2011年11月28日月曜日

第四百二十五段 東欧原発事情

増え続ける電力需要対応への切り札とされ、福島第1原発事故以後も建設計画続行や新設計画の発表等が続く原発について(注1)、特に東欧(一部旧ソ連諸国や北欧含む)の10月~11月の動向についてまとめてみようかと思う。

ロシア
カリーニングラードではロスアトムによる原発建設(VVER-1200:2基 総出力2300MW)が進められており、ロシア電力大手のInterRAOはドイツに対して同原発からの電力供給を提案している(注2)。また、旧ソ連時代からの技術的連続性を武器として国営原子力企業ロスアトム子会社アトムストロイエクスポルト(以下「ASE」と表記)を通じて東欧諸国原発新設・拡張案件での受注獲得に積極的に動いている。

ブルガリア
露ASEと組んでベレネ原発建設計画(2008年建設工事開始 PWR:2基 総出力2000MW)を進めているが、建設コスト見積りを巡って対立が発生する等、計画は難航している。なお同案件についてはHSBCが資金調達についてアドバイザーを務めている(注3)。また、コズロドイ原発(1~4号機:VVER-440 5~6号機:VVER-1000)についても設備の近代化や7、8号機増設といった話が浮上している。

フィンランド(厳密には北欧の国だが・・・・)
ピュハヨキでの原発建設(総工費40億~60億ユーロ)が確定して2015年の着工開始を予定してい る。当該案件には東芝とアレバが応札しており、2012年にどちらが受注するかが確定する。また、同国では将来的に原子炉7基態勢とすべく、他にもう1基 の原子炉建設計画もある(注4)。

リトアニア
ビサギナスに総工費30~40億ユーロをを投じての原発建設を計画している。建設はGE日立が受注し、2020年の稼働開始が見込まれている。また当該原発プロジェクト会社が設置され、株主構成は51%:GE日立、34%:リトアニア政府、残余:エストニア、ラトビア、ポーランドの各投資家となっている(注5)。

チェコ
テメリン原発及び南モラビア・ドコバニ原発の拡張計画がある。前者は総額2000億コルナを投じて3号機と4号機を増設しようとするもので、10月に入札手続きが開始され、現状ではWH、アレバ、露ASEとチェコ・シュコダJSの連合の3社が参加している。応札は2012年中頃締切予定で、2013年末までに発注先が確定されることとなっている。現段階では露・チェコ連合の優勢が伝えられているが、チェコ情報機関は自国エネルギーインフラに露企業が関与することについて懐疑的な立場をとっているとも伝えられている(注6)。後者については、既存原子炉が寿命を迎える2045年までに1基以上の原子炉増設を計画している(注7)。

スロバキア
ボフニチェへの原発増設を目指してチェコと合弁企業を設立しており、2012年中頃に建設計画の予備調査をとりまとめることとしている。なお当該合弁会社の出資比率は、CEZ(チェコ国営電力会社)が49%、JAVYS(スロバキア国営エネルギー会社)が51%となっている(注8)。

ポーランド
原子炉2基からなる原発の建設計画があり、11月に同案件の入札が開始されている(2012年1月末締切)。応札した企業としてWH、GE日立、アレバ・EdF連合の名が挙がっている。原発の建設地は複数あるが、現状ではバルト海沿岸部のジェルノビェツが最有力視されている。建設コストについては現段階で350億ズロチが見込まれている(注9)。

ベラルーシ
露ASEを発注先としてフロドノに原子炉(AES-2006)2基からなる原発の建設を計画している。2012年第1四半期内に全交渉妥結と条件確定を完了させて着工し、2017年に1号機、2018年に2号機がそれぞれ稼働開始となる予定である。建設費用として90億ドルが見積もられているが、ロシアのプーチン首相(来年の大統領選で大統領職への返り咲きが有望視されている)は、ベラルーシに対して原発建設を目的としたローン(総額100億ドル)を供与する意向を示している。(注10)

この他、2011年10月~11月においては目立った動きが報じられなかったものの、ハンガリーやスロベニア、ルーマニアにおいても既存原発の拡張・近代化計画が存在している(注11)

