中の南陽では更に中国・延吉とも繋がっている。専ら清津港と中国東北部との間の仲介輸送に利用されているとされる。

・平羅線(平壌~咸鏡~羅先 788km)
平壌と羅先を結ぶ路線。営業距離は北朝鮮最長である。羅先からは露・ハサンを経由してシベリア横断鉄道に繋がっている。

他の交通インフラ同様、中韓露がその整備及び自国路線との連結に関心を示しているとされるが、羅先~中国・琿春間鉄道の整備等といった例外を除き、いずれも2009年の北朝鮮核実験を機に頓挫・中断を余儀なくされているようである。

港湾
北朝鮮の主要港湾としては、以下の各港湾が挙げられる。

・南浦港
南浦特別市に所属する黄海に面した港湾で、荷役能力は750万トン、9つの埠頭を擁し、2万トン級船舶8隻、1万トン級船舶1隻の接岸が可能な北朝鮮最大の貿易港で、国際貿易貨物の3割を取り扱っているとされる。中国・上海や韓国・仁川との間に定期航路が開設されているようである。鉄道や道路の項目で触れるように、首都平壌とは平南線鉄道や高速道路で結ばれている。

・海州港
黄海南道に所属する黄海に面した港湾で、荷役能力は240万トン、ソ連支援下で建設されたセメント専用埠頭を有しているといわれる(戦前には小野田セメント工場があった)。1万トン級船舶3隻の接岸が可能。露・ウラジオストクとの間に定期航路が開設されているようである。

・清津港
咸鏡北道に所属する日本海に面した大型港湾で、大日本帝国時代には日本と大陸を結ぶ要衝でもあった。荷役能力自体は南浦港を上回る800万トン、1万トン級未満船舶の接岸に適した本港、1万トン級船舶が同時に10隻接岸可能な埠頭を要する西港、そして漁港で構成されている。本港では主に一般貨物や穀物、西港では主に鉄鋼関連を取り扱っているといわれる。露・ナホトカとの間に定期航路が開設されているようである。なお1999年能登沖不審船事件で海自や海上保安庁の追跡を振り切った「不審船」が最終的に入港したのが同港である他、日本人拉致事件被害者の入国ルート と目されていたり、在日朝鮮人帰国事業における北朝鮮側迎え入れ港でもあったり、と何かと北朝鮮の暗部とかかわりの深い港湾でもある。

・羅先港
羅先特別市に所属する日本海に面した港湾。荷役能力は300万トン、1万トン級船舶8隻と5千トン級船舶5隻が接岸可能な埠頭を有する。取扱貨物としては石炭や肥料、原木等が多いとされる。2004年にはクレーンやコンテナヤードの改修が行われ、コンテナ取扱量も増えたとされる。韓国・釜山との間に定期航路が開設されているようである。近年は中国が東北3省の海への出口として関心を強めており、2006年には同港の第3、第4埠頭について中国が50年間の使用権を獲得している他、2011年1月には中国吉林省琿春産の石炭を上海に向けて積み出した他、中国軍が港湾設備等保護のために駐留を開始したとも報じられた(後日中国当局は「駐留報道」を否定している)。

これらの他に元山や金策、先鋒等を含めた北朝鮮港湾全体での荷役能力については、約3.5千万トンと見積もられる一方、実際の貨物取扱量はその半分以下の1.5千万トン程度と見積もられている。

道路
北朝鮮において、輸送インフラとしての道路の位置付けは、前述のように鉄道に劣後したものとなっており、全国規模での整備よりも鉄道の駅や港湾といった各拠点間を結ぶ比較的短距離の輸送手段として捉えられているようである。
2006年時点でのWorld Road Statistics調査によれば、北朝鮮における道路の総延長距離は2.5万km強であり、舗装率については2.83%という低い水準にとどまっている。主要道路としては以下が挙げられるが、いずれにおいてもアスファルト舗装は平壌市内と高速道路の一部分に施されているに過ぎないとされる。

・平壌と新義州とを結ぶ西海岸幹線道路(229km)
・元山と羅津を結ぶ東海岸幹線道路(660km)
・平壌-南浦高速道路(44km)
・平壌-開城高速道路(170km)

北朝鮮の道路事情が貧弱なのは、ガソリンの供給不足や工業・経済の遅れによって自動車普及が極めて限定的な水準にとどまっていることが要因として挙げられているが、国民の国内移動を活発化させないためにわざと道路整備を送らせているという見方もある。
以上のような北朝鮮の道路状況について、その整備に関心を示している国として中韓露の名が挙がることがあるが、具体的な動きとしては、中朝間で、遼寧省丹東市と新義州の間に鴨緑江新橋の建設、吉林省琿春市と羅先港を繋ぐ橋及び道路の整備がそれぞれ合意されているに過ぎない(前者2009年10月、後者同年12月)。

参考資料
・WTS 「朝鮮貿易年報2009」 2009年10月
・東アジア貿易研究会 「北朝鮮経済の現状と今後の展望」 2010年3月
・東アジア貿易研究会 「平成21年度北朝鮮の経済動向分析調査-北朝鮮経済総覧-」 2010年3月