2013年5月19日日曜日

第四百八十二段 いろいろやろうぜ(海で)

「最新」と言うにはややとうがたったニュースだが、表題の如く、PLAが東シナ海で珍しいことをやっていたので、そのまとめ。

まず一つは、PLAで配備が進んでいる 新型国産攻撃ヘリWZ-10(武直10)が、東シナ海海上にて海上作戦能力向上等を目的とした訓練を実施したというもの(注1)。
攻撃ヘリは一般的に陸軍に配備されるもので、その点は中国人民解放軍のWZ-10も変わりはない。そんなWZ-10が、従来の担当範囲である陸上を超えて海上での作戦能力向上を目的に訓練を実施したというのだから、なかなかに興味深い事象である 。

訓練が実施されたのは4月8日。新華社サイトが以下のように報じている(注1)

4月8日,某海域深处,机声轰鸣,铁翼飞旋,数架战鹰时而高仰角拉起、大坡度俯冲;时而快速精确编队、紧急疏散。

这是南京军区某陆航旅武直-10飞行编队首次挺进深海海域,组织海上大机群、远距离、超低空突防训练。

早上7点30分,战鹰超低空编队冲入海空、疾速向南。挺进深海,飞行员似乎有了更好的施展舞台,战机也格外勇猛。

这时,一直贴着海面的机群突然拉起,蛟龙出海般仰头扶摇直上,在最高点悬停片刻便俯冲而下。

“刚才是机群选择隐蔽机动航线,对海上目标进行模拟攻击!”空中指挥员、该旅旅长司启富介绍。

“海上远距离飞行,如何实施精确指挥?”笔者发问。

司启富说:“我们构建了岸上、空中、海上三位一体的指挥控制网,利用中继指挥、编队指挥、数据指挥等多种方法,实施不间断的指挥控制与引导。”

编队继续挺进,海浪越来越大。这时,机群突然以20度左右的俯角先后冲向海面,像数柄锋利匕首刺向大海。该旅领航科长王华东介绍:“这是掠海飞行,最低时离海面不到10米,这套战术动作特别考验飞行员的技术和心理素质。”

“为什么要飞这么低?”这样的惊险动作令笔者心有余悸。

“攻击对手首先要保存自己。未来海战,高度越低越能规避敌雷达探测,越能凸显超低空杀手的优势!”盛建忠参谋长告诉笔者。

“我们利用传统与现代、人工与系统相结合的领航方式,提高了飞行员远海精确领航的能力。”王华东告诉笔者。

此时,机群迅速变成稳固的大三角队形,间隔均匀、高度一致,就像被一个人操控。

正午时分,4个多小时的飞行训练结束。喧嚣一时的大洋恢复了平静,但它记录了中国新一代武装直升机飞向深海的壮美航迹。

谈起这次训练的收获,飞行大队陈德刚大队长难掩兴奋:“我们进行过多次深海训练,武直-10在战术机动、火控系统和指挥通信等方面的优势明显。”

据现场指导的军区陆航处处长李召斌介绍,这是全军陆航部队武直-10首次亮剑深海练兵场。检验了远海复杂海况下,大机群编队掠海模拟攻击、远距离超低空突防等课目,在海上最大载重飞行、最大航程飞行、最远指挥通信、多手段指挥引导等方面取得重大突破,有效提升了海上远距离作战能力。(邱柏星 叶建军)
2013年4月8日付 新華社

今回の海上訓練に投入されたWZ-10攻撃ヘリだが、その最大航続距離は大体800kmと目されている。従って、戦闘地域に向かってそこで戦い、帰還するということを考えると、その作戦行動半径は大体260km前後(注2)。これがどんな意味を持ってくるかを示したのが以下の地図。



北から順に、中国大陸と東シナ海ガス田地域との距離が大体320~350km(地図内赤矢印1)、中国大陸と尖閣諸島の距離が大体360km(地図内赤矢印2)、そして最後に中国大陸と台湾台北との距離が大体200km弱。これを見ると、WZ-10の海上訓練が持つ意義と言うのは、現時点では日本国にとってよりも台湾にとっての方が大きいと考えられよう。

