2012年11月7日水曜日

第四百七十段 スクランブルは原油価格につれ

とんとブログを更新してなかったので、軽めの内容でサクッとリハビリ。

最近の日本、辺境島嶼部の領有権を巡って周辺国との間で展開される海上での根競べ、力比べに注目が集まっている。

だがそうした周辺国との角逐というか鍔迫り合いは何も海の上だけで繰り広げられているわけではない。普段であれば見上げることもないまま一日を終えることも珍しくない空の上でも、日本と周辺国は活発な鍔迫り合いを繰り広げているのだ。

それを如実に示すのが、防衛省統合幕僚監部がサイト上で四半期、半期、年毎にそれぞれ公表している「○○○の緊急発進実施状況について」という資料である(注1)。

資料の内容は、タイトルが示す通り、周辺諸国が日本列島近辺に種々の目的で派遣した軍用機に対して空自機がスクランブル発信した回数をそれぞれの期にわたって表示するというもの。
現在ネット上で公開されている分では、国別のスクランブル回数については平成16年度以降しか確認できないものの、年度毎の総数であれば昭和33年度からの数字を棒グラフと共に確認することができるという実に興味深い資料なのだ。

そして国別のスクランブル回数を個人的に棒グラフ化したのが以下の図表である(注2)。



このロシアが毎年コンスタントに太宗を占めている有様を見てふと思った。ロシアという国は、経済面を中心に原油価格動向に大きく左右される国である。そのロシアの軍用機がスクランブルの太宗を占めている。ということは、空自のスクランブル回数と原油価格動向は意外に相似した傾向を示すのではないか、と。

そこで、OPECが公表している原油バスケット価格推移の年次データの動き(2004年~2011年)と重ね合わせてみると、以下のような感じになる(石油価格の価格軸(ドル/バレル)は向かって右側の縦軸)(注3)。



睨んだ通り、結構似通った動きをしているではないか。

比較したのが平成16年度から平成23年度までのスクランブル回数と2004年から2011年までの原油価格動向と、完全に同期なデータではないのが難点というか瑕ではあるが、概ね、2004年辺りから2011年辺りにかけての原油価格と空自スクランブル回数は似通った動きを示しており、その要因としてロシアという回路の存在を仮定することは、そう荒唐無稽・根拠薄弱な見方でもないだろう。

さて、個人的な今後の注目点は、この傾向が中国ファクターによってどの程度変化していくのかという点である。

注釈
注1.「○○○」の箇所には、それぞれ対象となっている期間が入る。なお現時点での最新版は「平成24年度上半期の緊急発進状況」である。
注2.なお緊急発進対象機の所属国分類については、平成16年度のデータを載せる「平成21年度の緊急発進状況」ではロシア、中国、台湾、その他となっており、それ以降ではロシア、中国、台湾、北朝鮮、その他となっている。
注3.原油価格指標として一般的なWTIではなく、わざわざOPECバスケット価格を用いたのは、諸般の事情がそうさせたのであり、決して「OPECデータを使った方が通っぽい感じが出てカッコいいんじゃないか」という考えに捉われたからではない、決してない。なおWTIの年次データを用いても空自のスクランブル回数国別推移と原油価格推移は相似形を示すことは付記しておく。

参考資料
・OPEC 「OPEC Basket Price」
・世界経済のネタ帳 「原油価格(WTI)の推移(年次)」
・防衛省統合幕僚監部 「平成24年度上半期の緊急発進状況について」 2012年10月28日
・同上 「平成20年度の緊急発進状況について」 2009年4月23日