2014年2月1日土曜日

第四百八十九段 音速の遅い読書「中世のなかに生まれた近世」

ほぼ半年放置していたブログを久々を更新。

いや色々とあったんですよ。主に艦これに時間とられたとか。

閑話休題、今回の音速の遅い読書で取り上げるのは、以下の作品。



内容をかいつまんで言うと、大名が家臣等に発した種々の書状を分析していくことで、人格的・個人的な支配関係が非人格的・官僚制的な支配関係に移行する過程を明らかにし、そこに中世と近世との分岐点を見出すというもの。

こう書くと如何にも取っ付きづらい専門書のように思われるだろうが、さに非ず。

著者が序文に載せたちょっとした創作おとぎ話を読むことで、読者は本書を読み進めていく上で必要となる問題意識をすんなりと読者の頭の中にインプットすることができるのだ。

その創作おとぎ話は以下の通りである。

むかしむかしあるところに、となりあった二つのくにがありました。けわしい山がつらなる東のくにと、ゆたかな海にめぐまれた西のくにです。東のくにをおさめていたのは、りんとしたきしょうの黒の王さま、西のくにをおさめていたのはおだやかでいつくしみぶかい白の女王さまでした。
黒の王さまのくにでは、まいにちけわしい自然とたたかいながらくらしていかなければならなかったので、みんなが力をあわせてきびきびとはたらいていました。王さまもそのせんとうに立って、川をせきとめたり町をつくったり、いっしょうけんめいはたらきました。いっぽう、白の女王さまのくにでは、ゆたかな自然のおかげでみんなのびのびとくらし、うつくしい文化の花をさかせていました。白の女王さまのけだかくいつくしみぶかいおひとがらが、くにのすみずみにまでいきわたって、平和な日々がながれていました。
あるとき、悲しいできごとがおこりました。戦争です。ささやかないきちがいがもとで、二つのくにのあいだで、たたかいがはじまってしまったのです。
くる日もくる日もはげしいたたかいがつづき、たくさんの血とたくさんのなみだがながされました。どちらのくにも勇ましくたたかったので、しょうぶがなかなかつきません。けれどもとうとう、黒の王さまのくにが勝ちました。白の女王さまのくにのひとびとも、そんけいする女王さまのために、ひっしでたたかったのですが、橋や町をつくりながらみんなで力をあわせてものごとをなしとげるやりかたを知らず知らずまなんでいた黒の王さまのくにには、かなわなかったのです。
たたかいはおわり、白の女王さまのくには、そのはなやかな文化とともにほろんで、二つのくにはひとつになりました。ひろいおおきなくにをおさめるようになった黒の王さまは、はりきってみんなのせんとうに立って、まえよりももっといっしょうけんめいにはたらきました。そのため。のびのびしたくらしかたはすがたをけし、くにじゅうのみんなが力をあわせてきびきびとはたらくようになりました。
これが、この「とよあしはらのみずほのくに」をおそった不幸のはじまりだったのです。

このおとぎ話の中に出てくる「黒」と「白」が何を象徴しているのかは、本書を読んでのお楽しみとして、昨今、日米欧を中心とした「社会や経済に対する介入・統制を緩やかかつ抑制的なものとする」従来の先進資本主義国がかつての勢威を失う一方、中国やロシアのように「社会や経済に対する強権的な介入・統制を厭わない」国家資本主義国が国際社会における存在感や発言力を増す状況下、実に含蓄のあるおとぎ話である(恐らくは著者が望む読み方ではないだろうけど)。