2013年2月10日日曜日

第四百七十八段 中国北海艦隊艦艇、南シナ海へ行く

近年外洋遠洋での活動を活発化させている中国人民解放軍海軍(以下「PLAN」と表記)だが、それについて興味深い記事を見かけたので、それについての与太話というか妄想というかを一つ・・・・。

2013年1月31日日付の中国军网に以下のような記事が掲載された(注1)。記事の大意としては、PLAN北海艦隊に所属する旅滬級駆逐艦青島と江凱II級フリゲート艦煙台及び塩城の計3隻が、同年月日10時頃に、宮古海峡(沖縄本島と宮古島の間の海域)を超えて西太平洋(フィリピン海)に入り、同海域で訓練を開始したというものである。

新华社青岛舰1月31日电(黎云、米晋国)1月31日10时许,中国海军舰艇编队按预定时间通过宫古海峡,进入西太平洋海域,开展例行性训练。这是2013年度中国海军首次在岛链外进行军事训练活动。

宫古海峡,又称宫古水道,是琉球群岛的主岛冲绳岛和宫古岛之间的一条海上航道,宽约145海里,是琉球群岛中最宽的一条海峡。宫古海峡属国际水道,舰艇、飞机具有航行、飞跃自由,事先无需申请或者得到批准。

此前,国防部新闻事务局发布了中国海军舰艇编队将赴西太平洋海域训练的消息。在国际海域进行远海训练符合国际法和国际惯例,是世界各国海军训练的通行做法。2012年度,中国海军共组织进行了7批次远海训练,实现了远海训练常态化。

1月31日凌晨5时50分,中国海军舰艇编队导弹驱逐舰青岛舰,导弹护卫舰烟台舰、盐城舰,依次进入宫古海峡,向西太平洋海域航渡。经过4个小时航行,编队于上午10时许,通过宫古海峡进入西太平洋海域。编队离港时遭遇罕见大雾,并在通过宫古海峡时遭遇较大风浪,编队及时调整航行方案,按预定时间到达指定海域。

春节期间,中国海军舰艇编队将在远海开展多课目训练。

「PLANの艦艇が訓練のために宮古海峡を越えてフィリピン海入り(そしてそこで訓練)」という動き、最近では特に珍しくもなくなってきたものであり、始め当該記事を読んだ時も、以下の地図に示すような「宮古海峡通過→フィリピン海入り→同海域で訓練→宮古海峡を越えて帰港」という従来のパターンが繰り返されるものだと勝手に思い込み、さほど興味も抱いていなかった。

しかし、宮古海峡を越えてフィリピン海入りした青島と煙台、塩城の3隻は、その後従来のパターンとは異なる動きを見せてきたのだ。それを伝えるのが、同じく中国军网の2013年2月1日付の以下の記事である。
新华社青岛舰2月1日电(黎云、米晋国)由海军北海舰队3艘军舰组成的中国海军舰艇编队,2月1日11时40分许按照预定计划通过巴士海峡,进入我国南海海域。

1日凌晨6时40分,中国海军舰艇编队青岛舰、烟台舰和盐城舰以单纵队行进的方式,依次进入巴士海峡。因遭遇较大风浪,3艘军舰始终保持一定的间距和航速,经过5个小时的航行,顺利通过巴士海峡进入南海海域。未来几天,编队将在南海巡航,并开展多项训练。

巴士海峡位于我国台湾岛与菲律宾吕宋岛之间,是连接南海和太平洋的重要海上通道,是香港通往关岛和檀香山的重要航道。巴士海峡属国际航道,按照联合国海洋法公约规定,舰艇、飞机具有航行、飞越的自由。

截至目前,中国海军舰艇编队已连续航行3昼夜,总航程达1200多海里。期间,经受了恶劣气象和复杂海况的考验。
上記記事によると、西太平洋(フィリピン海)に入った青島と煙台、塩城の3隻は、次に進路を西にとって台湾とフィリピン・ルソン島との間に位置するバシー海峡を越え、パトロールや訓練を実施するために南シナ海へと入ったというのである。
南シナ海が中国も含めた沿岸諸国が領有権を巡って対立する西沙諸島や南沙諸島を抱えるアジアのホットスポットであることは、以前より度々報じられたり指摘されてきた通りである。そんな海域に、当該海域を主担当とするPLAN南海艦隊以外の艦隊に所属する艦艇が、従来は殆ど見られなかったルートから入ったというのだから、実に興味深い(注2)。

なお、そんなPLAN艦艇の今回の動きを示したのが以下の地図である。


そして、この宮古海峡通過→フィリピン海入り→バシー海峡通過→南シナ海入りという、従来のパターンとは異なるPLAN艦艇の動きを目にして、次のようなシナリオが頭に浮かんできた。