これらの動きを年表及び地図にまとめると以下のようになる。

2011年10月
・チェコ・テメリン原発拡張の入札開始(翌年中頃締切)
2011年11月
・ポーランド原発建設の入札開始(翌年1月末締切)
2012年
・フィンランド・ピュハヨキ原発建設業者確定
・中頃にスロバキア・ボフニチェ原発計画に係る予備調査取りまとめ
2013年
・ポーランド原発建設発注先確定予定
・チェコ・テメリン原発拡張発注先確定予定
・ブルガリア・ベレネ原発1号機稼働開始予定
2014年
・ブルガリア・ベレネ原発2号機稼働開始予定
2015年
・フィンランド・ピュハヨキ原発建設開始予定
2016年
・ポーランド原発建設開始予定
・露カリーニングラード原発1号機稼働開始予定
・ルーマニア・チェルナボーダ原発3号機稼働開始予定
2017年
・ベラルーシ・フロドナ原発1号機稼働開始予定
・ルーマニア・チェルナボーダ原発4号機稼働開始予定
2018年
・ベラルーシ・フロドナ原発2号機稼働開始予定
・露カリーニングラード原発2号機稼働開始予定
2020年
・ポーランド原発1号機稼働開始予定
・リトアニア・ビサギナス原発稼働開始予定
2022年
・早ければチェコ・テメリン原発3号機が稼働開始(翌年内になる可能性もあり)
2024年
・チェコ・テメリン原発4号機稼働開始予定
2030年
・ルーマニア新原発(トランシルバニア地方に設置予定)稼働開始予定
2045年
・チェコ・ドコバニ原発既設炉が寿命を迎える

東欧原発新設・拡張地図(計画段階のもの含む)

これら東欧諸国が原発新設・増設を積極的に進めている背景には、国内要因と国外要因がある。
国内要因は、各国の生活水準向上や経済活動活発化による電力需要の高まり、そして大気汚染等の問題をもたらす火力発電の代替、この二つからなる。
国外要因は、ロシアに電力やエネルギー資源を依存することへの歴史的な警戒感、そして人口でも経済力でも欧州最大の勢力たるドイツへの売電、この二つからなる。
これら4要因のいずれが最も有力な要因かは各国によって異なるが、一般にポーランドとリトアニアの原発新設については対露警戒感という要因が強く、逆に露カリーニングラードやベラルーシにおける原発新設はドイツへの売電という要因が大きいとされている。

なお全ての東欧諸国が電力・エネルギー需要への対応策として原発一本槍というわけではなく、ポーランドがシェールガス、ルーマニアが風力といった具合に原発建設と並行して非在来型のエネルギー資源・電源開発を進めている国もある。

注釈
注1.なお、2011年3月11日~11月27日の時点で、原発の新設・増設計画の停止といった脱原発政策を打ち出した国は、ドイツ、イタリア、スイス、イスラエルにとどまっている。
注2.InterRAO提案については「東欧経済ニュース」No749参照のこと。
注3.「原子力年鑑」2011年版によれば、当初40億ユーロであった建設コストは100億~200億ユーロまで膨張しているという。なお「東欧経済ニュース」No745によれば、ブルガリア国営電力企業NEKと露ASEとの建設コスト負担を巡る交渉は、最終合意期限が2012年3月まで延期されることとなった。
注4.共同通信の2011年10月6日付「ロシア・東欧ファイル」参照のこと。
注5.当ブログの第三百八十八段「ロシアは天丼がお好き」をご参照頂きたい。
注6.チェコ・テメリン原発拡張については「東欧経済ニュース」No746参照のこと。
注7.チェコ・ドコバニ原発拡張については「東欧経済ニュース」No748参照のこと。
注8.「東欧経済ニュース」No746参照のこと。
注9.ポーランド原発案件については、「東欧経済ニュース」No746並びに当ブログの第三百八十八段「ロシアは天丼がお好き」をご参照頂きたい。
注10.World Nuclear Newsの2011年10月11日「Contract signed for Belarusian reactors」、ITARTASSの2011年11月10日「Belarus, RF to sign top priority contracts on NPP building in Dec 」及び2011年11月25日「Russia to grant up to $10 bln loan to Belarus for NPP project – Putin」を参照のこと。
注11.JBICの「中・東欧7 カ国における原発開発計画とその現状」を参照のこと。


参考資料
・FBC 「東欧経済ニュース」No745 2011年10月12日
・FBC 「東欧経済ニュース」No746 2011年10月19日
・FBC 「東欧経済ニュース」No748 2011年11月2日
・FBC 「東欧経済ニュース」No749 2011年11月9日
・ITARTASS 「Belarus, RF to sign top priority contracts on NPP building in Dec 」 2011年11月10日
・ITARTASS 「Russia to grant up to $10 bln loan to Belarus for NPP project – Putin」 2011年11月25日
・JBIC 「中・東欧7 カ国における原発開発計画とその現状」 2010年11月
・World Nuclear News 「Contract signed for Belarusian reactors」 2011年10月11日
・共同通信 「ロシア・東欧ファイル」 2011年10月6日
・日刊工業新聞社 「原子力年鑑」2011年版 2010年11月

<当ブログ関連段>
・第三百八十八段「ロシアは天丼がお好き」