もう一点気になったのが、5月6日に同じく新華社が報じた以下のニュース。

按照海军年度军事训练计划,由东海舰队导弹护卫舰怀化舰、佛山舰、综合补给舰千岛湖组成的远海舰艇编队,今天上午驶离福建某军港,赴西太平洋进行远海例行训练。(央视记者胡善敏)
(2013年5月6日付 新華社)
記事内容としては、江衛Ⅱ級フリゲート艦懐化、江滬-V級フリゲート艦佛山、補給艦千島湖の3隻が、西太平洋(フィリピン海)での訓練のため、当日午前中に福建の港から出航したというもの。
これだけであれば、PLANが近年活動を活発化させていることを考えるとさして珍しくないのだが、興味深いのが懐化、佛山、千島湖の動きである。

まず懐化、佛山、千島湖は3隻揃って福建から船出した。その後、当該船団はフィリピン海を目指して航路を西に取るのだが、その際、彼らは通常よく用いられる宮古海峡ではなく、与那国島-西表島間の海域を通過している(注3)。
更に、こうした動きをキャッチした日本防衛省の発表によれば、当該海域を通過したのは懐化、佛山の2隻のみ(注4)、つまり船団は途中で二手に分かれ、千島湖は1隻で東シナ海に留まった形になる。
その後、フィリピン海入りした懐化と佛山は13日に宮古海峡を通過して東シナ海に戻ったことが確認されている(注5)。船団のその後の動きについては報道が無いので推測になってしまうが、恐らく東シナ海入り後、懐化と佛山は東シナ海で待機していた千島湖と合流して帰港したのだろう。
こうした船の動かし方も以前は殆ど目にすることのなかったパターンである(少なくとも報道等で表沙汰になっているものに関しては)。



こうしたPLAの動きから何が言えるか。

中国政府や軍の意思決定中枢の考えを寸分違わず見通すことはできようもないが、現在までの各種報道を見るに、中国は海洋軍事力について様々な試行錯誤を積み重ねることで、展開可能な地理的範囲・経路を拡大させると共に、陸軍や海軍といった軍種の壁、或いは海軍内での北海、東海、南海各艦隊といった組織の壁を越えたより柔軟性富んだ運用力を向上させつつあるということは間違いなく言えるだろう。

従って今後、南海艦隊の艦艇が東シナ海やフィリピン海で、または北海・東海艦隊の艦艇が南シナ海で、といった具合にPLAN艦艇が所属艦隊の伝統的な活動範囲を超えた活動を活発化させことは勿論、PLANの有する揚陸艦とPLAの有する各種ヘリとの間での統合訓練が実施されるといったことも予測できよう。

注釈
注1.抄訳的ではあるが、当該記事の内容は中国網の日本語版サイトに掲載された2013年4月30日付「攻撃ヘリWZ-10、初の深海海域演習を実施」でも読むことができる。
注2.無論、これは固定不変の数字ではなく、気象条件や搭載する兵器の種類や量にも左右され、変動幅があるものであることは言うまでもない。
注3.時事通信の2013年5月7日付「中国艦2隻が一時接続水域に=与那国と西表間通過-防衛省」によれば、PLAN艦艇が与那国島-西表島間海域通過が確認されたのは、今回で3回目ということである。
注4.防衛省・統合幕僚監部の2013年5月7日付「中国海軍艦艇の動向について」による。
注5.防衛省・統合幕僚監部の2013年5月13日付「中国海軍艦艇の動向について」による。

参考資料
・時事通信 「中国艦2隻が一時接続水域に=与那国と西表間通過-防衛省」 2013年5月7日
・新華社 「现场直击:武直-10首次挺进深海海域砺突防(图)」 2013年4月13日
・中国網 「攻撃ヘリWZ-10、初の深海海域演習を実施」
・防衛省・統合幕僚監部 「中国海軍艦艇の動向について」 2013年5月7日
・同上 「中国海軍艦艇の動向について」 2013年5月13日