2012年5月5日土曜日

第四百五十八段 中東一帯の原発動向 追補

当ブログ第三百七十七段で取り上げた中東及びその周辺諸国の原発事情だが、その後、色々な動きが出てきたので、追補的なものを一つ・・・・。

アルメニア
同国の電力の約40%を賄いながらも、老朽化や地震への懸念から新原発と交代する形で2017年の閉鎖が予定されていたメツァモール原発2号機だが、肝心の新原発の完成予定が2020年にずれ込んだことを受け、その閉鎖予定もまた2020年まで延長されることとなった(注1)。
なおメツァモール原発隣接地に建設予定となっている新原発の建設コストは、アルメニアの年間国家予算のほぼ1.5倍となる45億ドル程度と見積もられており、協力相手であるロスアトムやその背後にいるロシア政府からの資金援助が重要な位置を占めている。
また、メツァモール原発2号機稼働延長にしろ新原発稼働開始にしろ、「使用済み核燃料をどうするか?」という問題は避けては通れないが、国境線の8割を実質的な敵対国であるトルコやアゼルバイジャンと接し、残る2割のイランやグルジアもまた「使用済み核燃料の領内通過拒否」姿勢をとっている現状では、日本の関東地方の面積とほぼ同程度の狭い国土に使用済み核燃料が蓄積され続けることになろう(注2)

クウェート
2022年までの原発建設を計画していたクウェートだが、2011年の東日本大震災に伴って発生した福島第一原発事故を受け、同年7月に計画中止を決定していたことが判明した。これによって中東における原発建設断念国はイスラエルに加えて2カ国となった(注3)。

トルコ
黒海沿岸部のシノップに建設予定の原発について、これまで韓国電力公社や日本の東芝の名が受注候補として取沙汰されてきたが、4月9日のエルドアン首相訪中に合わせトルコ-中国両国間で原子力協定が成立したこと(注4)、そして、ユルドゥズ・エネルギー天然資源相がカナダとも原発建設に向けた交渉中であることを明らかにしたことにより(注5)、受注獲得レースの帰趨がより見通し難いものとなってきた。
仮にもし中国が当該案件を受注することになれば、同国にとってはパキスタンに続く2例目の原発輸出となる。

ヨルダン
アンマンから40kmほど北のマジデルにて建設が予定されている原発について、今までアレバと三菱重工の日仏連合、ASE(ロスアトム子会社)、カナダ原子力公社を中心としたカナダ連合が三つ巴の受注競争を繰り広げていると報じられてきたが、ここにきてカナダ連合のレース脱落が判明した(注6)。
なおヨルダンは自国内でのウラン鉱脈開発を進めているが、アレバがそのパートナーとなっている。

注釈
注1.News.Azの2012年4月17日「Ministry of Energy tries to extend life of Armenian NPP’s second power block」を参照のこと。
注2.こうした困難な問題の存在にもかかわらず、アルメニア政府・国民の原発支持は強く、環境保護団体エコルルのザラフヤン代表は共同通信のインタビューに答えて「(アルメニア)政府や国民は脱原発運動を敵視している」と述べている。この背景には、歴史・領土問題で激しく対立しているトルコやアゼルバイジャンがアルメニア原発の停止を要求していることへのナショナリズム的な反発に加え、1988年の大地震を受けて十分な代替電源の用意もないまま原発停止に踏み切ったことによる経済混乱や暖房用エネルギーの不足による冬期間の凍死者増加といった痛みの記憶が未だ生々しいことがあるようである。2011年の東日本大震災の結果としてエネルギー環境の急変に見舞われた日本国の今後を予測する上で興味深い先例といえよう。
注3.共同通信の2012年2月22日「クウェート、原発計画を中止 福島事故受け、昨年7月」を参照のこと。
注4.Hurriyet Daily Newsの2012年4月9日「Turkey PM oversees nuclear agreements with China」を参照のこと。
注5.Sankeibizの2012年4月21日「トルコ原発、カナダも交渉 日中韓と競合」を参照のこと。
注6.ロイターの2012年4月30日「ヨルダン、原発発注先候補に三菱重・仏アレバ連合とロシア社を選定」を参照のこと。


参考資料
・Hurriyet Daily News 「Turkey PM oversees nuclear agreements with China」 2012年4月9日
・News.Az 「Ministry of Energy tries to extend life of Armenian NPP’s second power block」 2012年4月17日
・Sankeibiz 「トルコ原発、カナダも交渉 日中韓と競合」 2012年4月21日
・共同通信 「クウェート、原発計画を中止 福島事故受け、昨年7月」 2012年2月22日
・同上 「ロシア・東欧ファイル」 2012年3月13日
・ロイター 「ヨルダン、原発発注先候補に三菱重・仏アレバ連合とロシア社を選定」 2012年4月30日