2011年6月28日火曜日

第三百七十二段 東京電力株主総会があったようで・・・

本日2011年6月28日、東京電力で株主総会が行われた。日本を大きく揺るがせている原発災害のただ中ということもあり、世間の注目も大きかったようで、たとえば共同通信社は以下のように株主総会の様子を伝えている。
東京電力は28日、都内で株主総会を開催した。福島第1原発事故をめぐり議長の勝俣恒久会長が「多大な迷惑とご心配をかけ、心より深くおわびします」と謝罪。清水正孝社長は「かつてない重大な危機に直面」と説明した。
11年3月期決算で巨額の赤字を計上したことに対して、株主からは「全財産を売却して賠償に充てるべきだ」と経営陣の責任を追及する厳しい意見が相次いだ。一部の株主が提案した原発撤退議案をめぐっても議論が紛糾。
株主提案は否決される公算が大きいが、事故の影響が深刻な福島県の南相馬市と白河市が賛成の手続きを取るなど、原発の立地県内からも賛同の動きが出た。

こうしたマスコミ報道の一方で、当該総会に出席した東電株主がtwitterで内部の様子を伝えてくれているのが、今の世の中の面白い所である。今回はそんな呟きや関連報道を見て心に浮かんだ由無し事でも・・・・

まず、前席を中心として一種のサクラとして従業員株主が動員されていたようだが、これを聞くと思い浮かぶのが「従業員株主を前列に座らせてなした総会決議」として知られる判例(最高裁平成8年11月12日第三小法廷判決)。事実の概要と判旨を以下に掲げる(注1)。
<事実の概要>
Y会社の株主であるXは、平成2年6月28日、Yの定時株主総会に出席するため、本社ビルの前で早朝から、Yの原子力発電所に関する経営方針に反対する他の株主と共に列に並び、午前8時の開門と同時にビルに入り、受付手続きを済ませて会場に入場した。
Yは、昭和63年1月及び2月、原発反対派の者に本社ビルを取り囲まれたり、深夜数時間、ビルの一部を占拠されたことがあり、さらに原発に反対する株主グループから本件株主総会の前に1000項目を超える質問状の送付を受けていたことなどから、本件株主総会の議事進行が妨害されたり、議長及び役員席を取り囲まれたりといった事態が発生することをおそれ、Yの株主である従業員らに指示して、受付開始時刻前に会場に入場させ株主席のうち前方部分に着席させた。
会場には株主席として約230の椅子が並べられていたが、Xが会場に到着した時には従業員株主らがすでに最前列から第5列目までのほとんど及び中央部付近の合計78席に着席していたため、Xは6列目の中央部付近の着席した。Xは、本件株主総会において、議長から指名を受けた上で動議を1度提出した。
Xは、本件株主総会の会場において希望する座席を確保するために本社ビルの近くに宿泊して早朝から入場者の列に並んだのに、Yから従業員株主らとの間で右のような差別的取扱いを受けたことにより、希望する席を確保することができず、これによって精神的苦痛を被り、さらに宿泊料相当の財産的損害を被ったと主張して、Yに対し、不法行為に基づく損害賠償(慰謝料10万円と宿泊料10000円)を請求した。

<判旨>
株式会社は、同じ株主総会に出席する株主に対しては合理的な理由のない限り、同一の取扱いをするべきである。本件において、Yが・・・・本件株主総会前の原発反対派の動向から本件株主総会の議事進行の妨害等の事態が発生するおそれがあると考えたことについては、やむを得ない面もあったということができるが、そのおそれのことをもって、Yが従業員株主らを他の株主よりも先に会場に入場させて株主席の前方に着席させる措置を採ることの合理的な理由に当たるものと解することはできず、Yの右措置は、適切なものではなかったといわざるを得ない。
しかしながら、Xは、希望する席に座る機会を失ったとはいえ、本件株主総会において、会場の中央部付近に着席した上、現に議長からの指名を受けて動議を提出しているのであって、具体的に株主の権利の行使を妨げられたということはできず、Yの本件株主総会に関する措置によってXの法的利益が侵害されたということはできない。そうすると、Yが不法行為の責任を負わないとした原審の判断は、是認することができ、原判決に諸論の違法はない。


「事実の概要」を見るにつけ、「電力会社の株主総会は、昔から波乱含みだったんですねぇ・・・・」と改めてしみじみと思われることである。

また、今回の東電株主総会、株主からなかなかぶっ飛んだ「意見陳述」や「質問」もあったらしく、その議事録の内容も非常に気になる所だ。会社法に以下の如くある通り、東電の株主なり債権者になれば何の問題もなく閲覧・謄写請求が出せるのだが、ここはいっそのこと、書籍で出版してくれないだろうか・・・・?w
<会社法>
第三百十八条
 株主総会の議事については、法務省令で定めるところにより、議事録を作成しなければならない。
2  株式会社は、株主総会の日から十年間、前項の議事録をその本店に備え置かなければならない。
3  株式会社は、株主総会の日から五年間、第一項の議事録の写しをその支店に備え置かなければならない。ただし、当該議事録が電磁的記録をもって作成されている場合であって、支店における次項第二号に掲げる請求に応じることを可能とするための措置として法務省令で定めるものをとっているときは、この限りでない。
4  株主及び債権者は、株式会社の営業時間内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる。
 一  第一項の議事録が書面をもって作成されているときは、当該書面又は当該書 面の写しの閲覧又は謄写の請求

 二  第一項の議事録が電磁的記録をもって作成されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧又は謄写の請求
5  株式会社の親会社社員は、その権利を行使するため必要があるときは、裁判所の許可を得て、第一項の議事録について前項各号に掲げる請求をすることができる。



1.当該判例の事実概容並びに判旨は「別冊ジュリスト 会社法判例百選」より引用した。ただし、括弧書きが煩雑であると思われる部分については、著者判断で一部省いている


参考資料
・e-Gov 「会社法」 2005年7月26日公布 最終改正2009年7月10日
・江頭憲治郎等編 「別冊ジュリスト 会社法判例百選」 2006年4月 有斐閣
・共同通信 「福島の被災2市が脱原発賛成 東電株主総会、批判相次ぐ」 2011年6月28日