20××年×月、南沙諸島近海で操業していた中国漁船に対し、A国沿岸警備隊が「領海を侵犯した不法操業である」として拿捕を図った所、たまたま近くを巡航中であった中国公船が現場に駆けつけ、A国沿岸警備隊による中国漁船拿捕を阻止しようとした。不幸なことにその過程でA国側と中国側にそれぞれ負傷者若しくは死者が発生する事態となってしまった。
当該事態が報道に乗り、A国と中国ではそれぞれ相手国に対する強硬措置を訴える声が盛り上がりを見せた。
かねてより中国では、支配層の腐敗や貧富格差の拡大、経済成長の鈍化等によって共産党支配に対する国民の信認が大きく揺らいでいた。国内の動揺に危機感を深める共産党指導部は、当該事態を奇貨とし、国民の共産党に対する不満をA国への敵愾心を煽ることでガス抜きすると同時に、挑戦的なA国に「懲罰」を与えることで「国土・国民の守護者」として共産党の威信を回復する方策を採用した。
早速中国共産党は人民解放軍に命を下し、南シナ海を管轄する南海艦隊の艦船を南沙諸島一帯に派遣した。一方のA国もまたこれに対抗するため海軍艦艇を当該一帯に派遣した。
結果、中国側とA国側で戦闘の火ぶたが切って落とされることになったのだが、A国もまた最近の好調な経済成長を原資に軍備の近代化に励んでいたこと、そしてA国同様中国との間で西沙・南沙諸島問題について領有権対立を抱える国々がA国に直接的間接的な支援を提供したことにより、当初中国共産党指導部が夢見ていた「A国海軍に速やかに一撃を加えて屈服させる」事態は実現せず、中国共産党指導部は焦りの色を深めていった。
そこに加え、中国とA国との南沙諸島紛争による海上ルートの動揺がもたらす世界経済への悪影響を重く見た米国が当該紛争に介入するそぶりを見せてきた。
ここに至って中国共産党は、当初投入した南海艦隊のみの戦力では米国の介入が始まる前に望ましい形でA国との決着をつけることが困難と判断し、北海艦隊及び東海艦隊の戦力を増援として南シナ海に派遣することを決断した。
北海艦隊及び東海艦隊の艦艇が南シナ海に抜けるには、台湾海峡ルートと宮古海峡-フィリピン海-バシー海峡ルートがあるが、今回は政治的若しくは気象上の理由等から宮古海峡-フィリピン海-バシー海峡ルートが選択された。
南シナ海へ援軍として向かう中国の北海艦隊及び東海艦隊の艦艇が宮古海峡に近づきつつある中、果たして日本はどのような行動を示すのか。

以上のシナリオにおいて、日本がとり得る道は単純に二つ。
一つは、南シナ海に増援に向かう中国北海艦隊・東海艦隊の艦艇が宮古海峡を通過するの何もせず見守ること。これは単なる不作為ではなく、当該南シナ海紛争において日本が実質的に中国側の立場をとることを意味する。
もう一つは、自衛隊を投入して中国北海艦隊・東海艦隊の宮古海峡通過を阻止すること。これは南シナ海紛争において日本が中国に敵対する道を選択し、それを明確にすることを意味する。
どちらを選んだとしても、後の対中関係、対東南アジア関係、そして恐らくは対米関係に大きな影響や傷を残しかねない非常にシビアな決断となることは間違いないだろう。

そんな与太事を考えてみた休日の夜。はてさて、現実の南シナ海領有権問題はどのように展開していくのだろう?

注釈
注1.当該記事のリンク先は、http://chn.chinamil.com.cn/title/2013-01/31/content_5203334.htm
注2.当該記事のリンク先は、http://chn.chinamil.com.cn/jwjj/2013-02/01/content_5204991.htm なお、 中国海军のサイトに2013年2月7日付けで掲載された「海军联合机动编队再次经巴士海峡进入西太平洋」によれば、南シナ海での巡航や訓練を完了した北海艦隊艦艇(艦名は挙げていないが、前後の報道から青島と煙台、塩城のことでほぼ間違いないだろう)は、再度バシー海峡を越えて西太平洋(フィリピン海)に入ったとのことである。

参考資料
・中国海军 「海军联合机动编队再次经巴士海峡进入西太平洋」 2013年2月7日
・中国军网 「中国海军舰艇编队通过宫古海峡进入西太平洋海域」 2013年1月31日
・同上 「中国海军舰艇编队按预定计划通过巴士海峡 进入南海海域」 2013年2月1日