2012年3月31日土曜日

第四百五十五段 羅先地区開発続報

最近、何かと世間の耳目を集める北朝鮮の割に注目を集めない話題の話。

当ブログでも度々取り上げてきた北朝鮮・羅先開発地区の動向だが、共同通信の2012年2月16日付「ロシア・東欧ファイル」によれば、同開発地区の羅津港にて増設予定の4~6号埠頭について中国が建設及び50年にわたる使用の権利を獲得したという。この情報と当ブログ第三百七十段で取り上げた同港における埠頭の割当状況を合わせてみると以下のようになる。

・第1埠頭:中国に10年間の貸借。
・第2埠頭:スイスに貸借(期間不明)。
・第3埠頭:ロシアに50年間の貸借。
・第4~6埠頭:中国が建設し、完成後は50年にわたって貸借

なお
当該記事によると、中国は第4埠頭を7万トン級船舶の停泊が可能なものとして建設する他、羅津港隣接地域への空港、火力発電所建設を含めて総額30億ドルの投資を行う予定であるという(注1)。同港及びその周辺地域の開発についてはこの他、信憑性への疑問はあるものの中国による出力40万KW級原発建設計画があるという話も伝えられている(注2)。

また、今年後半にはロシア・ハサンと羅津港を繋ぐ鉄道(総延長54km)の商業運行開始が予定されており、北朝鮮は当該鉄道によって今年10万トンの石炭受入れを計画している(将来的には年300万トンまで拡大の見込み)(注3)。
鉄道を通じて同港に搬入された石炭の最終的な仕向け地として容易に想像されるのは中国だが(注4)、日本海を挟んで対岸に位置する日本においても東日本大震災に伴う各原発の停止によって火力発電への依存が進んでおり、日朝間に困難な政治マターが存在することを踏まえた上でも今後の展開が注目される(注5)。

北朝鮮が関係する大規模開発事業については、上述の羅先開発計画に加え、当ブログ四百六段でも取り上げた露朝韓ガス・パイプライン計画が存在する。北朝鮮によるロケット発射を巡って朝鮮半島情勢が慌ただしくなっている現状だが、各種報道を見る限り、北朝鮮を含んだ6カ国協議諸国の中からこれら開発計画について「破棄」「凍結」「停止」の類の表明又はそれを求める声は出ていないようである(注6)。

愚考するに、北朝鮮の弾道ミサイルの標的となる可能性が現状で極めて低い中国とロシア、そして北朝鮮が既に実戦配備していると目される短距離・中距離弾道ミサイルの射程距離内に国土の殆どが存在する日本や韓国にとって今回のロケット発射が既定の安全保障戦略に与える影響はさほど大きくないこと、残る米国にとってもアフガニスタンやイラン核開発問題を抱えた状態で北朝鮮現政権の急速な崩壊が発生することは望ましくないであろうことから、恐らく北朝鮮政府が核実験にまで歩を進めない限り、これら開発計画が政治的理由によって停止に追い込まれる可能性は今後も極めて低いと思われる。

注釈
注1.共同通信の2012年2月16日付「ロシア・東欧ファイル」を参照のこと。
注2.共同通信の2012年1月20日付「ロシア・東欧ファイル」を参照のこと。
注3.共同通信の2012年3月2日付「ロシア・東欧ファイル」を参照のこと。
注4.2011年1月には羅津港に運び込まれた中国吉林省産石炭が上海へ向けて出荷されている。また、同港に隣接する中国琿春も韓国釜山との間に直結する輸送経路を開拓している。
注5.北朝鮮・羅津港から日本・新潟港までの直線距離は大体870km強といった所。なお、羅津から直線距離にして約130kmほど北にあるロシア・ウラジオストクでは伊藤忠、石油資源開発、丸紅等日本企業5社がガスプロムと合同でLNGターミナル建設計画を推進している。
注6.聯合ニュースの2012年3月31日「<核サミット>韓ロ首脳 北朝鮮のミサイル発射に反対」によれば、ロシア-韓国両国は「ロシアから北朝鮮経由で韓国に天然ガスを供給するパイプライン建設プロジェクトについては、協議を継続する」ことで合意したという。


参考資料
・共同通信 「ロシア・東欧ファイル」 2012年1月20日
・同上 「ロシア・東欧ファイル」 2012年2月16日
・同上 「ロシア・東欧ファイル」 2012年3月2日
・聯合ニュース 「<核サミット>韓ロ首脳 北朝鮮のミサイル発射に反対」 2012年3月31日