2011年4月19日火曜日

第三百五十五段 波斯湾ディプロマシー

シリアやリビアに世間の耳目が移行して暫く立つ中東情勢だが、こと世界最大の油田・ガス田集積地ペルシャ湾地域では、バーレーンを一つのホット・スポットとしたイランと湾岸諸国との緊張状態が依然として続いている。事態がどのような帰趨を見せるかは未だ予断を許さないが、一方で両陣営やその周辺に関係改善に向けた動きと推測されるものも散見される

1.カタール、クウェートからの対日エネルギー支援
4月16日にはカタールが日本に対して年間約四百万トンに及ぶLNG追加供給、4月18日にはクウェートが500万バレルの対日原油無償供与をそれぞれ打ち出しており、いずれも「東日本大震災という惨事に直面した日本への衷心・手助け」という面が大きく打ち出されている。
無論、今回のクウェートやカタールの動きにそうした善意が全く無いわけではないだろう。しかし、もう少し引いた視点で眺めた時、上記の動きについて、単にカタールやクウェートと日本との二国間関係や東日本大震災といった局所的なファクターのみならず、「イランとの対峙が続く湾岸諸国の中から、覇権国米国の同盟国かつ歴史的にイランとの関係も深い日本に対して恩が売られた」という構図が浮かんでこよう。
プレゼント(特に危急時の)に対して、お返しへの期待を公言する者はいないが、それに報いない者がどのような評価を受けるか? 様々の故事・古典をひっくり返すに、これについて洋の東西や宗教の別はあまり関係ないようだが、はてさて日本は贈り主や周辺が「見事!」と唸るような返礼が出来るのだろうか? 今後が興味深い所である

非常にどーでもよい話、他人から贈られた恩について、「基本複利なのでさっさと返さないとロクなことにならない」という認識を持っているのは自分だけだろうか・・・・?


2.エリトリア大統領からカタール首長への親書送付
4月18日のカタール英字紙は、エリトリア大統領からカタール首長に親書が送られたことを報じている。意外に知られていないが、紅海沿岸国エリトリアは自国内にイラン海軍の基地設置を認めていること等が示すように親イランの立場を採っている。一方のカタールもまた、度々の首脳相互訪問やエネルギー・通商における二国間関係強化で合意を重ねるといった具合に、イランと対峙している湾岸諸国の中では比較的イランと近い立場にある国である。
親書の中身については、簡単に「bilateral relations and issues of common concern」としか触れていないが、上記のようなエリトリアやカタールとイランとの距離を考えると、「issues of common concern」の中に、イラン側の意向や関係打開に向けた条件等が記されている可能性は十分にあろう。

参考資料
・GulfTimes 「Letter from Eritrea」 2011年4月18日
・Reutaers(日本語版) 「カタール、日本に液化天然ガスを追加供給」 2011年4月16日
・時事通信 「原油500万バレルを無償提供=420億円相当-大震災でクウェート」 2011年4月18日